軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

露呈した「貧困なる精神」

このところ更新が遅れたのは、次の著書に取り組んでいたからであって、体調はすこぶる健康であるのでご安心戴きたい!
さて、五月の長〜い連休も終わり、世間も平常に戻りつつあるかのように感じていたが、国内で打ち続くスキャンダルの連発には、言葉もなかった。


商道徳が欠如した大企業トップらの謝罪会見は多くの国民は既に見飽きたところだが、まだまだ続々と続いていたのにはあきれ果てた。
口火を切ったのは、たしか「横浜マンション傾斜」問題で、くい打ちを偽装していた大企業だったが、今回「くい先端も施工不良か 強度不足の調査結果で判明」と報じられ、三井住友建設が調査中だという。
儲け優先主義が陥ったわな?だろうが、三井住友建設はさぞや“クイが残った”ことだろう。


スキャンダル第2弾の口火を切ったのはこれまた“天下の〜”と自他ともに許す「三菱自動車」の不正事案である。以前ドイツのフォルクスワーゲンが、やはり同じような偽装がばれたが、今度は我が国の大手企業である。
ついに国土交通省が「燃費データ改ざん問題が発覚した三菱自動車」の本丸に乗り込む事態になった。同社への立ち入り検査は「愛知県にある関連施設に続き2度目」だという。

東芝といい、シャープといい、大企業に次々に問題が発生するのだから、モラル欠如で世界から顰蹙を買っているどこかの国並みに落ちたといわれても仕方あるまい。

≪謝罪会見する東芝幹部:見飽きた風景!≫


経済誌に「三菱自東芝、名門企業を蝕んだ『日本病』の正体」として分析されているようだが、私に言わせると、バブル期に「おいしい経験」をした方々がトップについたのが原因のように見える。
軍事では「馬鹿な大将敵より怖い」と言う。いま日本の大企業はそれを“実践”している?のだ。高学歴の彼らは学生時代に何を勉強していたのだろう?


そして今度はこれだ。三井不動産事件に続いて何とも見苦しい。

東亜建設工業社長ら謝罪 羽田空港滑走路データ改竄「通報制度、機能しなかった」
「管理体制の甘さが要因の一つであり、責任を重く受け止めている。関係者にご迷惑とご心配をおかけし、心よりおわびします」
6日、横浜市内で行われた記者会見で、東亜建設工業の松尾正臣社長は深く頭を下げると、「(社内の)通報制度も作り、不正に対し厳しくやっているつもりだったが、機能しなかった」と唇をかみしめた。
●福岡、松山でも地盤改良工事データ改竄 羽田滑走路改竄の東亜建設工業
中堅ゼネコン「東亜建設工業」(東京)が羽田空港C滑走路の地盤改良工事でデータを改竄していた問題で、同社は13日、福岡空港など3空港の4工事でも施工不良があったことを国土交通省に報告した。
●羽田工事不正 安全脅かす改竄許されぬ。産経「正論」
地震が来なければ発覚しないとでも高をくくっていたのだろうか羽田空港の滑走路の液状化を防ぐ耐震化工事で、施工不良を隠すデータの改竄が発覚した。

国土交通省が「通常利用に問題はない」としていることもおかしい。それでは何のための耐震化か。大地震はいつ起こるか分からない。「来るまで安全」では工事の意味がない。もっと深刻に受け止めるべきだ。(以下略)


こんな事故もあったが、人身事故ではなかったので忘れられている。
●架設中の新名神高速道路の橋桁が落下した事故で、西日本高速道路会社は2016年5月13日、同日午後から復旧工事に着手すると発表した。落下した橋桁を3分割し、通行止めとなっている国道176号上の橋桁を撤去する。通行止めの解除まで、約2カ月程度かかる見通しだ。

今やどこぞの国の「おから工事」がわが建設業界にも伝染しているようだ!日本の建設業界の信頼性はどこに行ったのか?


元々“詐欺事件”とは、このような形態が主流であった。
●羽毛布団、産地偽装横行か 「フランス産の半分以上が疑い」業界団体が警告文書
羽毛布団の製造業者など約100社でつくる日本羽毛製品協同組合(東京)が、羽毛の原産地の偽装表示が横行している可能性があるとして、加盟各社に適切な産地表示を求める警告文書を送っていたことが7日、分かった。フランス産としている羽毛布団の「半分以上は偽装と思われる」としている。


しかし一般国民は「安物買いの銭失い」精神が徹底しているから、異常に低価格の品物には「眉に唾つけてみる」からさほど影響もなく、自己責任を自覚しているからいいようなものの、【正論】が警告したように、公共工事や事業となれば別問題である。


