軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

資料から:旧ソ連の核廃棄問題

平成4(1992)年6月12日:サンケイ新聞記事の国際面に、「旧ソ連放射能汚染深刻」「米ジョージタウン大学・フェシュバック教授に聞く」「大量流出施設も放置」「10万人死亡説も」と言う記事が出ていた。

 

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【[ワシントン十一日=小山貴]旧ソ連では黄色の肌や奇形をもった赤ん坊か生まれるなど、深刻な核汚染が表れ始めていることを米ジョージタウン大学のマレイ・フェシュバック教授(旧ソ連の環境問題専門家)がこのほど産経新聞とのインタビューで明らかにした。ブラジル・リオデジャネイロでの国連環境開発会議(地球サミット)では温暖化問題などが焦点となっているが、旧ソ連の汚染状況は温暖化より深刻な問題で、早く手を打たないと日本など近隣諸国にも影嘗を与えかねない、と教授は警告している。

 ――地球サミットで米国が孤立した形だが。

 フェシュバック教授「私も米国がもう少し環境問題に力をいれた方がいいと思うが、米国は資金がないなど弱い立場にある。私自身、温暖化問題よりも旧ソ連の核汚染問題の方がはるかに深刻だと思う」

 ――汚染の現状は。

 「チェルノブイリ原発事故の被害規模は伝えられているよりはるかに深刻だ。米国のスリーマイル島原発事故で漏れた放射線の強さは人体に有害な一五キューリーだったが、チェルノブイリのは致死量をはるかに超す五千万キューリーだと言われている。」

 ――実際の被害状況は。

 「ロシアの科学者のロンドンでの演説などを基にすると八九、九〇年の死者は少なくとも四千五百人以上に達したと思われる。ウクライナチェルノブイリ委員余のメンバーは死者の合計を六千から八千人の間といっている。」

 ――ほかにも汚染が見られるのか。

 「ウラル南のチェリャビンスクでは核兵器製造の際、生じた核廃棄物をコンテナに入れずそのまま湖や川に捨てており、放射線の強さは一二億キューリーに逹しているという。また、北の海で原子炉三個と核廃棄物が入ったコンテナ一万七千個を沈めたが、国際的に決められた水深よりすっと浅い海底に置いた。おまけに兵士がコンテナを沈めるため発砲して穴をあけたため三五億キューリーの放射線が漏れている。」

 ――カザフスタンの核実験場は大丈夫なのか。

 「四九-六二年間に百五十回、大気圏内で実験をし、これまでに十万人が死んだとみられている。旧ソ連の一部北部地域の人の平均寿命は核実験の彫響で四十五、六歳までに下がったところもある」

 ――モスクワは安全か。

 「核廃棄物置き場がモスクフに二百か所以上、サンクトペテルブルグ(旧レニングラード)に六百ヵ所あるため注意しないといけない。旧ソ連当局は国民の安全のことを考えなかったためこうした危険な施設を市内につくってしまった。しかも今の施設の管理も十分でないため何が起きるか分からない」

 ――人休への影響は出ていないのか。

 「ウクライナベラルーシ白血病やがん患者が急増している。西シベリア南部のケメロボやカザフスタンセミパラチンスクなどでは赤ん坊の約半分が奇形をともなって生まれている。信じられない高い率だが、地元当局の発表だ。また、一部アルタイ地区(口シア)のパラナウールでは生まれる赤ん坊の一〇-二〇%が黄色い皮膚を特って生まれているという。核実験の影響と思われる」

 ――当局は何の手も打っていないのか。

 「金がないので何もできない。ワクチンを外国から買えないためポリオ患者が昨年は三百十二人と前年より四倍も増えた。ジフテリアも急増中だ。赤ん坊の死亡率は三五%、病院の三五%は心電図計を持っておらず、地方病院の三分の二は湯が出ない。ゴルバチョフ時代、戦略ロケット軍の予算を増やす代わりに厚生関係予算を減らしたため状況は一段と悪化している」

 ――核汚染の外国への影響はないのか。

 「ノルウェー政府は事態を重視、北海の汚染調査をすることにしている。日本などへの長期的影響については旧ソ連全土の汚染の全容をつかんでいないので何とも言えない。ただ、事態を重視する必要があることだけは間違いない」     

 ――信じられないような状況だ。

 「数字などは地元当局の発表のほか、きわめて信頼できるものを使い、控えめに見積もっている。当局はまだかなり隠していると思う。私の研究をまとめた近著『エコサイド』(環境の大量破壊)を読んだロシア当局者は、実際はもっとひどいと言っていた」】

 

 

同年四月一一日には東京新聞が、同四月九日には毎日新聞が、同じ問題について大きく報じている。

紙数がないのでここでは両紙の記事のコピーを紹介するにとどめておく。

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毎日新聞

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東京新聞

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日経新聞



いずれにせよ、当時のソ連首脳は、自己保存のために”守るべき?”国民を完全に無視して、米国との軍事的対立に狂奔していたのだ。

今では、これを真似たシナがそうだと言えるだろう・・・

 

