軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

気になること三点…今朝の産経から

  • 「首相,15日見送りも」

総選挙と公明党に「配慮」して,小泉首相は15日の靖国参拝を見送るとの見方が強まった,という.あれほど「郵政民営化」に拘るのに,国家の根幹を成す,ある意味で「外交戦略」とも言える事柄の優先順位を軽視するのはいかがなものか!.
公明党は宗教集団に支配された政党だから,靖国問題は「反対」の姿勢である事は当然だろう.こんな政党と組んでいる事自体がおかしいのだが,議席数が支配する以上,「背に腹は変えられない」事は理解しよう.その為?の方便なのか,「終戦記念日やその前後の参拝に拘り,再び内外に不安や警戒を抱かせる事は私の意に反する」というが,それならば何故≪8月15日に参拝する≫とあれほど明確に大見得を切ったのか?「公約なんて多少破っても構わない」ものであるならば,郵政民営化にこれほど拘るのはどうしてなのか?どうも腑に落ちない.万一見送れば岡田氏と余り変わりはないことになる.
「内外に不安や警戒」を抱かせるというが,この場合の「内外」とは中国と韓国だけであろう.それほどこの国が「怖い?」のか.参拝は英霊に対する感謝の表現であり純然たる国内問題ではないか?
この「靖国問題」に火をつけた中曽根元首相は,9日にコッソリ?参拝したらしいが,その意図するところもわからない.彼も元海軍主計士官,多くの戦友に向かってなんとお詫びしたのだろう?
靖国は「コッソリ」と行くところではない.何故堂々と参拝できないのだろう?今回,公明党との「連立」に気を配る余り,靖国を「軽視」すれば,大きな禍根を残す事になるだろう.公明党は,自民党と「連立」を組まなければ生きては行けない政党である.自民党に「恩を売るかのような」神崎発言だが、予定外の解散選挙に勝つ事に精一杯,むしろ今回は「貸し」は自民党のほうにある.首相が判断を誤らないように願うばかりである.

  • 「『独島は韓国領』掲げ、陸自隊員と撮影…防衛庁が抗議」

中央に『独党(竹島)は韓国領』と書いた紙を左右に掲げて、両脇の陸自隊員と笑顔で写っている写真は,以前私のブログにコメントを下さる方々から「真偽を調査中」として教えられていた写真だが本物だったのだろう。防衛庁が在日韓国武官を呼んで正式に抗議したという.この写真は韓国のウエブサイトに掲載されて久しいという.ハングル文字が読めなかった陸自隊員にとっては『嵌められた』も同然だが,まず文の内容を確認すべきであったろう.もっとも韓国兵士は『嘘をついたろうから』結果は同じだったかもしれない.
この事例を見て,私は盧溝橋事件でも旧陸軍の櫻井少佐(中国第29軍顧問)と寺平特務大尉が,中国側から嵌められた事を思い出した.二人が宛平県城内の第29軍兵営で,兵営長の金振中と調停交渉中、城外で銃声と砲声が巻き起こり,交渉は打ち切られる。殺気立った中国兵に囲まれた二人は,やむを得ず城壁を伝って脱出するのだが,この写真を『城内を強制調査するため乗り込む日本兵』というキャプションをつけて利用されるのである.
寺平大尉が秦徳純北京市長の招きで張允栄の屋敷に招かれた時,林耕宇が自分が発行する『亜州日報』を持ってきて,寺平大尉に得意げに見せる.「宛平県城の城壁を越える私の写真を見せたいのが目的だったらしいが,私はむしろ記事の内容に目を通した.ところがその中に『寺平は城内に入って兵を捜索する意見を堅持して譲らず』と書いている.私は目をいからせた.そして鋭く突っ込んだ.『林さん!私がいつ城内の捜索なんかを要求したんだ』すると林耕宇はにわかに慌て出して『これは皆実情を知らない記者が書いたんです.私だったらこんなウソは書かないんですが…』と逃げを打ってきた.」
寺平大尉は「日本側としては実に迷惑千万だった」という程度にしか受け止めていないのだが、その後この写真は世界中に配布され、日本軍の横暴さを示す証拠として中国側に『活用』される.
今回の写真は実に他愛ない日韓軍人の友好的な『記念写真』に過ぎないが,『公正と信義』が通用しない周辺国軍人がどう利用するかわかったものではない.彼らの行動には十分注意するべきであろう.そこで今回,防衛庁が,『他愛ない』と無視することなく,抗議に踏み切った勇気を大いにたたえたい.同時に,竹島を一方的に『占領』されながら,行事予定にあるから…と韓国軍武官などに自衛隊の『部隊訪問を安易に許可』するがごときは,これまたいかがなものか.
これを機に,例え『友軍を招待する行事』に過ぎないとは言え,毅然たる『軍事交流』に転換してもらいたいものである.