ところがまたまた驚いた。

スポーツ精神を発揮する場の代表であるはずの「五輪招致委」でも“不祥事”が発覚したというのである。もとはフランスの検察当局の調査で判明したものだというが、わが五輪招致委が「2.2億円送金認める コンサル料、露薬物隠蔽絡む口座 シンガポール当局も捜査」と相成った。


元政治家や高級官僚などが絡んでいたメーンスタジアム建設問題では一敗地にまみれ、ロゴ問題でも詐欺師の餌食になるなど、世界中の笑いものになったが、今回は、清廉潔白で、おもてなし精神みなぎる「サムライの国」日本の名誉がかかわってくる。


この問題が表面化した時、主宰地の知事である東京都の舛添要一知事は、
●12日、出張先の宇都宮市で報道陣の取材に応じ、東京五輪パラリンピックの招致活動を巡り、東京側が関係者に資金を送金した疑惑があると英紙が報じたことに対し、「われわれが調べた限りにおいて、その事実はない」と否定した、と伝えられた。


しかしこのお方の「会議費」名目で家族旅行疑惑という個人的スキャンダルに関しては、「調べないと分からない」と次のように語っていたのだから、ハナから会見は信用できなかった。


●東京都の舛添要一知事の資金管理団体「グローバルネットワーク研究会」(解散)が「会議費」名目で千葉県内のホテルに支出した約37万円が、家族旅行だった疑いがあると週刊文春が報じた問題で、舛添知事は11日、報道陣の取材に、「解散した団体もあるので、調べないと分からない。今、事務所に(調査を)指示をしているが、精査が終わったら、またコメントしたい」と述べるに留めた。


週刊誌の的確かつ執拗な調査が、またもや世の指導者のスキャンダルを暴いたのだが、もともと彼は大学時代から三菱パジェロを乗り回していた「プレイボーィ」だったというから、都知事には不向きだったという。国際関係論も大した内容ではなかったが…
都民の税金を湯水のように乱費して恥じない知事は都民がこぞって「リコール」すべきじゃないか?
それもケチがついた東京五輪開催式の前のなるべく早い時期にけじめをつけるべきだろう。ブラジル大統領みたいになっては目も当てられない。

謹厳居士風な指導語録を都の役人に発していたようだが、今では「シルバー川柳」以下でしかあるまい。いや、川柳の方が庶民の心をつかんでいる。
成金趣味の知事には、こんな悲劇が報じられていることはご存じあるまいから紹介しておこう。この記事をどう受けとめる気か?

●「一緒にあの世に」高齢夫婦が無理心中か 東京・町田市
10日午後0時10分ごろ、東京都町田市成瀬の都営住宅2階で、この部屋に住む夫婦の息子から「父親がベッドの上で、母親がベランダで死んでいる」と110番通報があった。
警視庁町田署員が駆けつけたところ、夫(92)がベッドの上で倒れ、妻(87)がベランダで首をつっているのが見つかり、ともに死亡が確認された。
室内から「じいじ、助けてあげられなくてごめんなさい。一緒にあの世に行きましょう」という内容の文章が見つかり、同署は無理心中を図ったとみて調べている。同署によると、夫婦は2人暮らし。夫は目が不自由で、足も悪く、車いすを使っていた。


このご老人夫妻は、まじめに都民税を払っていたはずだ。涙なくして読めない記事だが、豪遊した都知事の感想が聞きたいものだ。


前回の曽野女史の「貧困論」ではないが、やはり心の貧しい大人は、どこかで正体を表すものらしい。彼は子供のころに北九州で貧しい思いをしたのじゃないか? それで一念発起して教授になり出世して政界に進出したが、この年になってツイに「初心を忘れ」馬脚を現したのだろう。


仲間から面白いメールが届いたので参考までに転載しておこう。

≪謝罪する人は皆同じ格好をするものですね!とのキャプション付である!イエイエ水の飲み方も一緒です!≫



≪東国原“元知事”が舛添都知事に苦言:どっちもどっちだろうに…≫


≪知事就任後の“これ”で決まりだったのだ!その証拠に都内一等地の旧市ケ谷商業高校跡地を韓国に提供したじゃないかという説も≫


最後に軍事専門誌である「軍事研究」誌のコラムを紹介しておきたい。一般的なメディアでは見られない本音ベースの内容が光っている。
長いので時間があるときにでもゆっくりどうぞ!