あれから二七年たつが、当時も今も、国家安全保障を軽視した我が国、特にメディアは他国の核被害には”無関心”を装っている。

悪の巣窟「ソ連」の悪行は核の汚染だけではない。

 

次は平成七(一九九五)年五月一一日の朝日新聞記事である。

上段に『旧ソ連日本海に毒ガス投棄』と言う大見出しの後に続いて「ロシア政府委員長明かす・第二次大戦後に」「兵器など3万トン余」『腐食、中身放出の恐れ』「日ロ作業部会で協議へ」という見出しが連なっている。リードはこうだ。

 

『【モスクワ10=渥美好司】旧ソ連、ロシア軍による海洋汚染問題を調査しているロシア政府委員会のテンギズ・ポリソフ委員長は十日、朝日新聞社のインタビューに対し、旧ソ連が、日本海に計三万トンを超す毒ガスの「イペリット」が入った兵器やコンテナを大量投棄した事実を明らかにした。

 第二次次世界大戦後に捨てられ、容器は腐食が進んでいる。同委員会は「海洋に放出されると、生物や人間への危険度は、放射性廃棄物よりはるかに大きい」との判断を下した。

 モスクワで十一日に開く、核廃棄物の日本海投棄問題を話し合う日本・ロシア両政府の合同作業部会で、ボリソフ氏は毒ガス兵器の海洋投棄調査と対策の必要性を訴え、日本側の協力を求める。』

 

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【同委員会が、これまでひそかに進めてきた旧ソ連軍の毒ガス兵器処理班からの聞き取り調査などによると、日本海には第二次世界大戦直後から、一九四〇年代末にかけて投棄された。

 捨てられたイペリットの総量は、最低でも約三万トンになる。シベリアの北方海域にも二トン近くを捨てたとされている。これらは爆弾や砲弾、箱形のコンテナやボンベなどで、イペリットはそれらの容器の中に液体で残っている。

 役棄場所や投棄量など詳しいデータは、まだ調査中とみられ、ボリソフ氏はインタビューで「いまはいえない」と答えた。

 イペリットは、旧ソ連が製造したが、旧ソ連軍は、実戦ではほとんど使用しなかったという。古くなって兵器としての信頼性が落ちたため、ひそかに海に捨てた。毒ガスを投棄する際、旧ソ連海軍と国家保安委員会(KGB)の将校が立ち会い、投棄楊所と量を極秘文書に記録したらしい。

 ロシアの専門家の予測によると、イペリットの入った金属容器の海水による腐食は、一年間で約〇・二ミリ。大量のイペリットを含む爆弾の容器の厚さは約十ミリと厚く、あと数年で中身が放出されるとみている。

 第二次世界大戦直後、旧ドイツ軍から押収した同種の毒ガスを、旧ソ連軍がバルト海に大量投棄していたことも、最近明らかにされた。この毒ガスは、一部が海中に漏れ始め、ボリソフ氏によると。バルト海周辺の漁民が漁網などからの汚染が原因で、皮膚のかいよう、肺のむくみによる呼吸障害などの被害が出ている。

 ボリソフ氏は「バルト海日本海より塩分が少ないので、海中に漏れたイペリットの分解が進まず、被害が出た。日本海は相対的に水温が高いし、塩分も多いので、イペリットの分解が進み、毒性が弱まるかもしれない」との見方を示した。

 委員会は、KGB資料初の未公開文書などを調べ、核廃棄物で作成したような報告書をつくる方針だ】

 

 記事には「処理の判断難しい」と言う、化学兵器を研究している常石敬一神奈川大教授(科学史)の話が続いている。

 

【漁業などで思いがけず毒ガス容器が引き揚げられるのが、最も危険だ。それを防ぐためには最低限、どこに、どれだけ、どんな状態で捨てられたかを把握する必要がある。ただ、処理のために引き揚げることが、むしろ危険を伴う可能性もあるので、どうするかの判断は難しい。旧日本軍が中国に残した化学兵器も残されたままで、人間が大量殺戮兵器を作り続けたつけが回ってきた。】

 

ソ連崩壊によって、当時のずさんなソ連政府の行動が明らかになってきたものだが、これらの事象は、現在どうなっているのだろう?

その後安全に処理されたとは聞いていないが、特に被害が増えたという報道もないので問題がなかったのかな~?

 

それにしても共産主義国ソ連と言う国は「世界の平和の破壊者」だったのだ。

名称が「ロシア」に替わってもそう簡単に民族性は変わらないだろうから、近隣に住む我々としては、用心するに越したことはない。

 

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友人である「元検事正」がペンネームで上梓した小説である。

ミステリー小説好きな家内が、早速読み始め、本日読破してしまった!

九州が舞台になっていることもあり、土地勘が働いて興味を引いたと言う。さっそく私も読むつもりだが、職業がら、彼が小説をものにするとは思わなかった(失礼!)殆ど事実じゃないか?と思わせる検事らしい迫力がある筆致だった!とは、家内の読後感。TVドラマになるかも…