軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

備えなければ斯くのごとし!

台風15号の影響で、千葉県で発生した大規模停電は23日で2週間になったが、依然として約2300軒(22日午後10時現在)が停電しているという。ピーク時(約64万1000軒)の1%以下になったとはいえ、停電だけではなく給水も解消されてはいないのだ

三沢時代に、東北電力の三沢所長がおもしろい話をしてくれたことがあった。

百石駅前で通行人に「今停電が起きたらあなたはどうしますか?」というアンケート調査を実施したところ、ほとんどの人が「何もできねーから炬燵にでも入ってテレビでも見るか」と答えたというのである。

「炬燵もテレビも電気」だと言うと「あそうか!じゃあ何もできねーべ」と驚いたというのだが、所長は「如何に三沢管内では停電が少ないか!」という証だと自慢したかったらしい。しかし私は国の安全保障にも共通していると慨嘆した事を思い出す。

 丁度来訪された予科練出身で、黒石市林野庁に努める先輩にこの話をすると、「司令さん、東北電力もそんなことは言っておれなくなる。送電線が張り巡らされた林野は、どんどん死んで行っていて、鉄塔が倒れても修理できなくなるから停電は頻発するだろう。

 今のところうちの職員らが現場に入って灌木などを伐採しているが今の若い者は苦労したがらねえから、この先はドンドン原野が荒んでいき、電力会社じゃ修理は出来なくなると思う」と語ってくれたことがあったが、今回はその通りになった。

 今回の千葉の停電、復旧を阻む「真因」は「荒廃した山林の倒木が電線を切断、難工事に」なっているからだと次のような記事があった。

【山あいのこの地区では台風による倒木が高圧電線を切断してしまい、電気が届かない状態が9日間にわたって続いていた。この日、東電パワーグリッドの指揮の下、協力会社の「東配工」が9台の車両と20人近い社員を投入し、停電の復旧に漕ぎつけた。

 復旧の行く手を阻むのは、作業の難しさだけではない。山林の所有者と連絡がとれず、やむなく作業着手を優先。終了後に別途、伐採の了承を得ることにした。

 さらに、現場近くにある民家への引き込み線にも木が覆いかぶさっている。そこには車両が入れないため、はしごを使いながら時間をかけて倒木を撤去していく。1軒の停電を解消するために、多大な労力が必要だ。

 経済産業省の推定によれば、今回の台風による電柱の倒壊は約2000本にのぼるとされる。電線の切断箇所に至っては、どれだけあるかはっきりしていない(略)停電多発の背景には山林の荒廃がある

とりわけ重要な平時からの整備がなされず、手入れのされていない山林が目立つ。

 電柱が立っている場所については、地権者との間で3年ごとに契約更新手続きがある。更新手続きがあれば、地権者の状況を確認でき、周辺の樹木の手入れも行き届きやすい。

 だが、電柱の間を結ぶ土地については所有者の把握が難しく、災害が起こるたびに復旧作業の難しさが顕在化する。(略)防災対策に詳しいある大手電力関係者によれば、「電力会社の復旧作業は、高所作業車など工事車両による作業が主だ。大規模災害時は電力会社が所有していない大型重機で道路を切り開く必要がある。その手配により、復旧時間が左右される。そのため、自治体や建設業界、森林組合などとは平時から意思疎通を図り、地域防災訓練への参加など、緊急時対応の準備をしている」という。早期復旧するために、日頃からどんな準備をしていたのか、今後、検証のテーマとなりそうだ

 千葉大学大学院園芸学研究科の小林達明教授によると、今回の大規模停電には、「山林の手入れがおろそかになっていることが大きく影響している」

 気候変動の激化で台風の威力が増す中、私たち電力のユーザーは、国土保全の大切さを改めて思い知らされている

 

 そして人智を超える(想定外)の事象が起きると、政府はいつも「自衛隊員を現場に投入する」し、国民もそれを期待している。

 今、現場に出動させられた自衛隊員は、慣れない樹木の伐採作業や家屋へのブルーシートの設置作業をさせられているが、防衛研究家の桜林美佐女史は「自治体組織や民間でできることとの識別を速やかにしていく必要はある」としつつ、平成29年の九州北部豪雨で大きな被害が出た福岡県・東峰村の村長が【「林野庁がその英知を駆使し、災害を防ぐための計画的な間伐と植林を行うことが必要だといいます。かつては林業に従事する人が多くいたものの、近年は「山林では食えない」ということでほとんど辞めてしまっているようです。「国の事業として、循環できる山づくりをしないと同じような災害がまた起きてしまいます」と、村長が警鐘を鳴らし、大量の流木による被害が出た根本的な原因について、林業に知見のある村長は「山が死んでいる」と表現されました】とブログに書いている。

