軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

北朝鮮の“先祖返り?”

26日に“突如”敢行された金正恩の北京訪問は、不毛な「文書改竄問題」に揺れる我が国に少なからぬ衝撃を与えた。
メディアは、大慌てで“解説”に大わらわだが、国家公務員のあら捜しに明け暮れている状況下では、外務省も真価が発揮できまい。またまた後れを取ったようで、安倍首相は「ニュースで知った」といった。
何ともお粗末、その意味ではモリかけ論争を強行した野党議員らの“成果だ!”と言えるだろう。わが政府はもとより国民の目から“喫緊の課題”である半島危機を隠ぺいできたからだ。
こんな行為は「利敵行為」といわれ、どこの国でも厳重に取り締まったものだ。
今でもシナがそうじゃないか?


その前に、北朝鮮の核問題で、わが国のメディアが「目くらまし」で強調してきたのは「わが国に降りかからミサイル危機」がほとんどだった。次の図を見ればそれがよくわかる。


しかし中には国際関係を示唆する図面もあったのだが、大方の国民は気が付かなかっただろう。次がその図である。

これを冷静に見れば、北のミサイルの“脅威”は、単にアメリカと日本だけにとどまらず、中国やロシアはもとより、遠く欧州にまで届くことを意味していた。

攻撃「能力」はあるのだから、あとは「首領様の意志」次第だったのだが、最も気にしていたのは他ならぬ中国であったろう。


ところが西側初め、国連による「経済制裁」の思わぬ効果がシナにもたらされた。切羽詰った北朝鮮は、1000年の朝貢関係にあるシナに屈服したのである。


其の昔、オフレコの研究会の席上で、韓国の高名な政治評論家が「日韓友好はあり得ない」と言い切ったので、わが方の大学教授らがその意図を質すと、彼は「日韓併合36年、米帝の支配は50年(当時)に過ぎない。しかし、われわれの血の中にはシナに対する1000年間の恐怖のDNAがしみ込んでいるからだ」と言ったものだ。

今回、半島問題ではツンボ桟敷におかれていた習近平は、金正恩を抱きこむことに成功したと大喜びに違いない。国際舞台に“復帰できた”からである。


この地図は金沢市が作成した「逆さ地図」だが、朝鮮半島の立ち位置がよくわかる。
ミサイル危機に乗じて、われわれの目はメディアから太平洋に向けさせられていたが、北朝鮮にとっての“脅威”は背後のシナとロシアなのである。しかも地続きだ。


これを見ていれば、半島の南北首脳会談はさておき、米朝首脳会談のもたらす影響が読めてくる。北にとって、まさか“あの”トランプ大統領が唯々諾々と応じるとは思わなかったろうから、これが経済封鎖以上の驚きだったに違いない。
“面談”はできても、相手の要求は核廃絶であることに変わりはない。
しかし万一核を廃絶すれば、自分は身ぐるみはがされることになり、チャウセスクの悪夢がよみがえってくる。

そこで、米朝首脳会談が決裂しても、トランプの強硬策を招かないように手を打つのが“指導者たる者”の使命だ。それにはシナしかない。たまたま今は米国と経済戦争勃発直前だ。うまくいく!と確信したに違いない。手を打っておこう、そしてうまくいった。


更にシナの後ろ盾があれば、トランプと言えども無下に北に対する軍事攻撃に踏み込めまい。
なかなか高度な戦略だが、今度はロシアがどう出るかが興味深い。プーチンにも手を打っていたとしたら、金正恩は“名将”である!

本来、北朝鮮の創設に大きく関与したのはソ連(ロシア)であり、シナは朝鮮半島で、国民党軍の捕虜たちを米軍に始末させるため、血を流しただけである。


今回、一番惨めなのは橋渡し役を買って出た韓国だろう。この国は将来を見通す戦略眼に欠けている。これで文大統領のノーベル平和賞も立ち消えだろう…。

問題はアメリカの判断だ。北朝鮮が「対話路線」に出てきたことは評価しているだろうが、核完全廃棄が米国の最終目標だから、それ以外は妥協するまい。
シナはそれをよく知っているから、北と米国から「漁夫の利」を得ようとするに違いない。
それは関税解除問題か、それとも何か?

いずれにせよ、米韓合同訓練は計画に入っている。米朝会談が不調に終わった時の保険は、中国にかけたものの、北が一気に核廃棄に踏み切ることはなかろうから、今後は水面下での駆け引きが忙しくなるに違いない。まさに外務省の活動の場が出現するのだから、期待を裏切らないでほしい!

一歩間違えると日本も危険になるのだが、改竄問題で官僚はじめ政府の機能は低下している。そのうえ、北を応援する野党の宣伝が効いているから、安倍総理も動きはとれまい。
官僚を代表した外務省の出番である!


1939年8月20日、私が誕生する一週間前だが、ノモンハン事件が起き、8月23日に独ソ相互不可侵条約が締結された。防共を掲げるドイツと軍事同盟を締結しようと討議していた平沼は容共姿勢に転換したドイツのやり方に驚き、8月28日に「欧洲の天地は複雑怪奇」という声明とともに総辞職した。

今、半島情勢を巡ってそれと同様な“複雑怪奇”な状況が起きつつあるのだが、政治家としては国際政治水準に到達していない我が国の政治家らの能力では、慌てて右往左往するのが関の山ではないか?

しかし、間違っても“思想信条が異なる国”に頭を下げに行ってはならない。大丈夫だろうかな〜与党の要人の方々よ…。


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≪hanada5月号≫
今月も「改ざん問題」を中心に80ページに及ぶ総力大特集である。北の“走狗”というべき朝日新聞非難が続くが、当該新聞社は「どこ吹く風?」的で効果が少ないように見える。
矢張りノドンでも降ってこないとダメなようだ……



≪WiLL5月号≫

本誌も同様に朝日批判だが、どうも北朝鮮同様、なかなか崩壊しないところが驚きだ。
特別対談≪安倍総理国難突破へ≫が目を引くが、対談相手である加地伸行氏の巻頭言「朝四暮三」の「君子は泰にして驕らず。小人は驕りて泰ならず」が今の日本の政界を表していて面白い。



≪「丸」5月号≫
表紙の上段に「創刊70周年!戦史に学ぶ人のためのミリタリー総合誌」と帯が入っている通り、本誌は戦史、軍事情報満載で、貴重な存在だろう。
今月は、最新軍事研究「『核なき世界』を終わらせたトランプの真核戦略」が目を引く。
核=悪という概念が先行し、何の保証もないまま、核は使えない…とされ、テロリストらの間に核拡散の懸念が広がりつつあった。
そんな中、米国は、核兵器の役割を強化し、非核の戦争行為についても核報復を行う可能性を示唆した。
ちょうど非武装の学校で銃乱射事件が絶えないことに対してトランプ大統領が「教職員の武装」を提案したことに似ている。
核の敷居が低くなったことが何を意味するか?十分検討に値する問題だと思う。

国際情勢判断・半世紀

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