軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

“緊急事態宣言”それとも“平常事態事のお願い?”

コロナ感染を受けて政府は「緊急事態宣言」を発出したが、対象となった7都道府県と政府の間で意思の疎通ができていないようだ。

すべてに“金”が絡むご時世、休業補償をどうするのか!というわけだ。恐らく財務省が絡んでいるに違いない。ない袖は振れないからだ。それにコロナ被害後の経済力回復もおぼつかないだろうし。

世界の主要国は「これは戦争だ」と位置づけ、懸命に施策を実行中だが、何せ「憲法で戦争を禁じられている」我が国のこと、誰も気に留めてはいない。なんとも極楽島だ。

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産経の2面には我が国を守ってくれている同盟国の空母にも感染者が出て、戦力がダウンしているという記事が出た。

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ところが危機を告発した艦長が海軍長官代行である政治家に解任されて問題になっている。もとより代行は「文民」である。これを見て我が国でも、現役時代に多くの将軍?らが政治家に首を斬られたことを思い出した。

日米開戦を控えていた在ワシントン大使館で、外交官らのたるみから、対米交渉第14部の翻訳と提出が遅れ、真珠湾攻撃が「卑怯なだまし討ち」とされたことがあったが、当時海軍武官補佐官として現場を目撃した義父から「ペンで育った文官と、剣で育った武官とは、危機に対する本能的危機感が異なっている。ゆえにお前ら防大出身者は文と武は車の両輪であることを自覚し、協力し合わねばならない」と諭されたものだ。

しかし民主主義国家らしく、米海軍には「シビリアン・コントロール」が行き届いているらしい。もっとも次官補も辞職したが……水兵らは艦長を信頼していたという。最後には「人間性」がものをいうのだろう。

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解任されたクロージア艦長

ところで友人の軍事社会学者である北村 淳氏は、「米空母『コロナ感染』で中国海軍にチャンス到来 」と題してJBpress にこう書いている。

 【同空母打撃群は、南シナ海での軍事的優勢を強化しつつある中国に対して警鐘を鳴らすため、同海域で作戦行動を展開した。作戦行動が一段落し、いったんグアムに引き上げようとしていたところ、セオドア・ルーズベルトの乗組員の中に体調不良者が出た。そして3月24日、3名の乗組員が新型コロナウイルスに感染していることが確認された。その3名はただちにグアムに航空機で後送された。

太平洋艦隊司令部などでは、空母打撃群の作戦を停止しグアムに引き上げさせて、セオドア・ルーズベルトから乗組員を上陸させ検疫隔離すべきかどうか、深刻な決断を要する事態に直面した。

その間にも、乗り組み将兵の間に感染疑いのある者が出てきた。そのためセオドア・ルーズベルト艦長であるブレット・クロージャー大佐は、ダイアモンド・プリンセス号のように艦内で乗り組み将兵の間に感染者が蔓延してしまうことを恐れ、「全乗組員の生命を守るために、可及的速やかに乗組員を汚染されている空母からグアムに上陸させるように」という要請を、直接の指揮系統(chain of command)以外にも幅広く散布(電子メール)した

 米海軍当局はセオドア・ルーズベルト乗組員のグアム上陸を許可した。ところが、クロージャー大佐の要請書が米国メディアによって公開されると、米海軍当局は、クロージャー艦長の行為は「指揮系統を混乱させ、米海軍、米政府を辱める許しがたい行為である」として、即座にクロージャー大佐を艦長職から解任した。

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 トーマス・モドリー米海軍長官代理

 海軍関係者たちからは、クロージャー大佐が指揮系統を乱した行為に関しては、批判せざるを得ないという声が大勢を占めている。なぜなら「艦隊や海軍に限らずあらゆる軍事組織にとって、指揮系統は万難を排しても守り抜かねばならないバックボーンである」という原則は曲げられないからである。

 また、クロージャー艦長が自ら騒ぎを引き起こしたことにより、南シナ海域におけるセオドア・ルーズベルト空母打撃群の位置を中国海軍に対して明らかにしてしまった情報管理に対しても、批判がなされている(この点、海自駆逐艦と中国漁船の衝突位置を克明にツイッターに公表した日本の防衛副大臣などは話にならない。米軍側から見れば、相手にしてはならない“軍事のど素人”ということになる)。

 さらに「戦争中ではない現在、乗艦している将兵新型コロナウイルスに感染して命を失う危険を冒す必要はない」というクロージャー艦長の「戦争中ではない」というフレーズに対しても批判がある。すなわち、「アメリカ海軍は潜在的敵勢力、とりわけ中国海軍とは実質的に戦争中である。艦長にはその意識が欠けているのではないか」という疑念の声である(現在、中国海軍とアメリカ海軍は戦闘を交えていなくとも、広い意味における戦争状態にあると考えている海軍関係者は少なくない)。

