軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

言論の“自由と不自由”

空幕広報室長時代、御巣鷹山事故の捜索救難にあたった自衛隊は、位置特定が遅いなどとメディアに“一方的”に非難され苦労した。
事実無根の記事が氾濫するので、それに反論することも広報担当者の仕事であっても現実には不可能であった。彼らが無視するのだから…。
全くの素人が、でたらめな状況を一方的に垂れ流すので、自衛隊は非難されても反論の場が与えられなかった。
TVのモーニングショウ一行が取材に来て、山間地におけるヘリの運用について解説した時、「知らなかった。来てみるもんだなあ〜」とEキャスターがディレクターと顔を見合わせたことがあった。

そこに紙面を提供してくれたのが「月曜評論」というミニコミ紙であったが、その効果は絶大だった。私のところには750通を超える激励の手紙などが届き、中には報道と違う!とクレームがついたほどだったがその中に、全国紙の編集委員から直筆の手紙があった。
私の反論文を逐一詳細に分析した上でのアドヴァイスだったが、終わりに「今まで自衛隊は絶対に反論してこない。叩き得だからどんどん書け!と指導され、私もそう指導してきたが、今回は大いに反省させられた」とあった。

その後A紙の編集委員が怒鳴り込んできて関係がこじれはしたが、良心的な記者は理解してくれたと思っている。

ことほど左様に、防衛庁の様な固い役所は、メディアにたたかれまいと常に神経を使い記者さんの“ご機嫌取り”をすることさえあった。
組織としては「書かれたら終わり」だったからである。

反論の場のない悲しさ、自衛隊は事故などのたびに「袋叩き」だったが、それには責任ある立場の“高官”が保身に走って口をつぐむからでもあった。

今話題の豊洲市場問題を傍観しつつ、東京都高級職員のだらしなさは論外だとしても、中堅以下のまじめな職員たちの苦労を推察し、最高責任者たちの“卑怯さ”も彼らを苦しめているのじゃないか?と感じるようになった。


週刊朝日 2016年10月21日号はこう書いている。
≪「実際に土壌汚染が残っていることがはっきりした土地に、一個人が『安全宣言』を出すのは難しい」

 こう話すのは、小池百合子都知事が立ち上げた「市場問題プロジェクトチーム」の委員で、建築エコノミストの森山高至氏だ。(中略)


 小池知事は10月5日、施設の下に盛り土がなかった問題で、「退職者も含め責任の所在を明確にし、懲戒処分などの対応をとる」と勇ましく語ったが、石原慎太郎元知事は公開ヒアリングを拒否。書面でなら応じると主張している。

 だが、この問題は汚染が予想された豊洲東京ガスの工場跡地を買い、築地市場を移転させようとしたことから始まった。当時は石原都政時代、石原氏は?A級戦犯?ではないか?
 工場跡地は当時、大学などが誘致されていたが、2001年7月、都と東京ガスの間で市場として整備する「基本合意」が交わされた。当時の副知事だった浜渦武生氏を直撃した。
「9月、石原さんから電話があり、『なんでお前が代表で東京ガスと基本合意を結んだんだ』と質問されたから、『何言ってるんですか、石原さんが私にやれと言ったんじゃないですか』と答えました。東京ガスとの交渉は前任者の福永(正通)副知事がやって断られた。次に私が任され、困難な交渉を実現した」

 なぜ、汚染が予想される土地に移転を決めたのか。
「私じゃない。都庁の役人が豊洲に移転候補先を絞り、石原さんに説明し、決まっていった。東京ガスの土地の汚染は知っていたが、築地の地下も汚れている。『基本合意』の時には、東京ガスが土壌をきれいにすることになっていた」

 だが、結局は都が土壌汚染対策費として850億円を支出し、浜渦氏は05年7月、副知事を辞職している。

「私の後任の悪い奴らがたくらみをしたんでしょうね。土地の金額も、全然、想定と違う話になっていた。メチャメチャになって、非常に心外です」

 本当に“悪い奴ら”は一体、誰なのか?(本誌・小泉耕平、上田耕司、村上新太郎、西岡千史)≫


その後、小池都知事は記者会見で「(石原氏からの回答は)先ほど届けられたところで、まだ精査していない」と前置きした上で、「具体的な回答ははっきり言ってなかった。『自分は聞いていない、記憶にない、分からない、覚えていない』。このような回答になっていた」と明かした。


質問状の内容は、石原氏がどこまで情報を把握していたか、対応を副知事に任せた知事の責任についてなどだという。

「覚えていない」といった具体性を欠く回答が届けられたことについて報道陣に考えを問われた小池氏は、「まあなんていいましょうか…」と苦笑いをしながら、「都合の悪いことにしろ、今私どもにお伝えいただかないと、明確な答えにつながっていかない」と明確な回答を求めた。

その上で、「これまでも作家生活、都知事を続けてこられたご功績を無になさらないようにしていただきたいと強く思っている」と苦言を呈した≫


肝心の石原氏は、17日の産経新聞のコラム【石原慎太郎 日本よ】に、「豊洲の不祥事、中傷記事に心痛 契約の経緯、役人から報告の記憶一切無い 小池百合子知事はその決断力発揮を」と題して、次のような“文学的書き出し”で弁解した。

