軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

備えるのは“災害”だけか?

3・11が近づくと、当時の“反省”などがTVや紙面を賑わす。
昨夜の「ヒストリーチャンネル」も当時の自衛隊の活動特集だったが、今思い返しても強力な武装集団しか、混乱時には役に立たないことを改めて認識させてくれる。
「戦争」こそ“人類最大の災害”だからそれに備えて訓練している組織しか対応できないのだ。
あれから5年、すでに彼らの活躍ぶりは忘却のかなたに消えつつある…


今朝の産経抄子はこう書いた。

≪【産経抄】あれから5年、三陸の春 3月6日

 三陸の冬は春へとつながる道が細く長く、足元は頼りない。そう思わせる窓外の雪だった。六(むつ)の花の風流には遠く、白い街並みは花鳥風月を拒むようでもある。今月初めに訪ねた岩手県釜石市で、目にした名ばかりの春に被災地の歩みが重なった。

 ▼県立釜石高校の国語教諭で俳人の照井翠さんに句がある。〈家どれも一艘(そう)の舟津波引く〉(句集『龍宮』所収、角川書店)。人も家も車もすべてさらったあの日の大津波からまもなく5年になる。人に手立てがあったとすれば、一散に海から逃げることだったろう。

 ▼「無力感しかない。死なずに済んだ人がいたと思うと」。当時の市防災課長、佐々木守さん(61)の悔恨である。昭和35年チリ地震、43年の十勝沖地震津波の怖さは分かっている。各地区の避難訓練や子供の防災教育に抜かりはないと、あの日まで疑わなかった。

 ▼贖罪(しょくざい)の一念だろう。震災後から各地で続ける講演では自身を「失格」となじり、都心に暮らす人々の過信を戒める。「安全な街はどこにもない」と。同じ悲劇を繰り返さぬために、人知を超えた災禍の責めを引き受ける。生き残った者の務めだと佐々木さんは言う。

 ▼4年前に80代半ばの父を亡くしている。津波で釜石の家を流され、盛岡市内の施設で息を引き取ったという。帰郷を願い続けた父と海にのまれた命を思う度、「責めを一生背負っていく」と自省する。いまもわが身を切り刻むその人に、三陸人の悲しいさがを見る。

 ▼3月の雪に照井さんの一句が重なり合う。〈三月を喪ひつづく砂時計〉。被災者は「3・11」を境に時を刻む砂を失い続けている、と。震災から5年を前にしてこう詠んだ。女流俳人にとってもいまだに「この震災」なのだという。春はどこに。≫


自然災害だったからこその?「情緒的な名文」だが、これが「戦争」だったら、その後の復活などは“占領下”で望みえなかったことを知るべきだろう。


3・11以降、日本国民には「自然災害に備える工夫」がいきわたりつつあるが、「人工的災害」に対する備えにはとんと無頓着なようだ。


同じ産経新聞は、【緊迫・南シナ海】「米海軍の大艦隊が中朝と対峙 『見たことのないほど多く』の中国軍艦艇が接近監視」と題してこう報じている。
 ≪【ワシントン=青木伸行】米国防総省は4日、原子力空母「ジョン・C・ステニス」を旗艦とする空母打撃群が、南シナ海で警戒・監視活動を行っていることを明らかにした。南シナ海の軍事拠点化を急ピッチで進める中国を、強く牽制するものだ。ただ、ステニスの幹部は「艦隊の周囲には、これまで見たことのないほど多くの中国人民軍の艦船が集まっている」と伝えている。…≫

南シナ海に展開する空母ステニス=CNNから≫


他方「主張欄」では「中国国防費 止まらぬ異常な軍拡…自ら敵を増やすつもりか」と題してこう書いた。

≪国際社会の懸念と自らの経済の減速をよそに、軍拡を止めない姿勢をあらわにした。
 中国の習近平政権は全国人民代表大会全人代)に、経済成長率の目標を上回る、前年比7.6%増の約9543億5400万元(約16兆7千億円)という今年の国防費を提示した。

 李克強首相は演説で、東・南シナ海での勢力拡張を念頭に、「海洋強国を建設する」と強調し、「軍事闘争への備えを統一的に進める」と述べた。

 国際ルールを無視した「力による現状変更」を追求する姿勢を改めず、世界の平和と安定に逆行する道を突き進もうとするのを看過することはできない。

 国防費の伸び率が6年ぶりに1桁になったというが、異常な数字であることに変わりはない。米国に次ぐ世界第2位であり、日本の平成28年度予算案の防衛費の約3.3倍である。…≫

≪中国の全人代=インターネットから≫


主張は「看過することはできない」と断じたが、ではどうする?何か有効な手段はあるか?


