軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

現代版“民族大移動?”

今朝の産経抄子は「難民はドイツをめざす」として、中東や北アフリカからの難民が、陸続と欧州に流入している問題について次のように書いた。

≪米国は移民の国である。1820年に最初の移民統計が取られて以来、受け入れた移民の数は、6000万人を超えるという(『異文化社会アメリカ』示村(しめむら)陽一著)。

 ▼欧州から海を渡ってきた移民は、まずニューヨーク湾の入り口に立つ「自由の女神像」に迎えられた。その台座には、ユダヤ系女性詩人による有名な詩が刻まれている。「わたしに与えてください、疲れ果てた人たちを、貧しい人たちを…」。

 ▼中東やアフリカから、内戦などで「疲れ果てた」難民や移民が今、欧州に殺到している。なかでも「希望の地」として、人気があるのはドイツだという。今年1年の難民申請者は、昨年の4倍の約80万人が見込まれ、受け入れ費用は1兆円を超えるとの報道もあった。それでも、第二次世界大戦直後に大量の難民発生を経験しているだけに、好意的な意見が大半だという。さらに好景気を謳歌するドイツでは、人手不足が続いており、労働力の確保につながるとの、もくろみもあるようだ。

 ▼もっとも、その他の欧州諸国は、受け入れに消極的である。ドイツでも、このまま難民の流入が止まらず、国民の負担が大きくなれば、反発の声も強まってくるだろう。すでに難民の収容施設を狙った放火事件が頻発している。

 ▼米国だって移民に対して、常に寛容であったわけではない。「メキシコからの不法移民は強姦魔だ」。米大統領選で共和党の候補者指名を争っているドナルド・トランプ氏の暴言が止まらない。にもかかわらず、レースから脱落しない事実が、移民問題の難しさを物語っている。

 ▼日本も人ごとでは、いられない。中国や朝鮮半島で変事が勃発し、大量の難民が海を渡って押し寄せてくる可能性は、ゼロではないのだ≫


私には「歴史は繰り返す」、民族大移動の再来か?と思わされる現象だが、民族大移動とは「西暦300年から700年代にかけて、ヨーロッパで起こった人類の移住のことで、「この移住が古代を終わらせ中世が始まったと考えてもよい」とされている。

≪民族の大移動図=この移住はゲルマン系及びスラブ系の移住、更に東方系の諸民族の侵略を主体としている。これは中央アジアでのトルコ系民族の移動や、人口爆発、気候変動、疫病の蔓延、高齢化人口の増大などが要因とされる=インターネットから≫



とりわけ今回はドイツに殺到するシリア難民が話題になっているが、それはボートから転落して海岸に流れ着いた幼気な3歳のアイラン・クルディちゃんの姿に、世界中が衝撃を受けたからであろう。


≪トルコの海岸で遺体が見つかったシリア難民、アイラン・クルディ君(3)と家族の葬儀が4日、故郷のシリア北部アイン・アラブ(クルド名コバニ)で営まれた(AP)=産経から≫

混乱と堕落の中にある世界は、波打ち際に横たわる子供の姿に、一瞬人間性を取り戻したかのようで、メルケル首相が難民受け入れを表明したから、ドイツへ向かう行列は後を絶たず、EU内の大きな懸念事項になりつつある。
列車に乗り込んで笑顔を見せる難民らの姿に、そのままアウシュビッツに運ばれたユダヤ人の姿が重なるのだが、今回、人道的?に受け入れを表明したドイツに対しては、メルケルノーベル賞狙いだとか、ナチス時代の罪滅ぼしだとか、体のいい労働力確保だなどと、インターネット上の批判はとどまるところを知らない。

そんな中、呑気なアジア人の国連総長は、シナの軍事パレードに出席して、国際的危機に対処する気もないらしい。彼は国連憲章の第100条に「事務総長及び職員は、その任務の遂行にあたっていかなる政府からもまたはこの機構外のいかなる他の当局からも指示を求め、又は指示を受けてはならない。事務総長及び職員は、この機構に対してのみ責任を負う国際的職員としての地位を存する恐れのあるいかなる行動も慎まなければならない」とあることを知らないらしい。
改めて潘基文事務総長には、国連憲章と、第1条目的を熟読玩味されんことを要求したい。

≪しっかり国際平和のために働いでもらいたい!=産経から≫


さすれば、今総長がやらねばならないことは、「国際の平和及び安全を維持すること」と「…国際問題を解決することについて、並びに人種、性、言語または宗教による差別なくすべてのもののために(中略)国際協力を達成すること」ための準備をすることである。

フランスは、難民を受け入れるとともに、「抜本解決」を意図してシリアへの空爆を検討中だという。
パスカルは「力なき正義は無効」だといった。もちろん「正義なき力は圧政」とも言った。いま現実に起きていることがそれではないのか?

