軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

祈る…

今朝の産経抄子はこう書いた。

≪【産経抄】祈りが忘れられている 1月22日

 「臆病者と言われる勇気をもて」。日本航空第2代社長、松尾静磨の名言を実践したパイロットがいる。昭和41年3月、ハワイから羽田上空に来ていた日航機の機長は、悪天候に不安を感じて着陸をあきらめた。カナダの旅客機が空港で炎上したのは、その1時間後である。

 ▼日航機はそのまま福岡に飛んだ。機長は翌日、自らの疲労を考慮して、他の機長に操縦を代わってもらい、客席に座って乗客とともに東京に帰ってきた。松尾が機長の対応を喜んだのは、言うまでもない(『日本航空一期生』中丸美繪著、白水社)。

 ▼冒頭の名言を、ぜひとも思い出してほしいのが、バス業界である。長野県軽井沢町で、若者たちはなぜ、夢を断ち切られなければならなかったのか。スキーバスは転落事故を起こす直前、80キロを超えるスピードでS字カーブを走り抜けていた。

 ▼バスの運行会社は、国の基準額を下回る運賃でツアーを受注していた。昨年末に採用した運転手は、「大型バスは苦手」と話していた。ずさんな安全管理の実態が次々に明らかになるなか、事故はその後も続く。

 ▼東京都内の道路では、観光バスが中央分離帯に衝突し、運転手が逮捕された。「ぼーっとしていた」と供述している。兵庫県淡路市内を走行していた、70歳のツアーバスの運転手は、約10分間にわたり蛇行運転を行った。女性添乗員がハンドル操作を助けて停車しなければ、大事故につながっていたかもしれない。

 ▼松尾は毎年元旦には、交通安全の川崎大師に参拝に行き、その足で羽田の整備工場の現場に向かっていた。評論家の大宅壮一はそんな松尾を、「祈りの気持ちをもつ人」と呼んだ。安さと便利さばかりが追求される昨今、「祈り」が忘れられている。≫


20日の大相撲初場所では、大関琴奨菊横綱白鵬の全勝同士の対決を琴奨菊が一方的に押し出して単独首位に立ったが、この時、入場口奥で、琴奨菊が両手を合わせて祈っている姿がちらりとTV画面に映った。解説者は「集中している」と言っていたが、“両手を合わせて”精神集中する姿は、一種独特だったから、私は「勝つのではないか?」と感じた。
大相撲は「神事」である。現代日本人は単なる「スポーツ?」としかとらえていないようだが、起源は神事につながっている。この奥義はモンゴル出身力士には通じまい。だからそう感じたのであった…


ところで軽井沢のバス事故は、TVの格好の話題になっていて、まるで一億総“調査官”になったかの感がある。しかし原因調査は専門家に任せたらどうだ?
素人解説では、要らぬ誤解と先入観が先走る。昭和46年の雫石事故もそうだった。
事故原因の調査も始まっていない時に報道が勝手に「自衛隊機が突っ込んだ!」と大キャンペーンを張ったため、のちの裁判にも影響した。素人判断は時に大きな判断ミスを誘発するものだ。


それよりも、なぜこんな「初歩的な常識はずれ」の事故が起きたのか、そしてそれを防ぐにはどうすべきか、を検証すべきだろう。


昭和63年7月に起きた、潜水艦「なだしお」と遊覧釣り船との衝突事故の時もなだしおが原因だと決めつけられ、釣り船を所有していた会社の経営ぶりにはほとんど触れられなかった。今回のバス事故はこの当時の状況に酷似している…



翌24日の産経は≪第1富士丸は、45年にサケ・マス船として進水、数年前に改造して、釣り船のいわゆる大型クルーザーとして、会員制の釣りクラブ「富士丸会」(千代田区神田佐久間町、穴沢薫社長)所有の釣り船=154トン、近藤万治船長(30)ら乗組員9人=≫と軽く触れただけだった。
その後の調査で、この会社には次々と法令違反が見つかったのだが、この時の近藤万治船長も正規雇用ではなく、給料問題で会社側ともめていてこの日を最後に退職する予定だったことが判明している。


観光ブームで人手不足のバス運行会社も、運転手の質などどうでもよく、金儲けに突っ走っている。

今回のバス事故では、事故調はスクラップ状になったバスを入念に調査しているようだが、釣り船事故では、海自横須賀総監部の空き地に揚陸した後、なぜか重要な証拠物は早々に分解焼却処分された。
この時、臭いものに蓋式で終わらせず、徹底的に民間企業のずさんな経営ぶりを追求しておけば、海上と陸上の違いはあっても本質的には企業体の「安全運行」に関する意識調査になったはずだから、運輸省も指導上の問題点を指摘して、その後国内の業者に再発防止にかかわる厳重注意ができたであろう。


