軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

米国・内部崩壊の予兆

2012年3月発行の伊藤貫著「自滅するアメリカ帝国=日本よ、独立せよ」(文春新書)を著者から頂いた私は、一読して「全く同感だが、現役時代に体験した限りでは、米国の四軍は“健全”だから、国が自滅するには至らないだろう」と意見を述べた事があった。
その後数回、伊藤教授と意見交換した記憶があるが、それには2004年9月に出版された「リベラルたちの背信アメリカを誤らせた民主党の60年(アン・コールター著:栗原百代訳・草思社)」の影響もあった。
「政治家はこのレベルだが、体験した限りにおける米軍は自滅することはあるまい」と感じていたからだ。


伊藤教授の著作のダイジェストには「冷戦後、米国がとった『一極覇権戦略』は歴史上、異例のものだった。だが戦略は破綻した。今やアメリカ帝国は巨額の財政赤字に苦しみ、核は世界中にばらまかれ、中国の軍拡は止められない。米国に依存してきた日本の進むべき道は?」
と言うものだが、最終章の「依存主義から脱却せよ」の項には、アジア情勢の変化を予言した上で我が国政府を次のように叱咤している。

≪日本がアメリカの保護領としての環境に安住し、安易な対米依存体制を続けていればすむ時代は終わったのである。
そのような時代は、二度と戻ってこないだろう。中国の大軍拡、北朝鮮核兵器増産、ロシアの再軍国化、米経済力の衰退、今後三十年以上続く米財政構造の悪化、等々の問題は、「日米関係を深化させよ」とか「集団的自衛権を認めよ」などといった単純な政策では、対応できない課題である。
日本政府の対米依存主義は、思考力の浅い、間違った国家戦略である。・・・対米従属体制の継続を主張する親米保守派の言い訳・・・日本には「自主防衛する経済力がない」は、虚偽である。
一九五〇〜六〇年代のインドと中国は、三千万人以上の餓死者を出した極貧国であった。しかし当時のインドと中国の指導者は、「多数の国民が餓死しているから、我が国には自主防衛する経済力がない」という言い訳を使っただろうか。
フランスの人口と経済規模は、日本の半分にすぎない。しかし過去半世紀間のフランスの指導者たち――ドゴール、ポンピドー、ミッテランシラク――は、「フランスには自主防衛する経済力がない。我々はアメリカに守ってもらえば良い」と言って、自主防衛の義務から逃げただろうか。

東アジア地域の地政学的な環境は、今後三十年間、着々と日本にとって危険な方向へ推移していく。自国にとってのバランス・オブ・パワー条件がこれ以上、不利で危険なものになることを阻止するグランド・ストラテジーを構想し、実行することは、日本人の道徳的・軍事的な義務である。
日本人がこの義務から眼を逸らし続けて、国内の原発問題や年金問題や老人介護問題ばかり議論しているならば、二〇二〇年代の日本列島は中国の勢力圏に併合されていくだろう。
 「日米同盟を深化させよ」とか「集団的自衛権を認めよ」などという単純な依存主義の外交スローガンを振り回すだけでは、日本のグランド・ストラテジーとならない。ハンティントン、ウォルツ、キッシンジャー等が指摘したように、「冷戦後の日本には、自主防衛能力と独立した国家戦略が必要」なのである≫


あれから16年経過した現在、彼の予言は無視できないと感じ始めていたところへ、在米評論家のアンディ・チャン氏の次の内容のブログが届いた。


ホワイトハウスの報道官サンダース(Sarah Hackabee Sanders)が夫の親戚とバージニア州レキシントン氏のストランで食事を摂ろうとしたら、オーナーのウィルキンソン(Stephanie Wilkinson)女史が出てきて、サンダースがホワイトハウスの報道官だという理由でサービスを拒否し、レストランを出ていけと要求した。サンダース女史たちはオーナーに抗議せずレストランから出て行った。
記者から質問を受けたレストランのウィルキンソン女史はサンダースがホワイトハウスの報道官で、非人道かつ不合理(Inhuman and Unethical)だからサービスを拒否したと述べた。
さらに翌日、ワシントンポストの記者のインタビューで、レストランにはサービスを拒否する権利があること、後悔していないこと、今後も同様なケースでサービスを拒否すると述べた。

