軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

資料から:今や核による恫喝は通用しない

米朝首脳会談のニュースに捉われているうち、中国は全人代の開幕に合わせて、中央政府と地方政府の予算報告を発表した。その中で、2019年の中国の国防費は前年比7.5%増の約1兆1900億元(約19兆7540億円)で、公共安全支出(社会秩序安定維持費用)は同5.6%増の1797億8000万元(約2兆9844億円)が計上されることが明らかになった。

低迷する経済環境の中でも、中国が国防費の伸び率だけは国内総生産GDP)成長率より高く維持したいと言うのだが、果たしてそれは可能なのか?

中国の軍事専門家は中国政府が過去に巨額な資金を武器などの購入に投じたため、予算を消化するのに時間かかるとしているが、近年においては軍改革のため人員が削減され、一部の軍事支出も削減されたから、国内経済状況の悪化で、軍事費の伸び率も鈍化するだろうと予測されていた。

しかし、今回の決定は、予想を裏切って、中国政府は経済が失速している中でも依然として軍事力の拡大を重視していることを表明した。

実現するかどうかは別にして、「食料よりも武器」を選んだわけは何か?

元より一党独裁専制主義国だから、だれも反対できないこともあるが、単に我が国のような『後年度負担』の影響ばかりではあるまいと思う。

核を手放せば一夜にして最貧国に転落する北ならいざ知らず、シナは”豊かになってきた”人民を敵に回せば共産党の崩壊もあり得るのだ。

勘ぐれば、米朝会談が決裂して、金委員長が「大恥をかいた」ことを見て彼の様になりたくなかったからか、或は習近平主席も米中経済戦争に負ければ、失脚する危険があると察したか、あるいは軍部の突き上げがあったのかもしれない。

その昔、ニクソン米大統領は米誌[タイム]の特集「原子力時代」の中で、こんな意見を残している。

いい機会なので、金委員長と習近平主席に参考にしてほしいと思い、掲載しておこう。

 

昭和60(1985)年7月25日読売新聞

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同上

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当時は米ソ2超大国の対立と言う図式の中だったから、核管理が出来たと言えるが、今や核は拡散してテロリストが入手するのも時間の問題だと言われ、核使用のリスクが高まっていることは事実だろう。

ゆえにトランプ大統領は、何をしでかすか予測できない北朝鮮の暴挙を止めるため、”若い”金委員長の首実検をしたのだと思われ、既にその腹は固まっているとみるべきだろう。

しかし帰国した金委員長はそれに気づかず、シンガポールでの約束をほごにし、核武装を再開しつつあると言うから、尋常ではない。

次回は北が核を”実用化”する前に、米軍による完全な破壊行動がとられる公算が大きい。そしてそれはシナに対する警告でもある。アジアの二人の”指導者”がそれに気が付くかどうか…

アジア情勢は一歩間違えると、米ソ冷戦時代に逆戻りしかねない危険な雰囲気になってきた。