軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

2016年、混沌の始まりか?

恒例だと世界が注目する米大統領の年頭一般教書演説が12日発表されたが、今年は残り一年のオバマ大統領だったからか、さほど話題にはならなかった。
これも“超大国”米国のたそがれを意味するのか?といささか気になった。


平成25年9月5日の産経新聞「オピニオン」欄で、外交評論家・宮家邦彦氏は、「オバマ外交、終わりの始まり」と題して、オバマ大統領が、「シリアにおける化学兵器の使用はレッドラインだ」と表明していたにもかかわらず、「シリアの化学兵器使用を確信し、限定的軍事介入を決断しながら、なぜか対シリア攻撃につき米議会に承認を求めた」ことを取り上げ、「米外交をフォローし始めて早35年以上たつが、これほど中途半端で稚拙な中東外交は見たことがない」と慨嘆し、「失礼ながら、この時点でオバマ外交は終わったと感じた」「いずれにせよ、この問題は化学兵器使用という非人道的行為に対する国際社会の一致した対応という大義ではなく、今や米国大統領の権威とクレディビリティ(信頼性)の維持という小事に矮小化されてしまった」と書いた。
今から2年半ほど前に、外交のプロはオバマ大統領をそう見抜いていたのだから、今回の教書に反応するはずはなかったのだろう。
しかしオバマ政権はあと一年残っている。単なるレイム・ダックで終わればいいが、レガシーを求めて何か思いもよらぬことをしでかさねばいいが…と思うのは老兵だけじゃあるまいと思う。


今年控えている大統領選は、民主党クリントン女史と共和党のトランプ氏との戦いになりそうだが、一切資金集めをしなくても済むほどのトランプ氏には、根強い支持があるという。
他方クリントン女史には、当選しても第2のウォーターゲイト事件が待っているともささやかれているから、同盟国としては心穏やかではいられない。

更に気がかりなのは、アジア回帰を約束したはずのオバマ演説には「アジア危機感欠如(産経)」と書かれるほど、対テロ重視で、アジアの危機には触れられていない。

中近東情勢、西欧、それに対するロシアの台頭などが重なっているから、どうしてもアジアが「空白地帯」化するのはやむを得ない。
そこにシナの海洋進出戦略が進行する素地があるのだが、それを阻止するのは「アジアの大国日本」しかないのに、わが政治家たちは、“一部を除いて”未だに眠り続けているから、わが国を頼りにしている南シナ海を取り巻く軍事弱小国はイライラしているのだ。

そして明日は、その入り口を制する台湾の総統選挙である。一般的に国民党は衰退し、民進党が政権を担うと予想されているが、蒋介石率いる敗残軍が台湾を占領してからすでに70年余、黒社会が制する世界を構成していることを無視できまい。彼らは何をやらかすか予断を許さない。特に≪特務≫の動きだ。


台湾が自由と民主主義の安定した国になって初めて東シナ海はじめ南シナ海の平和と安定が約束されるのだから、今回の選挙はその点で注目しておくべきだろう。民主的選挙制度を持たない中共の人民が、台湾の総選挙を見て何を感じるか、も興味深い。
衰退する米国に代わって、アジア太平洋地区の良き指導者になるべき日本国の政治的貧困さが実に嘆かわしく、絶好のチャンスをまたまた逃すのか?と考えると、70年前に祖国の勝利を信じてこの地で散華して逝った英霊方に申し訳なく思う。

その“脅威”となるシナでは、軍の再編に忙しそうで、元の中央の4総部、総参謀部、総政治部、総後勤部、総装備部から、新しく15個部門に生まれ変わった。
その部隊章(職能を部門ごとに示すワッペン)がこれだ。
日本の軍事マニアにも好まれそうだが(笑)そうなれば日中軍事友好のあかしになるか…

≪15個職能部の肩章=インターネットから≫


シナの軍中央部が改変などで多忙である隙をついて?、豪州へ訓練航海した海軍艦艇乗組員も自分の利益追求に余念がないらしい。
豪州の税関は、中国海軍第152艦隊の「済南」艦乗員たちが、「粉ミルク」を争って搭載するのを目撃している。


≪豪州に寄港した中共海軍艦艇「済南号」とミルクを積み込む乗組員たち=インターネットから≫


ネット上には、「日本製の赤ん坊の紙おむつなどが人気だから、今回は軍艦を派遣して購入したのか?」「海軍さえも中共産の粉ミルクを信用していない証拠だ」などという書き込みであふれている。
「済南艦」の乗組員たちは一人3箱の粉ミルクを“爆買い”して、艦内に搬送している。そこで豪州当局が動き、これらのうちの60トンの粉ミルクを没収したという。理由は豪州の赤ん坊分がなくなるからだ。豪州政府は「中共海軍は購入をやめよ」と文句をつけ、外国人には2缶だけに制限したところ、今度はネット上に「在豪州の中国人は買えるのになぜ中共軍人はだめなのか?」「中共の軍人にも子供や赤ん坊はいる。差別だ!」と豪州政府に対する非難の書き込みが続く…

北朝鮮の核といい、モランボン楽団のドタキャンといい、国際政治は時が経つにつれて次第に“幼稚”になった!


尤も、大きなニュースの陰に隠れていたが、こんな幼稚な日本人運動家たちの行為は、未然に阻止されたらしいから、少しは進歩しているところもあるらしい。

≪昨年末、重慶爆撃損害賠償訴訟団を組織して、日本に入国しようとした一行が、入国を阻止されていたことが分かったという。
ウォッチャーは、「それを組織しているのが田代博之、一瀬敬一郎という“日本人弁護士”で、シナ人の方が利用されているだけだが、1月2日のネット上には『売国人弁護士・田代博之、一瀬敬一郎など馬鹿な日本人は2016年1月に、また中国重慶市に行った』と書き込まれているから、シナ人さえも彼らの本質をよく理解しているのだ。日本人弁護士らの方が馬鹿なのよ」と言った。

何はともあれ、獅子心中の虫を成敗したわが公安関係者の労をねぎらいたい。


2016年は、クラウゼヴィッツが≪戦争論≫を書いたころとは、質的に大きく変化しているのじゃないか?と思う。
つまり何がきっかけで戦争が起きるのか、今までの戦争論・戦略論的発想では立ち行かなくなりつつあるようだ。

今年はまさに【混沌とした時代】の始まりのように見えるが、むしろ「日本再生の好機」と捉えるべきだと私は思うが。

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