軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

見逃せない“軍隊の劣化”

日本ではさほどニュースにならないが、気が抜けないのは各国で始まっている“軍隊の劣化”だろう。

その昔、友人である伊藤貫教授が、メールをくれ、「米国は衰退する」と予言した事があった。現役時代、三沢や沖縄などで、友軍たる米空軍初め、海兵隊や海軍、陸軍軍人及びその家族たちと交流した体験から、「政治家や文官たちはいざ知らず、軍人の精強さで比較している私としては、それほど悲観することはないのではないか?」と回答したのだったが、沖縄海兵隊のエルドリッジ氏が「規律違反?」で解任されて以降、あれほど精強さを誇っていた海兵隊幹部(大佐)の中にも利己主義な人間がいるものだ、と驚いたことがあった。

 その後伊藤教授は2012年に文春新書から「自滅するアメリカ帝国」を上梓したから、一読して感想を送ったが、彼は「私の関心は欧州にあります」と言ってきた。その時も、私としては米国の精強さを、軍隊を基準にしてみていたのだが、以前ほど精強さを感じてはいなかったものの、まだ「健全だ」と判定していた。

ところがどうだろう。

共同電によると「米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長が昨年、トランプ大統領(当時)が中国に戦争を仕掛けることを懸念し、中国軍側と秘密裏に連絡を取って攻撃を行う際は事前に連絡すると伝えていたことが明らかになり、大きな問題となっている」と報じ、他のメディアも同じように伝えた。

 

在米の評論家・アンディチャン氏はAC 論説No.861で「ぶざまな崩壊が続くアメリ」と題して、『バイデンのアフガン総退却はアメリカの歴史始まって以来最悪の事態だと思っていたら、アフガン総退却から二週間もたたないうちにミリー統合本部議長(参謀長)が敵である中国の李作成参謀長に電話してアメリカは戦争の意図がない、もしもトランプが暴走するなら事前に伝えると約束した事件が起きた。

 バイデン政権が発足して八ヶ月だけでアメリカの崩壊はアフガン退却だけでなく、軍隊の参謀長が敵に通報するといった米軍の崩壊が起きたのである。こんな軍隊は最低、あり得ないことである(以下略)。』と書いた。伊藤寛氏の予言?が当たったのだ。

にわかには信じがたい点はあるが、私は前述のエルドリッジ氏と対談した時、彼は上司をあからさまに非難をしなかったが、理不尽にも彼を更迭した軍人も「人間ですから」というにとどまったから、この事案の裏にある、劣化?しつつある海兵隊の一端を知った気がしたものだ。

まさかこの時彼を失職に追い込んだ上司が、ミリー統合参謀本部議長だとは言わないが、沖縄で問題が起きた直後にワシントンに発令されていたというから、なんとなく「高級官僚」に栄転するのに問題を起こしたエルドリッジ氏が邪魔だったのではなかったのか?と、うがった考えがよぎったものである。勿論今回の統合議長とは無関係だろうが。

精強をもってなる海兵隊も、構成するのは人間である。私の沖縄時代のカウンターパートであったウエイン・ローリングス海兵隊司令官には到底及ばない。やはり人間!だから、”劣化するのもやむを得ない”のかもしれない。

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 ミリー統合参謀本部議長 現在63歳(インターネットから)

 

 

 処で今注目の人民解放軍の内部もでたらめのようだ。2000年から約10年間、日中安保対話を継続して日中間を往復しシナと会議をしてきたが、そのころから問題になっていたのは、退役解放軍将兵に対する処遇が実にお粗末なことであったから、各地で“退役軍人らによる暴動”が頻発していたものだが、いまだにそれに変わりはないようだ。

 9月17日の大紀元日本の報道によると【中国各地から200人以上の退役軍人が13日、北京にある中共中央軍事委員会の陳情受付部門「政治信訪接待処」に集まり、処遇の改善を求め陳情を行った。137人が強制連行され、記事掲載の時点でまだ釈放されていない。中には戦争経験者もいる。

 参加者は大紀元に対して、ほかにも大勢の退役軍人が北京に向かったが、途中で現地当局に連れ戻された、と話した。】という。

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中共中央軍事委員会の陳情受付部門の前に集まった退役軍人ら (大紀元日本)

 

もともと中国は共産主義専制国家であるから、将兵を”使い捨て”にするのも判らないでもないが、民主主義国の“代表格”である米国が、シビリアンコントロールを阻害する軍幹部」を放任するのは理解できない。

他方、シビリアンコントロールについては、どこの国よりも厳格なわが日本で、栗栖統幕議長初め、”舌禍事件”で自衛隊将官を血祭りにあげてきたわがメディアが全く問題視しない姿勢も理解できない。リベラルメディアの御都合主義ここに極まれりと言うほかないだろう。

そうか、わが国のメディアの方の”劣化の方が進んでいる”という証明なのか?

 

届いた書籍のご紹介

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航空情報11月号

特集「防災ヘリ」は有意義だろう。ドクターヘリもそうだが、民間で人命救助に当たる航空活動は称賛に値する。

ご一読あれ!

 

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HANADA11月号

今月も保守派の意見特集号?だが、表紙に紹介されてはいないが「日本言論界を動かす『地下水脈』:西尾乾二」は必読だろう。保守も左翼も、自分の思い通りに意見を国民に強要しようとする傾向が強いのはもともとだが、とりわけ左翼?反日?評論家の水面下における活動はすさまじい。

御巣鷹山事案など、自衛隊が関連した事案で、そのことを「広報室長」として直接体験した私にはよく納得できる。ぜひご一読いただきたい!