軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

力なき正義は無力…

「力なき正義は無力であり、正義なき力は圧制である」とはパスカルの言葉で、有名な「パンセ」に出ている。パスカルといえば今の日本人は天気図の「ヘクトパスカル」程度の認識しかなさそうだが、彼は17世紀のフランスの自然哲学者であり、思想家、数学者、キリスト教神学者といういわば“天才”だった。美人薄命、天才早世?の言葉通り、早熟の天才だったが短命で、三十代で逝去した。
彼は遺稿を「パンセ」として出版したが、自身の手で書物にまとめることはかなわなかったという。
これには「人間は考える葦である」という有名な文句初め、表記の名文句などが記されているが、パスカルの原理、パスカルの定理などの発見で知られる数学者がなぜ国際力学を…と今の若者は思うのではないか。


「人間は考える葦である」とは、「人間は自然の中では矮小な生き物にすぎないが、考えることによって宇宙を超える」という意味だといい、「それは人間に無限の可能性を認めると同時に、一方では無限の中の消えゆく小粒子である人間の有限性をも受け入れている。パスカルが人間を一茎の葦に例えて記述した文章は、哲学的な倫理、道徳について示した次の二つの断章である。そこでは、時間や空間における人間《私》の劣勢に対し、思惟(そして精神)における人間《私》の優勢が強調されている」と解説されている。

そのフランスで痛ましいテロ事件が起きて、多くの市民が犠牲になった。アルカイダの指示に従った、男女4人のテロリストで、女性は逃亡中だというが、パスカルが知ったらなんということだろう?
考えない愚かな“葦”とでもいうだろうか?

フランス政府は、機動力のかなりを集中して事態の解決を図ったが、この種事件にしては、解決が早かった方だろう。正義を行うのには、力の後ろ盾が必要であることをはっきり示している。


さて、この種事件が今のわが国で生起したら、わが警察はどう対応するか気がかりである。

テロ行為はいかにも正しい“名目”をつけた行為のようだが、よく考えると他人に対する不満と劣等感が昂じたもので、自己弁護以外にない。それも“武器”というものがなければ達成できない強盗の論理に近い。しかし世界の評論家は「宗教と今回のテロ行為は別だ」と物知り顔に説く。


本人たちには≪宗教とは別物≫だと意識出来ていないのじゃないか?もしそうだとしたら、宗教界のトップが出てきて、彼らを心の道に戻るよう説得すべきだろう。
それがない限り、テロリストらは自分に都合のいい理屈をつけて、武器を振り回しては他人を殺し、神に責任を押し付けて無法行為を続けるだろう。


我が国の過去のテロ事件を見ればよくわかることだ。中東で起きた赤軍派なるいかがわしい連中の殺人事件、彼女らににじり寄って特ダネを取ろうとするレポーター、あさま山荘事件の連中もいかがわしい落ちこぼれ集団だった。そして大菩薩峠で「総括」と称して仲間割れし、次々に仲間を虐殺していった首班の一人は女性であった。女の逆恨みほど恐ろしいものはない!と誰かが言ったがその通りだろう。
オウムも社会の落ちこぼれ集団であり、サリンという武器を持って強がっただけだ。

今回の事件でも、彼らにたぶらかされて道を誤った若い女性がいた。パスカルは、所詮「この世は男と女」とは言わなかったが、せんじ詰めればそんなところだろう。だから恋愛小説も歌劇も、日本でも歌舞伎や能が伝統文化として継承されるのだ。
テロは、人間性が極端に低い邪悪な存在が引き起こすもので、これに対するには「国家の力」しかない。それが警察力であり、軍事力だ。
こう書いてくると、いかにヤワな日本人でもパスカルが言った言葉の意味が理解できるだろう。左翼メディアは知らないが…


年末年始は、久方ぶりに風邪をひいて、のんびりとした生活を続けて回復を図ったから、TV/ニュースや、雑誌などを含む読書をゆっくりと楽しめた。といっても普段体温が低めの私にとっては37・3〜4℃は、集中力を分散させた・・・