 しかしながら、以上のようにクロージャー大佐を批判する人々といえども、この時点で艦長職を解任するのはあまりに拙速すぎはしないかという意見も多い。

 実際に、この解任人事を強行したトーマス・モドリー海軍長官代理(海軍長官はトランプ大統領によって解任されてしまっているため、現在はモドリー長官代理が海軍省のトップ)に対して、海軍作戦部長(海軍軍人の最高位)ミッチェル・ギルディ海軍大将は、「現時点での艦長解任は性急すぎである。少なくとも海軍内における調査が完了してからクロージャー艦長の処分を下すべきである」と反対したとのことである。

 このような軍事的論理とは別に、連邦議会議員やメディアからも、トランプ大統領の軽はずみな反応に政治的に同調して艦長解任を即決したモドリー海軍長官代理の決断こそが強く非難されるべきであるとの声が寄せられている。今回の感染症という緊急事態において軍隊内の指揮系統に固執していては5000名もの部下の命を救うには時間がかかりすぎると考えて非常の手段に訴えたクロージャー艦長の行為は賞賛されるべきである、というわけだ。

 これに対してモドリー海軍長官代理は、いかなる事態においても指揮系統を乱すことは許されないし、リークされ公開されたクロージャー大佐の要請書は空母セオドア・ルーズベルト乗り組み将兵の士気を著しく低下させてしまった、と反論している。

ところが、モドリー海軍長官代理が反論演説の中でクロージャー大佐を「あまりに浅はか、あまりに馬鹿な」評価したことに対して、セオドア・ルーズベルト乗り組み将兵の多くが怒りの言葉を寄せている。「クロージャー艦長の要請書によって士気低下などは全く起きていない」とモドリー海軍長官代理に対する憤りの声が上がっているのだ。

 今後、海軍内外でクロージャー艦長の行為に対する調査が進められるとともに、連邦議会ではモドリー海軍長官代理をはじめとする海軍首脳に対する公聴会などが開かれ、この問題でアメリカ海軍ががたつくことは避けられそうにもない。

 さらに大きな問題がある。それは、現在、東アジア海域で作戦活動を展開できる唯一の航空母艦が戦列を離れてしまったことだ。

万が一にも中国軍が台湾に攻撃を仕掛けたり、尖閣諸島を占領してしまったとしても、空母を中心とした艦隊(空母打撃群と呼ばれている)を主軸として戦闘を遂行する現在のアメリカ海軍には効果的に反撃することが不可能である、という深刻な事態に米海軍は直面してしまったのだ。

 現在アメリカ海軍は11隻の空母を運用中であるが、東アジア方面海域に緊急出動可能な空母は見当たらなくなってしまったのだ。中国海軍としては、まさにチャンスが到来したと笑みを浮かべていることであろう。】

 

 

文官としては、責任上「書簡の流出を問題視」したのだろうが、艦長には生身の部下を救う責任がある。その後に船員向けのスピーチで艦長について「頭がおかしい」や「世間知らず」と痛烈に批判した。エスパー氏からスピーチをとがめられて乗り組み員に謝罪する事態となった。私としては次官代理の方が「世間知らず」に見える。多分保身だろう。

軍の統制を不安視する見方も出ていると報じられたが、どこの国にも文と武の問題はあるらしい。わが防衛省では逆に副大臣が「東シナ海」で活動していた海自護衛艦の動きをツイッターに”誇らしげ”に挙げていた。ノー天気な国だから仕方ないが、文と武との間に問題がない?のはロシアや中国のような共産専制主義国だけだろう。

文と武は車の両輪論…を離れてみれば、自国の安全保障を他国に依頼している国の将来図が見て取れる。相手にも都合があるのである。

ところで我々の相手となるシナの軍隊では、今何が起きているか…

一節では相当な蔓延が起きているようであり、興味津々なところがあるが・・・・・・。

 

届いた書籍のご紹介

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軍事研究誌5月号

巻頭言で志方先輩はコロナ禍で「・・・国民は何か危機に気が付いて、はじめて日頃から国によって守られていたことに気が付くのである」と書いているが、どのくらいの国民が「気が付いたか」知りたいものである。

黒井氏が「武漢コロナ」に関して、「ウイルスの感染力より怖い「陰謀論」の拡散」を書いているが、唐突に被害を受けた世界中の研究者が、「陰謀論」かどうかわからぬまでも、北京政府の情報隠ぺいで裏に何かがると疑ってかかるのはやむをえまい。

問題なのは、自分が起こしておきながら他国に責任を転嫁する独裁政府の「陰謀・謀略論」の方が危険であり、始末に負えないことだ。

「中国の収容所『ウイグル』を歩く」は実に興味深い。これがシナ共産政府のやり方なのだ。その他情報が満載…

 

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島嶼研究ジャーナル第9巻2号

「多様で複雑な島嶼領土の領有権をめぐる諸問題について、関係資料の収集・分析」を地道に継続している研究書である。

コロナ問題で政権が混乱した場合、シナの軍事力は国民の目をそらすために海外に向かうだろう。備えておくことは山ほどあるのだ。