軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

追悼、企業戦士、無言の帰国

昨日は、テレビ東京の「暴露ナイト」収録に呼ばれた。私の「日本の空を誰が守るのか」を読んだディレクターが、スタジオで戦闘機のりの体験を語ってほしいというのだが、この番組は見たことがないし、有名人も名前と顔が一致しないという方向音痴のままスタジオに行った。≪暴露者?≫は私のほかに3人。
まずスタジオの装飾に「竜宮城か?」と“圧倒”されたが、花魁を中心に美女軍団が並んでいたのにも驚いた。
「戦闘機は場違いじゃないかな〜」と空中戦闘に飛び立つよりも気になったが、名倉潤ネプチューン)、河本準一次長課長)、奈々緒さんの司会で始まると、それは杞憂で実に面白かった。
判定員?具志堅用高氏の突っ込みも面白く、番組にはまったく無知だった私だったが、終盤には雰囲気になじんで感心しきりだった。
2月28日深夜に放送されるとか、関心ある方はご覧あれ。


さて、アルジェで犠牲になった日揮の企業戦士が悲しい帰国をした。

≪企業戦士、無言の帰国≫

最後まで確認できなかった同社最高顧問の新谷正法さんは、結婚指輪が決め手になって城内政務官とともに帰国する事になった。何ともご夫婦の絆が強く、御夫人の念が通じたのだろうと強い印象を受けた。
「邦人保護」が話題になって久しいが、口先だけで何ら対策は取られてこなかった。北朝鮮による拉致はその典型で、これほどひどい人権侵害もないのに、我が国の人権団体は的外れの活動にうつつを抜かして、楽なお遊びに徹してきた。
もう、お遊びの時間は終わったのだ。幼稚な甘え心を捨てて足元を固めないと、この種の事件は次々に襲いかかってくるだろう。
世の中、特に世界は甘くはないのだ。


幸い、政権交代でようやく戦後の悪弊を一掃しようという雰囲気は高まっている。安倍首相には、根本的な見直しを期待するが、アルジェの従業員で、内部情報をテロリストに流していた運転手がいたように、与党の中にも同種の人種がいることが明白になった!
こんな政教分離が出来ていない憲法違反の政党と連立を組んでいたのでは、スピードブレーキを全開してアフターバーナーをたいているような非効率飛行、やがて燃料が無くなって墜落しかねない。
是非とも夏にはすっきりと解消してほしいと思う。国民の大多数にはこの党の正体が十分わかっているのである。


昨日、たまたま大陸を旅した方から現地の新聞などが届いたのだが、その一部を紹介しておく。
「名門一族のたそがれ…」とするか「これが売国奴の正体だ」とでもキャプションをつけておくとするか。


今まで不祥事の度に記者団の前に並んで頭を下げる企業責任者が多かったが、今回の川名浩一・日揮社長の態度には誠実さを感じ「実業と虚業」の差かな〜と考えさせられた。心から哀悼の意を表したい。

今朝の新聞で感動したのが、若くして犠牲になった木山聡さん(29)の恩師の手記である。産経には断ってはいないが、全文ご紹介しておきたい。少し長くなるが、この手記には我々自衛官が、過去60年余胸に抱いてきた憤懣に通じるものが多々あるからである。

 アルジェリア人質事件で死亡した木山聡さん(29)の恩師で、長岡技術科学大名誉教授の石崎幸三さん(66)は25日、木山さんを追悼する手記を産経新聞に寄せた。内容は以下の通り。

≪「虚構の安心・安全の犠牲者」木山さんの大学恩師、石崎幸三さん手記「すまなかった」≫

優秀な学生
 平成20年3月に修士を修了した木山君。学生時代は韓国や南米からの留学生に囲まれるような環境で学んでいた。修了時、教員で出している「材料賞」を授与された優秀な学生だ。その上、私の研究室は修了生に品質保証書を出している。大学の基準で修了していても、私の基準で修了していなければ出さない。
 保証書は中心に私が保証を書き、周囲に研究室関係者が寄せ書きをする形だ。九州男児らしく勇猛果敢で正義感と積極的な行動力を持ち、好奇心旺盛な木山君の寄せ書きには、いかに思いやりのある優しい人か、いかに思いやりのあるリーダーかが書かれていた。今回の事件でも部下をかばいながら犠牲になったのかもしれない。
 こういう事件が起きるといかに日本が「安心・安全」な国か分かるが、本当にそうなのか。「安心・安全」という上辺の言葉に踊らされて内向きになっており、国民も政治家もその虚構の上に立ち、ジャーナリストが浅薄にあおっているのではないだろうか。政治家が安易にそれで票を得ようとしているのではないだろうか。国内で「安心・安全」でいられるのと同時に、国外では志を高く持った木山君のような若者があえて堂々と胸を張って「安心・安全」をものともせず仕事に挑んでくれているのではないだろうか。
実際、日本は海外で活躍する日本人が必要で、その人たちは高い志で、勇気と正義感を持って働いてくれている。海外は危険と隣り合わせである。私が海外にいたころの日本は貧しく、1ドル360円で国は赤字で苦労していた。当時の在外公館は、邦人の安全確保をしようにもできない状況であったが、今の在外公館は情報集めにしても、邦人の安全確保にしてもできるはずだが、実際には行われていない。


乏しい予算

 アフリカの中国大使館数と日本の大使館数を比較するだけでも、いかに日本には予算がないか分かる。それは外務省の怠慢ではなく、多くの日本人が必要と認めないからである。
 少なくともジャーナリストや政治家は、それに気を向けるべきである。海外邦人に対する安全確保、未来の日本に対する投資としての教育、いずれも経済協力開発機構OECD)加盟国中でも最低レベルに落ちている。例えば世界中どの国でも行われていない、狂牛病に対する牛の全頭検査に多大な予算が使われている。結果、他に必要なところへの予算が削られていることが分からない。しかし日本人は「安心・安全」を言わないと、政治家は票が集まらない。
 必要な予算は必要なところには回らず、身近の「安心・安全」に迎合したところに極端な大盤振る舞いの予算が回っている日本。志の高い人が「安心・安全」と言っていたのではアルジェリアでは働けない。それらの志の高い人、木山君はそのような身近な「安心・安全」を叫ぶ日本人の犠牲になったにも等しい。
一部の政治家は根拠もなく外国政府に頭を下げ、それによって日本人の犠牲者が出てくる可能性があることを分かっていない。国内の「安心・安全」のためにいかに多くの海外邦人の「安心・安全」が犠牲になっているか。木山君の死を無駄にしないためにももう一度考えるべきだ。


日本の損失

 木山君は将来、日揮だけでなく、日本と国民を導くリーダーになったはずである。日本にとって、とんでもない損失で、彼の命を奪った武装勢力にもアルジェリア政府にも激しい怒りを覚える。
 インターネットでは「日揮は社員の安全を確保できない限り、撤退すべき」という意見があったが、とんでもない。日揮は欧米企業と競争し、日本のためにも競争している。日揮一社で軍隊や警察は持てず、企業には限界がある。欧米企業は国が守っている。邦人の安全確保は国の義務であり、その中で日揮は犠牲者に関する情報の出し方を見ても、よく社員と社員の家族を守っていると思う。
 木山君の冥福を祈るとともに、虚構の「安心・安全」に温々(ぬくぬく)としていた日本人に代わり「ごめんなさい、すまなかった」。そして「いままで、ありがとう!」と言いたい。木山君の命と引き換えにするのにはあまりにももったいない話であるが、少なくとも残されたわれわれは、日本の虚構の「安心・安全」をもう一度考え直すべきである。

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