≪いささか私事にわたるが9月という月は私にとっていつも印象に深い月であり季節でもある。夏の好きな私にとって9月は若い頃から愛唱してきたアメリカのスタンダードナンバー「セプテンバーソング」の歌詞「5月から12月までは長い道のりだが、9月になれば日は短くなり季節は木の葉を染め出す。そして人はもうあまり物事を待つ時をもたない」と言う事で1年の節目の月と言うことだ。

 そして今年の9月に月末30日には私は84歳の誕生日を迎えはしたが、例年にない長雨の異常気象だけではなしにいかにも憂鬱な月となった。(以下省略)≫


これに対する解説は、次の「石原元知事、豊洲問題は「とばっちり」 産経新聞に寄稿 」とする「朝日新聞デジタル」が適切だろう。


≪東京都の豊洲市場江東区)をめぐる問題について、石原慎太郎・元都知事は17日付の産経新聞にコラムを寄稿し、「官僚から報告を受けた記憶はない」などとした。石原氏は在任中に築地市場中央区)の豊洲移転を決めており、経緯などを尋ねた都の質問状に今月、「分からない」などと回答していた。
 コラムによると、石原氏は、都が豊洲市場用地を東京ガスから購入した際の経緯について、「本契約までの経緯の詳細について都の官僚から報告を受けた記憶は一切無い」とした。先月発覚した、主な建物下で盛り土がなかった問題について「そのとばっちりが前々々任者の私にまで及んでき」たとし、原因などは「関係者の記憶はまばらで、事は芥川の小説ではないがまさに『藪(やぶ)の中』の印象を出ない」としている。(以下略)≫


小池知事が“危惧した?”様に都民も「これまでも作家生活、都知事を続けてこられたご功績を無になさらないようにしていただきたい」と願っているが、現役時代に広報担当で苦労した私としては、産経新聞という全国紙の紙面に“自由に”活用できる「反論の場」を与えられている御身分がうらやましく思われる。「公器」を使って「私事?」でも反論又は弁解できるからである…
昔の自衛隊のように、いいことをしても報道されず、事故を起こすと針小棒大にたたかれる、そんな苦しみを味わったことがない“作家”のどこか気楽さが感じられるから本当にうらやましい!

尤も今や、インターネットの発達で、全くの個人の「つぶやき」や、不満や感想なども自由に世界中に公開できるから、個人的な鬱憤は晴らせるようになりはしたが…。
常に[発言の場]が確保されている作家っていいな〜〜


ところで今日はシナのデモ情報の続きである。
先日、北京の国防総省前で、シナの軍人らが「窮状を訴えるデモ」を実施したが、最終的には1万人が押し掛けたという。
そしてこのデモが「軍人陳情の成功例に」なったらしいから、共産党政権としては穏やかではなかろう。
「問題解決に9つの省の省長が高速鉄道で緊急に北京に入った」ともいう。


≪情報提供者は今回のデモでは待遇問題が直ちに完全に改善されると思わないが、しかし「成功した」とし、「今後、他の元軍人陳情者には前例になったのではないか」と示した。

国内SNSソーシャル・ネットワーキング・サービス)上では、今まで元軍人の陳情事案の大多数は中央政府に報告されることがなく、軍総政治部の信訪部門で保管されただけだったと囁かれていた。
江沢民の側近で徐才厚氏らが軍を掌握していた時、総政治部の官員らはより高い地位に昇進できるよう贈賄・収賄などに没頭していたため、元軍人らの陳情を完全に無視した」という。(大紀元日本)≫


シナは現在7軍区から5軍区に組織改編したばかりであり、高級軍人らの人事も必ずしも安定しているわけではない。この後遺症がどう出るか、各国の軍事ウォッチャーの関心の的になっている。


次に中国西安地区で住民数万人が五日連続で抗議行動中だという情報がある。
この地区は人口34万というが、産業廃棄物処理場をめぐって市民が騒ぎ出したのだという。理由は、近くにある浄水場が廃棄物で汚染されているらしく、若いのにがんで死亡するものが多く、その他にも原因不明の病死者が頻発しているかららしい。
今まで住民が何度役人に調査を依頼しても全く対応しなかったので、ついに市民らが産業廃棄物処理場の撤去を求めて抗議集会とデモを組織化したらしい。
このデモにも一万を超える参加者があり、五日連続で古都・西安市は騒然となったというのだが、政府は、北京のおひざ元では軍人たちが1万人、西安では市民らが1万人集会とデモをしたことを恐れて、中国の新聞は一切報道していないという。しかし、外遊中の習主席は気にしていることだろう。
宇宙ステーション成功に喜んでいる場合じゃないのではないか?

≪打ち上げられた宇宙ステーション=朝日デジタルから≫


「産業廃棄物処理場」問題は、どこの国でも神経を使うものらしいが、将来首都東京のど真ん中で「原因不明の死者が」出ないようにして貰いたいものだ。

いずれにせよ何処の国でも役人の保身は一筋縄ではいかぬものらしい…。

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