軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

プーチンの”茶番”と金正恩の”本気”

ゼレンスキー・ウクライナ大統領は、プーチンの4州併合を「茶番だ!」批判した。

しかし、プーチン氏にとっては「茶番」どころか、政治生命をかけた“本番”なのであり、聞く耳を持たない。これがヒラメ幕僚を従えている“頭領の正体”なのだ。

彼にとって今や頼りになる武器は核兵器しかない。

しかし、欧米諸国がロシアの反撃・第一発目の対応を誤ると、あとはずるずると世界大戦にもつれこむだろう。

彼にとっては「己の意地を通すこと」が最優先事項であり、「世界平和」なんぞ、どうでもいいのだ。

国際社会の機敏な対応が、少し“様子がおかしい?”バイデン大統領に取れるだろうか?というのが、今一番の世界の注目事項だろう。

決断を誤るか、遅疑逡巡すれば、欧州は一面の放射能被害に苦しむことになる。かっての北朝鮮対応がそれを物語っている。

ウクライナは核を持っていないから、反撃は「支援国」に頼らざるを得ない。ウクライナに核があれば、プーチンも打つ手はなかったろう。最後には「核」で応分に抵抗されない以上、「先手を取れる方」が勝つのは常識である。日本もよく検討するがいい。

世界は今や、核戦争の瀬戸際まで近づいていると言っても過言ではない。

 

ところで昨日の国会で、岸田総理は所信表明演説をした。今朝の産経に全文が掲載されているが、この緊張した世界情勢にもかかわらず、

  • 「はじめに」で始まり、「政治姿勢」「経済政策」「物価高・円安対応」「構造的な賃上げ」「成長のための投資と改革」「新型コロナ」「災害対策」「包摂社会の実現」「経済対策」ときて11番目に「外交・安全保障」12番目に「選挙制度憲法」。そして「結語」と並んでいる。

軍事評論家としては、優先度が低い項目について一部掲載してみたが、「結語」がなんとも「言い訳」に見えてならない。

岸田首相の所信表明演説(一部・外交・安全保障。選挙制度憲法。結語)

偶々というべきか、あるいは“同胞たる宗教団体”の窮地を救うためか、今朝北朝鮮が中距離弾道弾を日本上空越えに発射して我が国を威嚇した。メディアは村上選手の56号本塁打と並んで、北朝鮮のミサイル発射で大騒ぎしている。

後輩の元空将が、身内のメールで【早朝からテレビで北朝鮮がミサイルを発射したということで大騒ぎしています。

今までも北は何回もミサイルを発射してきましたが、今朝ほど大騒ぎはしていませんでした。

やっとJアラートというのが整備されたということで、政府の方から流せと指示が出ているのだろうが?

北のミサイル能力は逐次向上して行っているのに、日本を狙われた場合の対応措置(防空壕等の建設)をとっていないのに、地下に逃げろという。

テレビ報道を見て慌てた国民(特に我々老人等)が怪我するかもしれないことを懸念しないのだろうか。

「一応警戒情報は流しましたよ!」というジェスチャーだけということか。】と揶揄している。

まあ、「茶番」だと言わないだけましだろう。

北朝鮮が核をもてあそび始めたのは、周辺諸国の対応のまずさから来ている。要は“増長させ”てしまったのである。

確か、1998年8月に「テポドン1号」が東北地方上空を通過して太平洋に落下した時、防衛庁が大慌てしたことがあった。

あれから北朝鮮は着々とテスト飛行を繰り返し、実戦配備しているのだが、他方わが国は、少しは反撃能力を装備したようだが、イージス・アショアも反対されて装備出来なかったし、必ずしも「万全の体制」は築けていないらしい。

今回の報道も、【日本政府は、全国瞬時警報システム(Jアラート)を通じて、北海道と青森県などに避難を呼び掛けた。北朝鮮のミサイルが日本上空を通過したのは、2017年9月に北海道上空を越えた「火星12」以来5年ぶり。Jアラートの発動もそれ以来となる。

岸田文雄首相は記者団に「暴挙であり、強く非難する」と述べ、情報収集・分析に努める考えを示した。また、米韓両国などと連携して必要な対応を行うよう指示した。政府は国家安全保障会議(NSC)を首相官邸で開催した。】というのだから、国民にはまるで「台風か集中豪雨」時に気象庁が指示するときのように「避難を呼びかけるだけ」である。

首相の所信表明で「外交・安全保障」が全13項目中、第11位であることの意味がよくわかろうというもの。

率先して「北の核に対応する」気概がないのは、どうせ「軍事力の使用は憲法で禁じられている」のだから、という政府関係者の“諦観”に基づくのだろう。

もっとも、国民も「うかつに右往左往しない」だけの学習は積んでいるようだ。