軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

「爾後国民政府を相手とせず」

 トランプ大統領は、シリアのアサド政権が化学兵器を使用したと断定して、英国、フランスと提携してシリアの3か所の施設にトマホークミサイルなど105発の攻撃を実施した。
 シリア国内に確固たる情報網を持つフランスが、動かぬ証拠を提示したためトランプ大統領が決断を下したのだと言う。
 この種の米国の攻撃に対しいわゆる反米メディアは「自作自演だ」と決めつけたがるので、わが国にもその点を疑うメディアもいるようだが、今回は画像を捏造してまでアサド政権に罪をかぶせる必要はなかったと思われる。
 アサドの裏にはロシアがついていて、シリアはロシアの「化学兵器使用実験場」化しているから、今回はそれに対する警告でもあり、同時にアジアの“ならず者国家”に対する警告でもある。今後の金委員長の反応が見ものである。

≪シリア攻撃:15日の産経から≫


 この一連の武力攻撃事案を見ていて、私はいつも引用するパスカルの「力無き正義は無効」という言葉を実感する。
 撃たれたアサド側もバックのロシアも、はたまた北朝鮮も、おそらくトマホークと言う“正義の力”を見せつけられたのである。


 思い返せば、昭和12年12月にシナの南京を攻略した近衛政府は、今度こそ講和が結べるだろうと期待したが、結局蒋介石に無視された。
 それはバックにアメリカ、イギリス、ソ連がついて対日戦をそそのかしていたから、蒋介石はそれらに頼っていたからであった。
 日本政府はこれで蒋介石には和平の誠意がないものと判断し近衛文麿首相は、翌年1月「帝国政府は爾後国民政府を相手とせず、帝国と真に提携するに足る新興支那政権の成立発展を期待し・・・再生支那の建設に協力せんとす」という声明を発出した。
 しかし内乱で混沌とした大陸内では、誰が主権を維持しているか不明で、事実日本の占領地域には臨時政府や維新政府などの自治政府が乱立していた。

 そこで11月3日に近衛首相は「第二次近衛声明」ともいわれる声明を発表し、「東亜永遠の安定を確保すべき新秩序の建設」を提唱、日本・満洲支那3国の提携により東亜に防共、経済統合を実現しようとした「東亜新秩序」構想を発表した。


 今になって考えれば、いかにして大陸から撤収して和平を講じるか?と言う真摯な態度であったのだが、それは我が国には言えても、相手である蒋介石とバックにつく列強にとっては己の利益確保が最優先だから、受け入れられる提言ではなかった。
こうして戦争は“泥沼”に入り込む。


 戦争とは、一方だけの考えで進められることはない。当事者はもとより、それを支援する“外国”の思惑、利害、その上双方ともに自分の方が“正義だ”と信じているのだから始末が悪い。
 シリアをめぐるこの戦争でも、余程のきっかけでもない限り治まりはしまい。その間、幼気な子供たちが犠牲になって死んでいくのだ。


 処で、世界はまさに火を噴く環境下にあるというのに、東洋の“お花畑”の政治家らは、まだ“花見酒に酔いしれている最中”らしく、優秀だった官僚も、過度な色情因縁に捉われていてまっとうな仕事をしていないようだ。

 そんな中“憲法で認定されていない”自衛官らは、災害派遣に出動させられたり、10年前の日報の“捜索整理活動”で寝る暇もないらしい。

 外国に“出張”させられ、土木作業や輸送活動に従事させられ、あげくのはてに日誌に「戦闘」と記載したばかりに多大の労力を費やさせられているのだから、私はいい時に退官したものだ!と後輩たちが気の毒に思われる。


 安倍首相も、重箱の隅を突っつく次元の低い追及ばかりする“野党”に愛想が尽きているだろうが、落ち度を探すメディアが手ぐすね引いて見張っているから、うっかり発言も出来ないだろう。
 私だったら近衛首相を見習って「爾後“反日”野党は相手とせず」と宣言するのだが…。

 訪米してトランプ大統領と会談する安倍首相には、北朝鮮対処はもとより、自国の南西方面に迫っている危機に対処するため、米国に「台湾防衛」の必要性を説いてほしい。
「台湾の安定=尖閣の防衛」に繋がるのだから。

 既にトランプ大統領は、台湾に強固なFBS(前進基地)構想を持っているから、それを推進するよう助言することもお忘れなく。この1、2カ月が東アジア安定のための勝負の時である。


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≪「賢者の毒:留守晴夫著・圭書房\1900+税≫
早稲田大学部文学学院教授・留守氏の著作。欧米篇と日本篇に分かれている。長年評論誌などの連載されたコラムを一篇にまとめたもの。
タイトルの「毒」は、「愚者が蜜をくれようとしたら唾を吐き掛けろ。賢者が毒をくれたら、一気に飲め」という、名作「どん底」の作者ゴーリキーの言葉に基づいている。
これは故・松原正教授がよく引用した句であるが、世の中には、蜜を求めて道を踏み外す“高位高官”が如何に多いか思い知る昨今、胸に突き刺さる。尤も“彼ら”には何ともないだろうが…。
表紙のデザインはユニークだが、内容は濃い。文学専門書と言うべきだろうが、先人の言葉には教えられる。若い青年男女に読んでもらいたい本だ。


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