事故後に責任者は「二度とこのようなことは…」と“反省?”して頭を下げるが、本心は全く違うはずだ。

本気ならば、3・11時のこの行者のように、己をむなしくして犠牲者を悼む姿につながるだろう。
利益最優先主義の商売人にはびこる“自己保身”とその場しのぎの偽善とがこのような痛ましい事故を連鎖的に発生させているのである。
琴奨菊はその意味で“無心に祈った”ので集中できたのだと思う。


東日本大震災の翌日、岩手山田町で粉雪舞う中祈りをささげる僧侶:国難に祈る日蓮上人の姿と二重写しになる=産経から≫


今回の事故について産経は、
≪事故が起きたバスツアーは、主催した旅行会社「キースツアー」とイーエスピーの間で、安全確保のコストを見込んだ法定基準額を下回る額で発注・受注が行われていたことも分かり、バス業界と旅行業界というツアーに関わる双方の会社が安全対策を軽視していた実態が浮き彫りになった。

貸し切りバス業界は、平成12年の規制緩和で、新規参入の門戸が広く開かれた経緯がある。しかし、緩和とセットとなる事後チェックについて20日の自民党国交部会で「監査体制が弱すぎる」と批判が相次いだ。部会長の秋元司衆院議員は「規制緩和は参入規制の緩和。安全規制は緩和していない」と国交省に厳しく再発防止策を求めた」と書いたが、昭和46年の雫石事故以降、少しもその体質は改善されていないことが浮き彫りになっただけである。
この時も、もうけ主義が先走って、羽田と千歳の離発着時刻(運航時刻)が極端に短く、運航時刻を守るために操縦者は近道を選び、上空で弁当を食することによって地上での昼食時間も惜しみ、“駕籠かき”の様に酷使されていたのであり、就業規則に合わせようと無理したのであり、今風に言えば「ブラック企業」の犠牲者だったのである…



ところで話はガラッと変わるが、経済ピンチに陥っているシナでは、各地でデモと暴動が起きているようだ。大紀元日本は「シナでデモ頻発」としてこう伝えている。


≪1月初めから中旬まで、中国各地で数万人を超える大規模な抗議デモが相次いでいる。トラック運転手の新制度抗議やタクシードライバーストライキ、土地を失った農民の保障要求など、訴えの内容はさまざまだが、警察は多くのケースで暴力をともなう強制解散や逮捕を行った。

江西省南昌市で1000人のトラック運転手が抗議デモ=大紀元から≫

江西省南昌市市政府による、同市の多くの区域で旧型の廃棄物輸送トラックの使用を禁止するとの新たな規定に対して、今月4日から約千人のトラック運転手が抗議デモを行った。…トラック運転手によると、南昌市には約4000台の旧型廃棄物輸送トラックが運行していて、運転手は2015年末に突然、規定の変更を聞かされたという。

政府が禁止する区域のほとんどが市の重要工事現場であり、90%の廃棄物輸送トラックが市内で運送を行っている。そのため、新規定によって、数千人の運転手が失業するとみられている≫


「投資被害者の数千人が北京当局に陳情」
≪今月10日、中国のネット投資会社「e租宝」の投資被害者数千人が、市民の「直訴」を受けつける北京の国家信訪局に集まり、集団陳情した。当局は大勢の警察官を現場に派遣し、陳情者を解散させたり、隔離したりして、数百人の陳情者を逮捕した。

陳情者の一人である季さんによると、警察は信訪局の周囲を警戒線で囲み、陳情者の出入りを制限し、信訪局付近の通行人に対して、身分証のチェックを行ったという。

全国各地の「e租宝」の投資被害者の主張によると、もともと十万人規模の集団陳情を呼びかけたが、各地警察の厳しい監視と阻止により、陳情者の多くは北京に向かうことはできなかった≫


「広西省河池市 数万人の農民による抗議デモ」
≪今月11日、広西省河池市の村で数万人の農民による抗議デモが行われた。デモは、土地を徴収された農民に毎月支給されていた生活保障金が取り消されたことに起因する。道路を埋め尽くす数万人の農民による大規模な抗議活動となった。

警察は数人の村人を殴打、逮捕したが、その後大勢の村人が警察署へ押しかけ、村人は釈放された。

去年の12月末に、河池市の13の村で、政府が土地を徴収した際に約束した毎月の最低生活保障金を突然、支給停止と発表した。多くの村人の生活がこの保証金に支えられている≫


「数万人のタクシードライバーストライキ


ストライキ中の江西省南昌市のタクシードライバー(目撃者の微博より)≫
≪今月11日から13日にかけて、広東省東莞市、江西省南昌市、江蘇省南京市の数万人のタクシードライバーが、大規模なストライキを起こし、車両レンタル料の値下げ、保険料の免除、タクシー業界の独占禁止を求めた。

広東省東莞市では、デモに参加した多くのタクシードライバーが警察から殴打され、11人が逮捕された。江蘇省南京市では、タクシーが政府専用車に衝突し、デモ参加者が政府専用車をひっくり返す騒動が起きた。警察は数人のタクシードライバーを逮捕した≫


