軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

戦場体験者の訃報と、韓国、台湾そして熊本水害で思うこと

7月10日の「台湾有情」欄で宗像隆幸氏の訃報を知った。

退官後台湾関係の会合で知り合ったのだが、鹿児島出身だと聞いたものの「宗像」という姓と風格から思わず「宗像大社とご縁がありますか?」と聞くと「縁者だ」との答え。あとで本家筋だったと知った。

その武勇談は台湾関係者にはつとに有名で、日本人、というよりも「台湾に身を捧げた生粋の日本人」であった。

未だに残っている言葉が「革命家には妻が最大の弱点になる」と語ったことである。晩年に良き伴侶に恵まれたが、それまでは”身軽な”独身だった。いつ捕らえられてもいい、という信念を貫かれたのだ。

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今日の産経抄には韓国の「白将軍」の訃報が出ていた。

平成12年8月、岡崎研究所の一員として韓国を訪問した時、岡崎大使とともに朝鮮戦争で勇猛果敢に戦い韓国初の陸軍大将になった白善燁氏とお話しする機会があったが、氏は満州国陸軍将校だったこともあり、実に「きれいな日本語」を話された。勇猛果敢だったとは思えない、気品のある御老人だったが、99歳の大往生を遂げられたという。

文大統領は、そんな救国の大恩人に対して「花輪」を送っただけだとあるが、これを読んで私は、英霊が眠る靖国神社に参拝もせず、「榊」だけを贈って済ませるわが首相とダブって見えた。政治家はどこでもご都合主義だ!

我が国でも靖国神社には「救国の英霊方」が祭られているのに。

産経抄氏は「韓国の大統領に代わって深い哀悼の意を表したい」と結んだが、靖国神社の方はどうする?

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 首相は水害犠牲者に現場で黙とうをささげたが、国に身を捧げた英霊を粗末に扱ったからコロナ、水害と連続して大災害に見舞われている?とは言わぬまでも何かの徴じゃないのかと思いたくなる。子供じみた「安倍のマスク」「給付金」「GOーTO」など、このところやることなすこと全てが裏目に出ている気がするが、本人が一番気にしていることだろう。裏で仕掛けているのは誰だ?

我が国では「苦しい時の神頼み」ともいわれるから、一度英霊に頭を垂れて教えを乞われてはいかがだろう? 隣国のことはこの際どうでもいい…

 

さて、今回の水害に出動した陸上自衛隊第24普通科連隊の森武美第2中隊長(48)=3等陸佐=が、犠牲者が多かった千寿園の様子を時事通信に語っている。

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 時事通信 提供 浸水した特別養護老人ホーム「千寿園」(奥)へ救助に向かう自衛隊員=4日午後、熊本県球磨村陸上自衛隊第24普通科連隊提供)

 

【(森中隊長によると)えびの駐屯地(宮崎県)をトラックで出発した第2中隊の隊員約20人は、4日午前10時45分ごろ、球磨村の手前まで到着。ボートに乗り換え、水没した家屋に取り残された住民を救出しながら、約2キロ先の千寿園を目指し国道沿いを進んだ。

 千寿園周辺は、すぐそばの球磨川支流があふれ、一面が湖のようだった。隊員が建物の屋上に上がり、寝たきりの入所者3人らを救助した頃に水が引き、粘着質の泥に覆われた地面が顔を出した。

 1階玄関を入り、息をのんだ。高齢者が14人、車いすに座ったままや床に倒れた状態で動かなくなっていた。全員泥水をかぶり、「一目で心肺停止状態と分かった、色のない世界のようだった」。隊員は無言で14人を抱えて椅子に乗せ、汚れたシーツをかぶせた。

 ただ、森さんは悲しみよりも、「2階で待つ要救助者を助け出すことで頭がいっぱいだった」と振り返る。

入所者48人の生存を確認。車いすの43人を1人につき隊員4人がかりで1階に降ろし、向かいの小学校グラウンドに運んだ。自衛隊のヘリコプターで3回輸送したところで日没を迎えた。

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時事通信 提供 インタビューに応じる陸上自衛隊の森武美中隊長=14日、熊本県人吉市

 

入所者51人と施設職員らの救出が完了したのは、同日午後11時ごろ。いったん近くの高台にある総合運動公園に移し、順次病院などに搬送した。心肺停止の14人は、一夜明けて警察に運び出された。県は6日、全員の死亡を発表した。

 「言葉を失い、動けなかった」。ある若手隊員は後日、千寿園での体験についてこう漏らしたという。目の周りに濃いくまが残る森さんは「とにかく時間が足りず、あっという間だった」と話した】

 

連日ニュースやワイドショウ番組で放映されている「被災地の実相」は”感染者数”などと数値で示される単純なものではないのだ。ある意味戦場の実相に近いといえる。

それを体得して黙とうするのならば理解できるが、支持率を気にしつつ時間に追われる有様では「真心」は伝わらない。犠牲者も浮かばれまい。靖国のように… 実戦体験者の宗像氏や白将軍の足元にも及ぶまい。

とまれ救助が間に合わず、遺体収容作業になった森中隊長はじめ若き隊員たちと、現場で汗と涙を流す消防隊員や警察官にも敬意を表したいと思う。