そんな中、9日締め切りの「ジャパニズム次号」の原稿を書き上げたのだがが、資料を整理しつつ、なるほど…と感じたものがあった。詳細は同誌を読んでいただきたいが、昨年12月22日は19年ぶりという「朔旦冬至」だった。
「朔旦冬至」とは「新月冬至が重なる貴重な瞬間」のことで「新月が満月に向って満ちていく月の復活」を意味し、言い換えると「太陽の復活と月の復活が重なる19年に一度しか訪れない貴重な日」ということになる。つまり、良いことも悪いこともこの日から改まり、約20年周期で新しい周期に入ることを意味するのである。
偶然、昨年のこの月に衆院解散が断行された結果、安定政権が誕生したのは天の采配というべきであり、落ち込んでいた「日の丸」が、再び翩翻と翻る希望が湧いてくる年になる、と私は受け止めた。


但し、干支の未年は、過去100年を振り返ってもあまりいいことばかりではない。
大正8(1919)年には流行性感冒が蔓延して全国で15万人が死亡し、「3・1朝鮮独立運動」が起き、モスクワでコミンテルン創立大会が開かれている。
昭和6(1931)年には、3月と10月に陸軍のクーデター未遂事件、9月18日には「満州事変」が、昭和18(1943)年は陸軍のガダルカナルから撤退で、大東亜戦争は下り坂に入った。昭和30(1955)年は、紫雲丸が沈没し168名が死亡、ワルシャワ条約機構が結成されていわゆる冷戦が始まった。
昭和42(1967)年には第3次中東戦争が勃発、中国の武漢で労働者組織が大反乱事件を起こしている。
昭和54(1979)年は、米中国交回復、ポルポト政権崩壊、中国軍によるベトナム侵攻、イラン革命、朴正煕韓国大統領暗殺事件、全斗煥による軍事クーデター、テヘランの米国大使館人質事件が発生。国内では9月に阿蘇中岳、10月には木曽御岳山が噴火、そして年末にアフガンでクーデター事件が起き、ソ連軍がこれに介入して侵攻したため米ソ関係は断絶した多難な年になった。
平成3(1991)年は、イラクで[砂漠の嵐]が開始され、国内では雲仙普賢岳が噴火して火砕流で大きな被害が出たが、その年の暮れにはソ連が解体する。
平成15(2003)年にはイラク戦争がはじまり、フセイン政権が崩壊したが、米国同時多発テロ後の国際的テロとの戦いがし烈さを増し、我が国も平和協力業務に参加する。

このように羊年に起きた事象を眺めてみると、火山の噴火など自然界の異変と、紛争という人的な異変が多発していることがわかる。そして今回、フランスがその鏑矢を切った…


ヨーロッパ情勢からは目が離せないが、わが国周辺の情勢も予断を許さない。
9日の夕刊フジは「中国軍が習近平に200人粛清された腹いせに、反旗を翻した」という。宮崎氏のレポだから注目すべきものだが、私のところには、習近平は7大軍区で30人以上の司令官ら高級幹部を自分の派閥にひきこみ、39人の少将、大佐級を罷免したという。さらに中堅幹部227人を逮捕した…。
どうも自分に従わない幹部を追放し、習近平主席用“私兵”を構築しているようにみられるが、長年江沢民派の元でいい思いをしてきた連中が、指をくわえて去っていくとは思えないから、一波乱もふた波乱も避けられまい。

気になるのが、新疆ウイグル地区に10万人以上の特殊部隊を派遣したことである。フランス同様、ウイグルでもテロ事件が起きるのかもしれない。

あれほど隆盛を誇ったシナの経済も、いい加減な統計の積み上げだったから破産して、とうとうバブルは破裂するのも近いから、アジアはどんな状況に陥るか予測がつかない。

我々は、毅然とした対応を安倍首相に望むだけだが、その足を引っ張ろうとする左翼メディアや、左翼経済評論家が後を絶たないのが危険に思える。


我が国は移民奨励国ではないとはいえ、日本国に愛情を抱かない多くの“国民?”が虎視眈々とチャンスをうかがっているのはご承知のとおりである。

一旦事が生じた時には、公安関係者は迷うことなく、市民の安全確保に機敏に動いてほしいと思う。

国内法規に従わない連中に、国内法規を適用しようとする方が無理なのであって、適時適切に≪超法規措置≫を含めて適用して、重大事件に発展しないよう阻止しなければならない。