江蘇省の学校で有毒物質 学生に健康被害
≪今月15日、江蘇省常州市の外国語学校の学生と保護者が市政府で集会を行い、多くの人が警察から殴打され、数人が逮捕された。

去年12月から、この学校の学生と教師が、目まい、嘔吐、咳、鼻血、湿疹などの症状を相次ぎ訴えた。一人の学生はリンパ癌と診断された。学校付近の土地から漂う悪臭が原因ではないかとみられている。悪臭は、学校付近にある元農薬工場の跡地からのものであり、保護者は政府に対して学校を移転するよう強く求めている≫


最も危険なのはGDPの下落である。2008年、温家宝首相が伸び率8%を厳守せよ!と「保八」を厳命したのは、毎年大卒が6〜800万人出る中国社会、卒業しても就職口がないと、インテリ学生らが暴動を起こす危険性があったからだ。

産経によると、≪構造転換進まず 目標「6・5%」設定の衝撃も 危険水域近づく≫とある。


【上海=河崎真澄】中国経済が構造転換の遅れから成長失速という危険水域に近づきつつある。25年ぶりの低い水準に下降した昨年の国内総生産(GDP)成長率。中高速度の安定的な成長へのソフトランディング(軟着陸)の過程にあると中国国家統計局では説明するが、経済安定の前提となる次なる成長エンジンになかなか火がつかない。

鉄鋼や石炭など素材産業から、造船や機械、化学など「オールドチャイナ」と呼ばれる製造業が、需要無視の過剰生産や過剰在庫に加え、コスト上昇で国際競争力を失った輸出不振に苦悶している。

つい数年前までは「世界の工場」の主役ともてはやされたが、19日にGDPと同時に発表された2015年の工業生産は14年の8・3%増から2・2ポイントも下降した。国有の製造業へは国有商業銀行が資金を供給し続けているが、中小の民間製造業は運転資金難の悪化が続く≫


さらに追い打ちをかけるように、「世界の企業、中国から逃げ出す…対中投資が激減 前年同月比8.2%↓」とある。APによると、中国を見限る海外企業が相次いでいて、「景気が失速している中国から世界の企業が逃げ出している」という。


≪かつては「世界の工場」と呼ばれ、多くの日本企業が生産拠点を中国に移したが、人件費の高騰や景気失速を受けて日本企業がいち早く投資に慎重になった。他国の企業も追随する形で、投資を手控える傾向が鮮明となっている≫というから、いよいよわが企業も「満州引き上げ」を始めたか?
言わんこっちゃない。安い労働力を狙って進出しても、相手もバカじゃない。いつまでも搾取されるようなことはないのだ。


経済については素人だが、過去の歴史に学べば結論はおのずと出てくるものだ。

今年はいよいよ大混乱が始まり、うかうかとしていられなくなるだろう。いや、すでに隣国の崩壊は始まっているというべきだろう。
習主席はこんな時何に「祈る」のか知りたいものである。


我が国も、隣国の騒乱で発生するであろう密入国者の急増に耐えられるのか?気がかりだ。

蒙古来襲と同じように、日蓮上人の出現に期待するか!それとも琴奨菊の「祈り」に学ぶか!

政治は現実、窮しても「神頼み」であってはならないのだが、安倍政権のパワーに期待しよう。


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「日米戦争を起こしたのは誰か。藤井厳喜・稲村公望・茂木弘道鼎談:勉誠出版¥1500+税」
日米戦争を引き起こしたのは「かの狂人の欲望だった」とフーバー元大統領は
書き残した。まだ日本語版で未出版だが、読んだ3人が鼎談の形でいち早く紹介するものである。できれば各大学などで原書を取り寄せて図書館においてほしいと思う。
昔、ちくま書房から「現代史を支配する病人たち」という本が出たことがあったが、間違いなく“症状の差はあれ”病人が世界を支配していると感じる今日この頃である!



「オキナワ論:ロバート・D・エルドリッヂ著:新潮新書¥700+税」
著者は元在沖縄米海兵隊政務外交部次長で、トモダチ作戦の立役者。昨年3月、ゲート前で抗議した活動家が、基地内に侵入したか否かでもめた時、現場の監視カメラの映像を公開して事実を公開したところ「参謀長の許可なく、メディア関係者と接触した」という咎で職を追われた本人である。
これを聞いた時、普段は「正義」を主張する米軍らしからぬふるまいに、時代は変わった…と慨嘆したものだが、彼の真意は、日米関係の重要さにかんがみ、「NOしか言わない沖縄でいいのか!」と直言する。
沖縄の裏事情を知るのに最適の著書である。


次は私の明日(23日)の講演会のお知らせ
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「2016年 世界の軍事情勢はどうなるか?」
会場  靖国会館 2階 偕行の間 午後1時から
会費  1,000円(会員500円、高校生以下無料)
連絡先  info@heiho-ken.sakura.ne.jp
件名に「国防講座」とご記入下さい。なお、事前申込みがなくても当日、受付けます。

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