「中国国防報」は2月24日付でこう書いた。
南シナ海を守るために、解放軍の後備軍(民兵)の1万トン以上の漁船や客船を改造する。この緊急な改造は戦争時に後備戦力が重要だからだ。
現在までに海南軍区は各種施設を整備し、「情報化戦場」を作り、前線軍隊の支援能力を高める事業を推進している。
三沙市は数十個の通信基地を整備し、軍が駐屯するすべての島嶼の解放軍と通信連絡がとれるネットワークを完成した。
南シナ海の応急衛星通信系も稼働し、地方企業を使い、系統内の運輸、油送、船舶武器類の修理工場も建設した。軍民共同で海南島軍区の戦争時の支援力を高めた。
実は2015年6月に中共は「新造民船貫徹国防要求技術標準」を発表していた。これによると、中国の新船建造時には国防省の具体的な要求指示を受けて建造(武装)しなければならないといった、最前線の軍隊の支援のために、まず数万隻の改造、武装船で敵と戦うことを目的にしたものである。
これは毛沢東時代の“全民皆兵”を意味する。
これは南シナ海東シナ海を奪取する準備と言えよう。21世紀の海の資源確保だけではなく、宇宙、南極の資源も略奪する計画のため、2016年初めに南極航空部隊も創設した「国家海洋局」は、深海の鉱物資源、深海生物の研究など国家級の深海調査船を次々に建造している。
今や中共の野心は東シナ海南シナ海、インド洋にとどまらず、宇宙の月にまで領海線を引くことになろう…。

経済崩壊が予測されているにもかかわらず、軍事費が上昇している裏には、こんな野心が読みとれるのだ。


既成政治に飽き飽きした世界中の“市民ら”は、各地で活発な活動を始めている。米国大統領選挙もその一つだが、既成の政治家や、彼らとグルになって世界の資本を独り占めしている利権屋らには、この現象は恐怖以外の何物でもなかろうが、身から出た錆だと自覚すべきだろう。


そんな世界情勢の急変を前に、わが国は“のんびり”とお粗末な政局がニュースを独占しているが、周辺の激変に遅れることなく準備しておかねば、ほぞを噛むことになりはしないかと気にかかる。
同盟国の大統領が、トランプになろうとクリントンになろうと、自国の防備は自らが固めねばならないのは古来からの鉄則である。
しかも隣国政府は、国内の人民の不満を外に向ける癖があることを忘れてはなるまい。国内危機を感じている彼らは、最後の手段として、着々とその準備を推進しているのだ。
以前から私はここで「ありとキリギリス」の話を例に挙げてきたが、退官後20年、いよいよその時が迫りつつあると気がかりである。


そこに、憂国の士・西村眞吾氏から≪警告文≫が届いたので紹介しておこう。私も全く同感だから…


アメリカ大統領に左右されない日本の再興
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 我が国のマスコミは、連日、アメリカ大統領選挙に関する共和党の「不動産王」というのが売りもののトランプ氏と民主党の大統領夫人(ファーストレレディー)を経て国務長官を務めたクリントン氏の言動を伝えている。そのトランプは、無茶苦茶言っているし、クリントンはウソをつきまくっている。
 要するに、両人とも、言っていることの何が真意なのか分からない。
 とはいえ、トランプという人物は、二・三日で結果が出る利害得失に関する直感だけは鋭いタフな交渉屋であろう。従って得になれば平気で我が国の尖閣を犠牲にして中共と手を結びかねない。またクリントンも本質は綺麗な化粧とは別で、大統領夫人の時、亭主の陰でかなり中共筋から恩恵を受けている形跡があり、対中関係が危うい。
 つまり、両方とも、日米両国にとって、やっかいな大統領候補である。

 しかし、分かることは、トランプの不法移民は出ていけ、アメリカは日本を助けるが日本はアメリカを助けない日米安保体制など不平等でけしからん、というような発言を、多くのアメリカ国民は支持しているということだ。そしてトランプが明らかにしたこのアメリカ国民の心理の動向にクリントンも巧みに合わせてくるであろう。
 これが現在のアメリカの状況である。つまりアメリカは「内向き」のまま、大統領選挙をしているのだ。
 そして、このようなアメリカ大統領の候補者に関して、我が国のマスコミは、本年秋の選挙まで「現地からの情報」を盛んに伝え、国内では、学者や評論家や識者が「日本に与える影響」に関して解説を加え、政治は右往左往する。