インターネット上に、もしも海岸に打ち上げられていた少年が、白人系でなかったら世界はどう反応したか?という厳しい意見も散見される。

フランスが検討中の空爆(戦闘行為)は、シリア難民を救うための力の行使ではないのか?
つまり、EUの将来に漂う暗雲を払うためには、難民が流出する根源を断つ必要がある。シリアとその周辺に“悪”がはびこっていて、それにシリアの指導者が対処できない事態ならば、国連が難民救済に力を発揮したらどうだ?

国際公務員という気楽な立場を謳歌している場合じゃなかろう。

フランスが、抜本解決を意図して行動したならば、EU各国もそれに同調して、悪の根源を断つべく行動し、シリアが一日も早く安定するようにすべきだろう。それが完成した暁には、各国に流入した難民を祖国に帰すのだ。
各国が設定しようとしている収容施設は、それまでの間の仮住まいであることを難民にも自国民にも理解させるべきだろう。

歴史も文化も、食事も言語も異なる民族の“同化”は、個人的結婚などはいざ知らず、なかなか多くの問題を含んでいて、理想通りにはいかないことは歴史が証明している。

ノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領が、米国は世界の警察官ではないと宣言した負の遺産が、悪の増長という形で世界中に広まっているのだから、戦争という大惨事を回避しようとして設立された国連の出番じゃないか?

≪元気がないオバマ大統領=産経から≫


他方、アジアにおいてもシナ大陸の混迷はますます深まるだろう。習近平の「30万人軍縮」宣言は、ソ連崩壊時の江沢民の100万人軍縮宣言を思い出す。
当時わが国は大歓迎したが、100万人をリストラできるはずはない。定年退官させるにしても、それまでの間は食いつがせる必要があるから、国境警備隊とか、公安、武装警察に移籍して充実させた。その結果その矛先は中ソ国境ではなく我が国と台湾に向けられたことを忘れるべきではない。

今回もおそらく30万の余剰?兵力を重慶方面の武装警察、新疆方面の督戦大隊、機動隊などに振り分けて、自国に刃向うテロ対策に使うのだろう。

タイで起きた爆破事件の犯人は「中国人」だが、新疆はシナに侵略されているからウイグル人だろう。チベット仏教徒はおとなしいからシナ人は気にも留めていないだろうが、ウイグルはアフガンにも中近東にも接点が多い。

そこで万一この一帯で紛争が起きると、生じた難民はもうEUには向かえないから、東南アジア方面にベクトルが向くだろう。

産経抄子が憂えたように「我が国も他人ごとではない」のだ。にも拘わらず、生命と人権、食料を保障されている素浪人たちが、粋がって安保法案反対を唱えて座り込みやデモをしているが、少しは中東かEUにでも出かけて行って実情を見てきてほしいものだ。


国際情勢と天変地異を見ていると、このままいけば、東京五輪は吹き飛ぶかもしれない!気がしてくる。
元々ケチがついた運動会だから、その前に天災か人災(戦争)が起きてそれどころではなくなるような気がするのである。

そんなことだから、エンブレムなどは、招致した時の桜のデザインの中に、世界遺産の富士山を合体したものにしたらどうだ?
合体はお手の物だろうに。

≪五輪招致エンブレム。真ん中に富士山を加えたら?=産経から≫


余りにも低次元の話題ばかりのわが国の現状には、あきれてものも言えない時がある。先日ヒストリーチャネルで「9・11」のドキュメンタリー特集を見たが、5000人余の犠牲者の中に、30名近くの日本人がいたことさえ既に忘れ去られている。

人為的な戦争行為によって、民族の大移動が始まっているのは、今後頻発するであろう天変地異の兆しなのかもしれない。

吉田松陰は「自ら顧みてなおくんば、千万人ともいえども我行かん」といったが、安倍晋三首相よ、決意はいかに? 我が国の備えは如何か?

日本の決意

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戦闘機パイロットという人生

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