 そう、バブル時期にゴルフ場建設で荒らされた日本の山々はその後も「死んでいる」のだ。ある意味“山の神の怒り”だと言えよう。

 

 一方、岩手医大は21日、盛岡市内丸の旧病院から岩手県矢巾町医大通2の新病院に入院患者114人を一斉搬送したというが、その際も救急車や自衛隊の車両に患者を乗せて運んだという。今度は病院の移転に自衛隊を利用したのだ。人命にかかわる…と言えば「葵の御紋」を示すようなもの、移転計画は事前に早くから判っていただろうが、とにかく自治体も政府も“気軽に”自衛隊を利用しすぎないか?

 厚生省と言えば、豚コレラや、鳥インフルなど、家畜に被害が出るたびに、自衛隊に白衣(防護服)を着せて死体の処置をさせたがる。そのくせ自らやるべき仕事には穴だらけ!

 この際いっそ農水省林野庁)も厚生省も、もちろん外務省も、省員の給料分を防衛省に差し出すべきじゃないか?

そして次は国土交通省だろう。

 報道によれば、【台風15号の影響で東京湾内に停泊していた大型船345隻のうち107隻が、いかりを下ろした状態で流される「走錨(そうびょう)」の兆候があったことが、第3管区海上保安本部への取材でわかった】とある。

 東京湾は海の要衝である。海ほたる初め、交通の大動脈も通っている。そんな場所で、「走錨」した大型船舶が引き起こす災害は致命的になりはしないか?

『想定外』という言葉は、人智の限界を示すものだが、今の役所は、人智を尽くさずして「まあまあ、なあなあ」で事足れりとしているように感じられる。自分の知恵が及ばないとすぐに「想定外」といって逃げている。

 

 まあ今回の台風による強風では、我が家も2階ベランダまで這わせたモッコウバラが、折れて落下した。もともと太くなり過ぎていたので、伐採しようと計画していたものだが、後期高齢者だから高梯子での作業に根気が続かず、中途半端に“放置していたもの”だ。

 しかし、折れた枝の始末には4日以上もかかった。それは市の規定によって「可燃物」として出さねばならないから、家内と二人で4日がかりで枝を寸断して、大型ごみ袋で14袋以上も始末したからだ。 

 ごみ収集員には申し訳なかったが、ひとまず終了したので、ブログを再開したところ。

 何とも、近代文明社会で生活することは息苦しいものだと痛感した。その上この国は、いたるところで法治国ならぬ『放置国家状態』がまかり通っている

今回は天から「備えなければ斯くのごとし」を体験させられた次第。

 

届いた書籍のご紹介

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時宜を得た特集が並ぶ。とりわけ巻頭言の志方先輩の一文は、フェイクニュースの根源を突いたものだろう。

何かというと評論家やメディアは「大統領選挙を意識した行動」だと書いて誤魔化す。次の巻頭言が参考になる。

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レッドブルエアレースは興味深い。松島基地航空祭も、好天に恵まれ、事故もなく終わったようで何よりだった。

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「籠池家を囲むこんな人たち・籠池佳茂著:青林堂¥1400+税」

一時期、反安倍闘争の題材にされた籠池論争の裏話。とにかく左翼は「反安倍」というとなりふり構わず自陣に取り込み、賞味期限が終わると次の獲物を狙って切り捨てる。

その実態が克明に描かれていて面白い。著者は籠池家の長男である。おそらくこれからも本人は何らかの”いやがらせ”に遭うだろうが、正義は勝つの信念で進んでほしいと思う。

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「神ドクター・松下正著:青林堂¥1700+税」

著者は鎌倉に住む整形外科の専門医である。空中格闘戦に燃えて訓練した過去の後遺症の椎間板ヘルニアで、最近朝起きるのがつらくなってきたから、近ければ一度受診したいものだが…

「魂は必ず進化・成長する」と氏は言うが、私のような後期高齢者極まれり!では難しいのかも。

しかし、最近は現代科学よりも、自然界の教えにひかれている毎日である。

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 友人の武田頼政氏の編集によるファントムの写真集である。これが最後の写真集になるのだろうが、懐かしいこと限りない。

20年前までは、「いざ鎌倉」の時には老兵も勇んで参加!と思っていたが、寄る年波にはかなわないと痛感する日々。

こんな「化け物」に乗って、高度60000フィート以上、超音速から速度0、0Gから7Gを超える世界で粋がっていたのだ、と思えば、椎間板ヘルニアもやむを得ないと諦めざるを得ない。

しかし”組織”には、そんな世界で苦労している国家公務員特別職がいることを忘れず、しっかりとケアしてほしいと思う。