  • 事故続きのJAL

12日夜,福岡空港を離陸したJAL機から,『金属の塊が降ってきた!』という.テレビで離陸直後の同機左エンジンが,アフターバーナーのように炎を吹き出すところを見た.
多分タービンバケットが破断して飛散し,その周辺機器が破壊されたのであろう。飛行経路下の住民は驚いたろうが,たまたまジャンボ機墜落20周年の同じ日だったから影響が大きかった。
どうもこの会社は,身体が肥満児になりすぎて,動きが取れないように見える.
20年前の事故に付いては又改めて書くこともあろうが、大阪空港での「しりもち事故」修理の不具合を抱えたまま,数年間も飛びつづけていた,という事実に驚いたものであった
しかも,その後の報道によれば、飛行中に後部トイレの扉に不具合があったにもかかわらず、全く処置されていなかったというから,あきれたものである.空自では、各機毎に気付長が指名されていて、機体の特性から修理状況まで把握している.パイロットは,搭乗するたびに飛行中の些細な異変でもフォーム(記録簿)に記入して整備員に伝達する.機体が小さいから大型機とは違う?とはいえ,申し送りは厳格である.『トイレの扉が開かなかった』とか,『歪んで閉まらない』などという異変は,航空機においては単なる『トイレの扉の油切れ』の問題で済まされないのである.しかも,飛行中と地上では,環境が異なるから『状況再現』は極めて難しく,再現されない事が多い.クルーがめまぐるしく替わる民間航空では,どんな申し送りが行われているのだろうか?と気になったものである.そしてあの事故が起きてしまったのであった.
破損した隔壁の修理時に、ボーイング社の技師が基本的ミスを犯していた事が事故後に分かったが,「ダブルチェック」の責任がある会社整備担当者がそれを見逃し,更に『リダブルチェック』すべき当時の運輸省の担当官までが見落とし、三重になっている『筈』の事故予防システムが,全く機能しなかったというのだからなんとも悲しくなる.事故調査結果はそれを浮き彫りにしたが,ボーイング社は「修理ミスを認め」て解放され、日本側も証拠不充分で『不起訴』になった.
御遺族の不満の根はそこにあるようだが,事故調査に関わる法律が米国と日本では全く異なるから万やむを得ないのである.つまり,事故の再発防止に重点を置く米国は,操縦者や整備員などの関係者から『本当のこと』(自分のミスも含めた正直な報告)を求めるが,それが事故調査後の『裁判』には影響しないように配慮されている.しかし,我国ではそれが出来ない.『私がミスしました』と正直に言えば,マスコミからは鬼のように叩かれ,刑事裁判では重罪?が待っている.
今回のエンジン故障は,例えばこの機体の運用状況を見る必要がある.例えば,採算を優先する余り,休息時間(つまり点検時間)を短くして運用していたとすると,点検するべきエンジン内部の冷却時間がないので,整備員が高熱のタービンブレードをいちいち詳細に点検する事は不可能に近く目視点検に頼らざるを得なくなるが,それでは細かい傷は発見できないであろう.戦闘機でも,エンジンが冷えるのを見計らって,整備員達はその中にもぐりこんで一枚一枚点検するのである。勿論大型機の場合の要領は良く知らないが,基本はそうだろう.
『整備部門』『運用部門』など,専門分野を統括する『上層部』組織が,営業部門を重視して採算第1に傾いた時,高度大量輸送事業には歪が生じて「破壊」する.JR西日本もその典型?だったといえよう.今回のエンジン破壊事故は,幸い乗客は無事だったがから良かったものの、『夜空から金属の塊が降ってきた!』などという,『お星様物語』で終わらせてはならない.NASAシャトル事業に対する真摯な態度を見習うべきである.
元,事故調査専門の『航空安全管理隊』司令だった私の所見を申し上げてみた.