軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

10年たった3・11大災害に思う

 各メディアは、3・11の特集を報じているが、国民の多くが当時の津波のものすごさを改めて思い知ったことであろう。

松島基地司令としてT4ブルーインパルスの育成中であった私は、地元で”竜神様(超能力者)”と尊敬されているでいる宮司さんから、事あるごとに伺ってご加護を祈願していたが、良く「40mを超える津波が押し寄せるから、その時は急いで高台に逃げないといけない」と地震についての警告をよく聞かされていたが、「40mは少しオーバーじゃないか?」と疑心暗鬼であった。

ところが前日の3月10日の午後、戦略問題研究会に出席するため平河町まで出かける途中で「携帯」に”宮司さん”からの着信があったので、半蔵門駅についてから電話した。

宮司の仕事場である家具や工芸品を製造している工場に、3月9日の地震のお見舞い電話をしたが留守で、職場の大工さんからは無事だと聞いていたのだが、律儀な宮司はその返事をくれたのだろうと思ったのだが彼はいきなり「司令さん、いよいよ始まりますよ〜」という。「関東直下型ですか?」と聞いたら、「福島沖、群馬、新潟…周辺一帯が真っ黒に見えるから、大地震と大津波で大変なことになります。

馬鹿なことばかりしている政府(当時は民主党)を早く変えないととんでもないことになる…」とのことだった。
すでに昨年暮れの大祓の儀で氏子らと聞いていたことだったから私は「いよいよ新しい時代の始まりですね〜」と言って電話を切ったのだが、翌11日午後に書斎整理をしようと一服していた時に激しい揺れに襲われたのであった。後で聞いたのだが、宮司は「女川原発の無事」を懸命に祈願していたのだという。

その後はTVにくぎ付けになったのだが、福島原発が爆発したので、これは容易ならざる事態が!と感じたが、どうすることもできず、ただただ見物客?の一人として過ごしたのだった。

やがて松島基地の惨状も伝わってきたが、朝日新聞の「天声人語」は、水没したF2の機体などについて、なぜ空中に退避しなかったのか?と素人考えで非難した。

素人にはわからなかったのだろうが、結果的には訓練を中止して隊員を屋上に非難させた当時の司令の英断が隊員の命を救ったのであった。

基地の標高はわずか7ft(約2m)だから器材は助からない。人命が第一であると規定していたのだ。こんな素人記者の記事を読まされている読者はお気の毒だ。

 

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水没した松島基地

その後5月に私は、福島の先祖代々のお墓を見に行った。境内も地震の被害は大きく、墓地内の古い墓は無残にも倒壊していたが、私の墓碑は倒れていなかった。中には向きが変わっているものがあったから、相当な揺れであったことは理解できた。

その後足を延ばして松島に入ったが、基地周辺にはまだ水が引かない個所もあり、船やボートが外柵周辺に打ち上げられていて、周辺では自衛隊員が遺体捜索中であった。

海兵隊が復旧した仙台空港も見たが、周辺の空き地には警視庁のパトカーが止まっているので不思議な感覚がしたものである。

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仙台空港復旧を急ぐ米軍部隊

 

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仙台空港周辺に残るがれき(5月22日に撮影)

自衛隊員も、警察官たちも、被災者をいたわりつつ不眠不休で懸命に遺体捜索と検視などに励んでいたから頭が下がった。若いからできたるのであろう。

勿論、友軍である米軍もである。

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孤立した気仙沼の大島に救援物資を届ける米軍

 

時の総理と官房長官らは、己自身と家族の保身に汲々としていて、国家国民のために尽力する雰囲気ではなかったから、これこそがこの震災の元になった不幸なことだった。そんな政権を選んだ有権者、に責任があると言うべきかもしれないが…

あれから10年、東京五輪はその復興を世界に示すために!手を挙げたのではなかったか?しかし時期尚早だったとは言えまいか?いま改めて10年たっても復興には程遠い被災者の苦しみを見れば、東京五輪は最初から犠牲者のためにも「遠慮」すべきではなかったのか?と思う。知人は未だに多くの犠牲者が夢枕に立つというが、私が、震災を報じる新聞を見て体が震えたのは、雪の中、素足で祈る次の僧侶の姿を見た時である。

東北人は信仰心が強い。次回はそんな”目に見えない現象”について書いてみたいと思う。

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