軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

防衛論議に欠けている視点

昨今、華々しい?防衛論議だが、不遇?のうちに勤務を終えたOB(老兵)の立場から言わせてもらうと、どこかピントがずれているように思えてならない。

昭和34年に防衛大に入校した私は、祖国防衛という名誉ある使命感に燃えて、小原台に入校したが、制服で外出(当時はすべて制服であった)して横須賀市内を歩いていると、「税金泥棒が歩いているぞ!」とハンドマイクで叫ばれ、メーデーでデモ行進している‟労働組合員”たちから、罵声を浴びたものである。しかし我々は「覚えておれ!いずれ再軍備され国軍将校になるのだ。それまでの辛抱だ」と自分に言い聞かせてきたが、あれから70年経ったものの、「憲法違反?の存在」だという位置づけは変わらなかった。

私は念願の戦闘機乗りになれたからよかったものの、なれなかった仲間は沈んでいたものだ。

あれから38年間、制服を来た生活を送ってきたが、徐々に変化はあったものの、憲法改正」はついになされずじまい、そしてもちろん「国軍」も誕生しなかった。

階級も「一等空佐、三等陸佐」などという奇妙な呼称のままで、将官に至っては「警察予備隊当時の将補」という呼び名で階級章には★二つ、しかもその上は「将」と呼び、星は3つになったが、友好国を訪問した「幕僚長」も星3っつだったから米軍は「中将扱い」で、プライドの高かった源田空将は、訪米時に予備の星をもっていき、米国滞在中は肩章に4っつつけて過ごすという、「規則違反」をしていた。

いずれも「軍隊の何か」を理解できない政治家等の罪だが、その後ようやく「幕僚長は星4つ」に改定されたものの、呼称は「将のまま」だったので、空将には星4っつの「A級空将」と、3っつのままの「B級空将」が存在することになった。しかし国内で混乱するので、星4っつは「幕僚長」と呼ばれ、「並の将官」と区別されるるようになったが、その後統合幕僚長が出来、彼も4っつだから「自衛隊には4人の大将」が出来たのである。実は昔からそうなっていたのだが、それは欧米の軍隊と呼称を合わせていたので、名刺には「英語読み」で書かれていたから、一応正常な形になっていたのである。

全く「落語の世界」そのままだが、自衛隊はそれに黙々と従ってきた。そんな不都合な姿に業を煮やした「三島由紀夫」は、壮烈な檄を飛ばして市ヶ谷台上で自決したのだった。

なんとなく国民に「自衛隊の活動が評価されるようになった」のは例の3・11からだと私は思っている。もちろん部隊が存在する市町村では、自衛隊は「正規の?市民並み」に扱われていたが、都心部では抵抗が強く、特に沖縄では「非人扱い」、都心部の小学校では、自衛官の子供に対して「父親は人殺しだ!」と決めつけて恥じないのが常態だった。今でいう「ウイグル人」のようなものである。

 

ところで昨日の産経抄氏は「便利屋」としてこき使われる自衛隊について、一矢報いて?くれたが、これは氷山の一角に過ぎない。

雨が降っても、雪が降っても、豚が死んでも国が対応できなくなると、すぐに「自衛隊!」とコキ使う。財源が少ない地方自治体は、自衛隊を使って「人件費」を浮かせるから、これ幸いと何でもすぐに呼びつける。

防大生のころ、伊勢湾台風で中京地区は大被害を受けたが、この時災害派遣で出動した水兵と喫茶店で会った時、防大生たる我々に意気込んで体験と要望を話してくれたが、一番癪に障ったのが「オイ自衛隊!乾パンばかり持ってこないで、時には握り飯でも持ってこいよ!」と言われた時だと、彼は憤懣やるかたないように語った。横須賀から船舶で駆け付け、水没している家屋をボートで巡回し、被災者に食料を届けていた時のことだという。

こんな横柄な奴にも、丁寧に接しなければならないのですか?我々も人間だ。我慢できることと出来ないことがある。防大生は将来偉くなるのだから、キチンと言うべき時には言うようにしてほしい

 

それから35年後、JAL123便が御巣鷹山に墜落して120名もの犠牲者が出た。この時、新聞TVは、民間機側の「整備不良」は取り上げず、「自衛隊の救援が遅い!」と自衛隊に責任をなすりつけ、いわれなき罵詈雑言をたたきつけてきた。

当時空幕広報室長だった私は、防衛庁の役人も「内弁慶」で、自衛隊高官も、ひどい記事だ!と怒るだけで「反論」しようとはしなかったから、当時内局広報課長と空幕高官に「現場で黙々と作業している隊員たちの名誉を守るためにも、事実関係を示して反論する」と断り、どこも取り上げてはくれなかったからミニコミ誌で反論したが、これが国会で問題になって部内で干されることとなった。しかし、私は防大生時代に語り掛けられたあの水兵の意思を受け継いだと、満足している。

自衛隊が「活動」したときには評価せず、不具合な事例が起きると、根ほり葉ほり針小棒大にたたきまくる。そんなメディアの体質と、口先だけの政治家とフェイク記事を書いて恥じないメディアに対しては、なぜか口を閉ざす体質が自衛隊側に今でも残ってる気がしてならない。

 

次は葛城奈美女史の記事であるが、第一線隊員たちの心情を伝えていると思う。

上から目線で書き下ろす記事よりも、このように足が地に着いた内容の記事こそが、内容を国民に伝えているのであり、軍事の基本さえわきまえていないお方の唱える「防衛論議」は百害あって一利なし、だと私は思っている。

 

届いた書籍のご紹介

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Hanada 2月号

国民を奮起させようと色々な書き物がそろっているが、244ページの「自衛隊員は泣いている。防衛費不足で官舎もボロボロ」という小笠原理恵女史の一文は、まるで我々の時代を書いたもののように思えるが、未だにそんなに「ボロボロ」なのかな~。確かに民間のマンションには比べようもないが・・・・

今日のブログと併せてご一読あれ!

WⅰLL 2月号

高市総理…」はじめ国内政治家の話題よりも、「チャイナリスク」の方は注目すべきだろう。

相手は着々と「超限戦」を仕掛けているのだから、油断できない。