軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

江沢民の死去にみる日本の政治家たちの‟社交辞令”

1989年の天安門事件直後に中国共産党総書記に就任した江沢民国家主席が、30日、96歳で上海で死去した。引退後は上海閥を代表?して現在の習近平体制の発足を後押ししたが、潤沢な資金を背景に、引退後も上海閥を代表する存在だった。

日本のメディアは、何に気を使っているか知らないが、彼の父親が日本軍の協力者だったことを伝えたところはない。彼は父の兄弟の戸籍に移し替え、何食わぬ顔で『日本軍協力者』であったことを隠ぺいして、巧みに世渡りをした。

1998年11月、江沢民は中国の国家元首として初めて日本を訪れ、天皇陛下の晩餐会に中山服であらわれ『歴史を鏡とせよ』と“放言した”ので、「彼はいったい何様だ!」とその非礼に多くの日本人はあきれかえったが、私は前年の10月に、アメリカ合衆国を訪問した彼が、その途中でわざわざハワイに立ち寄って戦艦アリゾナ記念館で献花を行い、ここで事変当時は中国国民党蒋介石政府の統治下であったにもかかわらず、日本の中国侵略と真珠湾攻撃を批判、しかも「当時は中国と米国は同盟国であり、ともに日本と戦った」と演説したから、よほどの歴史音痴か、それとも「歴史問題をネタにアメリカへ接近し、日本を日米離間を狙った」ものだと感じた。

だから翌年の「天皇晩餐会での非礼」は予想できたのだが、政府関係者は慌てるだけであった。

このように、彼は「反日」を掲げることによって過去を隠して中国の指導者になりあがったのであり、「反日精神」は一貫していた。

当時、突如中央政界に現れた彼は、中央の長老や幹部からは相手にされなかった。その彼が、権力掌握のためにやったのが、‟親衛隊”という暴力装置であり、軍の支持を得る目的で「軍人のアルバイト」を黙認し、「汚職には目をつむり」、続いて大将(上将)を乱増し、軍上層部の支持を集めた。当時の中国軍内では「階級は金で買うもの」だという風潮が広まり、中堅将校らは競って金で階級を買ったから、内部の指揮能力はがた落ちだった。上海で海軍大佐に「お金で買えばいいのに」と‟冗談”を言うと、「私は貧乏だからこれで終わりです」と笑ったことがある。

江沢民は上海交通大卒のエンジニア出身で、55年にはモスクワの自動車工場で研修。電子工業相などを歴任した後、85年に上海市長、87年には上海トップの市党委員会書記を兼任したが、その後鄧小平に抜擢されて北京に来たのが1989年天安門事件の直後だった。

さてこのような彼の死去に対して、天皇に対して非礼な態度を取られ、国を冒とくされ舐められた日本の政府関係者のコメントが興味深いから、伝えられた内容を列挙しておこう。

①岸田首相が中国当局関係者に対し送ったメッセージ

 【「江沢民閣下の御逝去の報に接し、深い悲しみに堪えません。江沢民閣下は、改革開放政策を推進し、中国の発展に貢献されたのみならず、1998年には中国の国家主席として初めて我が国を公式訪問されるなど、日中関係において重要な役割を果たされました。ここに謹んで江沢民閣下の御冥福をお祈りするとともに、御遺族の方々、中国政府及び国民に対し衷心より哀悼の意を表します」

親中派の重鎮で自由民主党二階俊博元幹事長のコメント

江沢民・元国家主席は、中国の発展に大きく貢献し、1998年に初めて日本を訪れて『日中共同宣言』を発出するなど両国の友好協力関係の増進に大きな役割を果たした。私が運輸大臣を務めていた2000年に画家の平山郁夫氏を団長とする5200人の日中文化交流使節団とともに訪中した際には、人民大会堂で暖かく迎えて頂いたことをきのうのことのように思い出す。江氏の功績をしのびつつ、謹んでご冥福を祈り、遺族にお悔やみ申し上げる】

 

公明党山口那津男代表

【厳しい見方をわが国に向ける場面もあった」とする一方で、「関係改善への大きな流れを作り、そして次の時代へバトンタッチして今日に至っている」との認識を示した】

 

立憲民主党小沢一郎衆議院議員のコメント

【1つの時代の終わりを感じる。親しくお話しさせていただいた時のことが懐かしく思い出される。中国経済を発展させ、中国国民の生活を豊かにしたいという強い思いをもって果断に行動された、けうな指導者だった。責任ある大国として、まだまだ後輩にアドバイスをお願いしたかった。心からご冥福をお祈り申し上げる】

 

本音と建て前を使い分ける‟日本人”だから、なんとなく“本音”が感じられないこともないが、多分ほとんどが“マインドコントロール”されていると思われる。

こんな方は、菊池寛の短編小説「恩讐の彼方に」しか読んでいないのかもしれない。

 

今日は、サッカーのワールドカップ大会で、日本がスペインに逆転勝ちを収めたので、国民の多くはフィーバー状態である。選手は勿論のこと、日の丸を背負っているという自覚からくる若者たちの行動にも熱気と規律が感じられる。この熱気と規律が全く感じられないのが今の日本の政治家たちだろう。高給とっていながら、一体何をしているのだろう…

国民の方が一歩進んでいるような気がするのだが、なぜだろうか?・・・