●軍事研究「地震報道から見えてくるもの」 
▼まず熊本地震の犠往者に謹んで哀悼の意を表し、罹災された企ての方々にお見舞い申し上げる。さて今回の地震震度7の前震と本震、一週間で七〇〇回以上の余震という未曽有の激甚災害だった。しかしいくら未曽有とはいえ、それを報道するメディアの論調には違和感を覚えた。
曰く、避難施設が全然足りず家に戻って被災したり車中泊でエコノミー症になる人が多い。曰く、支援物資が現場に全然届いていない。曰く、阪神淡路大震災東日本大震災の教訓が生かされていない云々。更には自衛隊の炊き出しに長時問並んでもオニギリしか貰えないとか、風呂が設営されてもシャンプーがないとかの苦情の類を紹介する始末だ。
▼確かに避難所が少ないのも支援物資が届き難いのも一部被災者から怒りの声も事実のようで、事実は報道されねばならない。しかし避難所不足も支援物資の遅延も、煎じ詰めれば自助・共助・公助を含む予算配分と自己責任の問題であり、強靭なインフラ整備と災害に対する余裕ある備えができていなかったことの帰結に他ならない。
まず自分の家だけでも耐震補強するという自助、自分の町会だけでも実のある訓練と備蓄を実施しようという共助、国や自治体による防災インフラや救援システムの整備充実を図る政策を推し進める公助が万全であれば、どんな災害がやって来ても恐れることはないのである。自助・共助の準備をせず、公助についても小さい政府を選択することで疎かにしておいて、イザとなって国や誰かを恨んで罵ったりするのは控えるべきであろう。
▼勿論、マスコミというものは本質的に権力を監視する使命を持っているのだから、常に批判的立場であるべきだ。しかし敢えて白を黒と言い包めたり、徒に国民の不安や不満を煽ったりすることは断じてあってはならない。今回これほどの地震であったにも拘らず阪神淡路の頃と比べて死者数が圧倒的に少ないという一事を見ても、教訓が生かされていると考えるのが普通だし、阪神淡路では自治体からの要請がなければ自衛隊は何も行動を起こせなかったのと比べて隔世の感がある。この二〇年で法律も施策も大きく変わり、国民や自治体の防災意識も格段の進歩を遂げている。警察・消防・自衛隊、それに米軍の行動が全て素早く連携もスムーズであったと、当時を知る者なら誰でも実感できるのではかろうか。中でも自衛隊の活躍には目覚ましいものがあった。
地震報道の論調は、あの「保育園落ちた日本死ね」のブログ騒動と通底するものが感じられる。書いたのは東京在住のに女性らしいが、多くの女性達が全く共感するとして「保育園落ちたの私だ」というプラカードを持ってデモに集まり怪気炎をあげたのも記憶に新しい。
言葉遣いは悪いが主張自体は正しく共感できるというのが大方の論調だったが、言葉遣いは関係ない。論理及び主張自体がおかしいのである。彼女の主張は、自分が保育園に落ちたのを嘆き、「子供を産んで子育てして社会に出て働いて税金納めてやるって言ってるのに」これでは働けないとし、「保育園増やせないなら児童手当二十万にしろよ」「子供にかかる費用全てを無償にしろよ」と要求。少子化対策や一億総活躍社会という政府のスローガンに対して「そんなムシのいい話あるかよボケ」と主張している。
確かに保有園および保育士の数が少ないことと政府の少子化対策が無策であるのは事実であるが、それならば「日本死ね」ではなく「安倍死ね」だろう。出産も育児も労働も個人の課題であって政府がお願いしたことではない(まして国家ではない)。にも拘わらず金が貰えるのは当然であり、自分の希望が叶わないことに怒り、祖国を呪っているのである。こんな女に共感し同調するのは、自ら国家の敵でありテロリストと同じ思考傾向を持つ人問であると表明しているのと同じである。有事の際は真先に監視対象にすべき危険人物なのであって、誰が同調したのか記録しておいた方がいいだろう
大災害が起こるたびに悲観論に浸るのも美談に酔いしれるのも、そろそろ日本人は卒業しなければならない。今回被災された方々には同情を禁じ得ないが、これを奇貨とし防災インフラ整備の公共事業に傾注し強靭な安全保障体制への努力を惜しまず、国民が共同体からの援助を期待するよりも共同体へ貢献しようと転じるなら日本の未来は明るい。禍転じて福と為すことができよう。北郷源太郎


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上記のコラムが掲載されている「軍事研究」6月号



≪安倍談話と歴史・公民教科書:小山常美著・自由社¥1800+税≫
著者の小山氏は、中学校公民教科書史の研究を始めて25年、歴史教科書史の研究を始めて17年の経験を持つ方である。今回それらをまとめた形で出版し、歴史・公民教科書の思想と、安倍談話の思想をそれぞれ比較検討した内容になっている。
教科書問題に取り組んでいる方にとっては非常に参考になると思う。

安保法制と自衛隊

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日本を守るには何が必要か

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