 そこで、言っておく。今こそ我が国は、アメリカの「内向き」の選挙でアメリカ大統領に如何なる人物がなろうとも、日本の国益と存立と繁栄を確保しうる体制を構築するべき時であると。
 しかもこのことは、我が国家の存立のための緊急の課題であり、現在の我々の国家に対する責務である。何故なら斯くの如きアメリカの「変容」は、現在の国際構造の地殻変動の顕れであるからだ。
 我々の立つ大地の底にはプレートがあり動いている。そのプレートの動きによって大地震が起こり巨大津波が起こる。従って我らは、その百年に一度・千年に一度の地震津波に対処しなければならない。同様に国際環境も動いている。従って我らは、その動きに対処しなければならない。

我が国から観て太平洋の西の中共の危険な暴力的な台頭と太平洋の東のアメリカの変容と内向きは、最も警戒すべき変動である。さらに中東の広大な面積を、イスラムテロ組織であるIS(イスラム国)が実効支配するに至って世界にテロを拡げている事態を、我が国と無縁のことと思ってはならない。世界は既に、「テロとの世界戦争」に入っている。
 この国際情勢の変動のなかにあって、内向きとなったアメリカが、トランプが言うように、我が国を守るために、東アジアで戦うであろうか。答えは明らかであろう。絶対に戦わない。
 
従って、我が国は、国防体制の基本的前提を転換しなければならない。今こそ我が国は、明治の先人が近代的国防体制を構築した同じ真剣さで、国家防衛体制を再構築して強化しなければならない。
そのために、此の観点から、我々は戦後とは何か、戦後体制とは何か、さらに、戦後体制からの脱却とは何かを考え覚悟を決めねばならない。

戦後体制とは、アメリカが日本を守るという架空の前提のもとに成り立っている。そして、その戦後体制を、構築しているものは「日本国憲法」である。従って「戦後体制からの脱却」とは、「日本国憲法からの脱却」である。
 この度、安倍晋三総理が、自分の任務として憲法改正を述べた。これはまさに、その通りなのである。この発言は、現在の我が国を取り巻く厳しい国際状況の中における内閣総理大臣の祖国に対する責務を、安倍総理が自覚していることを示すものであり、歓迎する。

 フランスのドゴールは言った。
「私はマカロニの配給量を考えるためにフランスを解放したのではない」と。今こそ我が国の総理大臣は言わねばならない。「私は今、儲かるか儲からないかを考えるよりも、如何にして自力で国家を守り抜くかに取り組まねばならない」と。
 しかるに、この安倍総理の正当な答弁に対する、与野党の腰の引けた反応は何か。情けないこと甚だしいではないか。
 特に、昨年の夏に安保法制反対で一致し、日本共産党はおろか中国共産党とも共闘しているかのごとく共同で国会前の壇上に上がっていた民主党やほかの野党の面々の言動は、我が国政治の頽廃を示す何物でもない。彼らは再び、悪夢のような中国共産党が喜ぶことをしようとしているのだ。非国民という言葉がある。
 彼らには、この言葉がふさわしいのではないか。≫


届いた本のPR
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≪ご存じ【正論】の4月号。表紙がなんとなく「ジャパニズム」に似てきた感があるが…、今月は論客58人に聞く、「憲法改正へ、これが焦点だ」特集である。錚々たる保守論客の一人に“老兵”も参加する名誉の機会を与えていただいたことを感謝したいが、いつまでも異民族が2週間で書き上げた「お仕着せ憲法」を着て満足しているのかその気がわからない。今や戦後日本人の心は「ホームレス」状態だと私は思っている…


≪雑誌「丸」4月号。旧軍時代の「飛燕戦闘機」復元記事と、テスト飛行を待つ新鋭「X-2(心神)」の記事が対照的である。



≪これもおなじみ「SAPIO」の4月号。いま世間を騒がせている指定暴力団が抗争を繰り広げているが、この世界にも、政治家同様な≪指導者不足≫が影響しているのだろう。昔はカリスマ的で仁義と任侠に熱いヤクザが多かったが…。
「ヤクザと日本:その抜き差しならぬ関係」は一読に値する。


自衛隊お出かけぴあ・2016〜2017≫
今や押しも押されもせぬ軍事ジャーナリスト・井上和彦氏の監修による自衛隊イベント特集号。航空祭、観艦式、火力展示、自衛隊音楽祭りなどのDVD付きで¥980円である!


帰化人が国を滅ぼす:中杉弘著¥1200≫
私の講演会で名刺交換した方から送られてきたもの。現在の混沌とした政、財、官、メディア界の裏がわかる本。
1995年9月号の「正論」にも、≪反日的日本人の系譜≫と題して、矢沢栄一氏と渡部昇一氏が対談しているが、この書はもっと身近な現実に関する情報を集積したものである。


この書は日韓関係の真実の歴史を≪英語版≫にまとめたもので、いずれも中杉氏が製作したものである。

お人よし日本人よ、目を覚ませ!と言いたくなる。

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