今年の私は「知的生命体」との遭遇を希望し、光と影の戦いが始まった地上を離れて、その方面の活動に傾注して宇宙の神秘を体験したいと願っているのだが、間もなくその機会が訪れそうで楽しみである。


届いた本などの紹介
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≪雑誌「丸」2月号:潮書房光人社¥1450≫
●記事の「2015・世界の軍事&外交情勢を占う」はいささか専門的だが、イスラム国の勢力拡大など、昨年の軍事情勢を振り返りながら今年の情勢を占っていて参考になる。


≪「SAPIO2月号・小学館¥750≫
●我が国再生の70人の知恵はそれぞれの立場からの意見で面白い。特に日本人が忘れかかっている≪宮中祭祀≫の写真特集は貴重だろう。昔だったら畏れ多い写真集だ…。3ページからの「戦後70年を背負った男たち」は「日本を堕落させた前科者一覧」と私だったら書くが…


≪「軍事研究」2月号:ジャパン・ミリタリー¥1230≫
●「強敵!中国人民解放軍の陸・海・空・宇宙戦力」は総力特集だが、各方面のプロが詳細に分析して書いている。新連載[アメリカ海軍VS中国人民解放軍]は図解入りでなかなかよくまとまっている。


≪「夢・大アジア:創刊号(1月号):集広舎¥1000+税≫
●昨年九州福岡で産声を上げた季刊オピニオン誌である。
≪弊誌は、日本で最もアジア問題に特化したオピニオン誌として、国内外の最前線で活躍されている知識人・活動者の論文を収録した≫とある。編集顧問には加瀬英明(外交評論家)、河原英照(蓮華院誕生寺貫主)、頭山興助(呉竹会会長)、ペマ・ギャルポ桐蔭横浜大学教授)氏が名を連ねている。


≪週刊誌フラッシュ:≫
●昨年末、まじめな若い女性記者が訪ねてきて、東シナ海情勢について取材を受けた。軍事のイロハも知らず、尖閣を含む海域図も頭に入っていない?様子だったが、熱心なので初歩的事項から解説した。
しかしなかなか熱心で、大学ノートを盗み見ると、細かい文字でびっしりと書き込んでいる。
今回、その取材の一部で私が登場したのだが、2時間以上もしゃべりまくったのに、採用されたのはこの程度!
しかし記事を読んで感心した。要点をしっかり書いていたからである。
私の2尉時代の初ソ連爆撃機スクランブル体験談記や海域図(私が提示)はどうでもいいが、最後の締めくくりが気に入った。
大陸国のシナが、初めて[ADIZ]を設定して大見得を切ってみたものの、その実効性がないことを世界中から笑われた。
そこであわてて空域をカバーするレーダー基地を建設し、戦闘機を配備するというものだが、南キ島という観光名所で自然保護区に指定した島を平気で破壊する共産国らしさは別?にして、そんなものあわてる必要はないのである。常々私が言ってきたように、わが方には下地島という立派な基地がある。そこにF-15を配備すれば済むことなのだ。
しかし、“ゆすりたかり”がばれて、予算縮減された沖縄県は、嫉妬に狂った女の様に反対するだろう。そんなことは国家保護地区を破壊してまで基地を建設するシナに見習って、わが政府も実行すればいいだけだが、すでにシナは手下を送り込んで妨害するだろう。
パリのみならず、オキナワにもテロの目はあるのだ。そんな観点から、下地島を取り上げた記者の着眼を褒めてあげたい!

日本を守るには何が必要か

日本を守るには何が必要か