ところが事実はこれで終わったのでなかった。レストランを出たサラ女史はそのまま帰宅したが、サンダースの親戚が別のレストランに入って食事を摂ろうとしたら、彼らの後をつけていたウィルキンソン女史が仲間を呼んで彼らが食事をしているレストランの外で罵詈暴言を続けていたというのである。

非人道で不合理とはトランプが違法移民に完全非寛容(Zero torelannce)政策を実施したことである。
違法入国者を国外追放するのは当然だが、民主党サヨクは(TIMEの表紙のような)未成年の違法越境者をカワイソウ、何とかしろと政府に抗議しているのである。
たとえ非寛容政策がトランプ大統領の政策だとしてもそれを理由にトランプ政権の官僚に嫌がらせ、自由を妨害するのは納得できない、これこそ不合理な行動である。
・・・職員に罪はないのにサヨクは職員や閣僚に嫌がらせや自由妨害を行ってトランプ大統領に圧力を加えるのが「政権に反対する自由」と言うのだ≫


民主主義の“先進国?”である筈の米国は、実はここまで腐っていたのか!と暗然となった。
“米国式”民主主義とは、選挙で決定したことまで、とことん否定し、嫌がらせすることが許されているのだろうか?
2004年に「これがリベラルの正体だ!」と書いたアン・コールター女史は正しかったのである。
これは彼ら自身が否定する「人種差別」と同じで、黒人をレストランや、公共機関から排斥した行為と同じではないのか?
21世紀の現在も民主党支持者はこの「人種差別的ルール」に固執する気なのか?
彼らは、リベラルとは言い訳で、根っからのサヨクで差別主義者であり、自由主義社会を崩壊させようとしているのではないか?


その意味で、伊藤貫教授の「自滅するアメリカ帝国」は米国の今日あるを予測していた、と言っても過言ではないのだが、さて問題なのは軍隊である。

退官して早20年余、当時の精強だった米軍にも、変化が表れているのかもしれない。
翻って、「思考力の浅い、間違った国家戦略」に支配されたわが国の防衛力が増強されたとは聞かない。“小粒”ながらも“健全”なのかどうかも気にかかる…。
国の政治に至っては、“民主党サヨク”が支配する米国よりもはるかに低次元に落ちぶれていて、未だに「モリカケ論争」に明け暮れている始末。
とてもコールター女史には見せられない“代物”だが、米軍の実態について伊藤教授の見解が聞きたいものである。


届いた本のPR
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≪月刊Hanada8月号≫
総力特集「米朝会談と安倍の闘い」は120ページに及ぶ。まさに“総力”特集だが、なかでも藤井厳喜氏の「米朝会談はトランプの大勝利だ」は読ませる。大統領選挙を見事に予測しただけに情報が満載である!


≪月刊誌WiLL8月号≫

これも『米朝会談の核心』を特集しているが、大同小異。それよりも「新聞・TV・週刊誌も嘘ばかり!」の方が面白い。「朝日はアジビラどころかペットのトイレマット」に至っては、購読者が気の毒になってくる。しかし、なかなか潰れないから、なかなかしたたかだ。



≪雑誌「丸」8月号≫
表紙がカラーで鮮明になり、貴重な旧軍機が生き生きと飾っている。
今月は海軍機の「銀河」と、陸軍の「飛龍」である。
とりわけ銀河は、築城基地から飛び立った、5基の特攻機のご遺族と共に「出撃の碑」を建立したので、思い出が深い。
それにしても、続々と貴重な写真が出てくるものだ、と感心する。


≪年鑑・海外事情2018≫
拓殖大学海外事情研究所が編纂するものである。以前、旧海軍の先輩方による史料調査会が編纂していたもので、拓大が継続してくれているもの。地域別のダイジェストが読みやすくなった。

自滅するアメリカ帝国―日本よ、独立せよ (文春新書)

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中国の「核」が世界を制す

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リベラルたちの背信―アメリカを誤らせた民主党の60年

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