軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

中朝は決別する?

サンクトペテルブルグを訪れた胡錦濤主席が、満面に笑みをたたえてブッシュ大統領と握手したシーンを見て、金さんは激怒したに違いない、と思った。胡錦濤主席は、前回の訪米時に「そっけなかった」ブッシュさんを追いかけて、極力「軽快」に振舞った感があるが、笑顔の裏にはどうもそれだけではないものがあるような気もする。
これほどの世界的話題になった金さんの親分?である中国の主席が、「敵」の米大統領とにこやかに語り合うのを見て、金さんは≪コケ?≫にされたと感じただろうから、その怒りは尋常じゃあるまい。
報道によると、金さんは“雲隠れ”しているそうだが、また以前憶測で報じられたように、今回もロシアに「亡命?」しているのか知らん・・・
いずれにしても国際関係は「昨日の友は今日の敵」なのである。中国にしても、テポドンー2が、今度は渤海湾に落ちないように気をつけているだろうが、朝鮮戦争のときの「義勇軍」派遣にしても、時の毛沢東スターリンは、虚虚実実の駆け引きをして、双方共に「損」をしないように十分計算して行動した。
中国が窮地に立った金日成救援と称して、「義勇軍」を派遣したのは事実だが、調査によると、その大半は、朝鮮戦争開戦の前年に、国共内戦に敗れて共産軍の軍門に下った国民党軍だったという説が強い。降伏してもいずれ「敵になる公算」が大きい、かっての蒋介石軍を、毛沢東は「義勇軍」として朝鮮半島に送り込んだのだが、それでも「反抗」が怖いので、非武装に近い状態で戦場に送り出し、念には念を入れて、国民党軍の専売特許である「督戦隊」がやったように、後方から銃を突きつけて、共産軍に抵抗できないようにしつつ、同時に彼らが米軍側に逃げ出さないように後ろから追い立てて、強烈な火力を誇る「近代装備の米軍」に「始末」させたのだと言う。さすがの米軍も、弾がなくなって混乱したと言い、これ以来「人海戦術」と言う軍事用語が出来た。
朝鮮戦史を見ても、中国軍のことを「人民軍」または「義勇軍」としか書いてないから、いかにも「義勇軍」は「毛沢東軍」のように錯覚するのだが、実際は「降伏した国民党軍」が主力だったと言う説のほうが正しいように思う。これが事実だとすれば、毛沢東は苦労することなく「いずれ寝返りをうつであろう」もてあまし気味の「かっての敵軍」を米軍に始末させ、その一方で北朝鮮には恩を売るという「一石二鳥」を狙ってまんまと成功したことになる。
金さんの父親は、一応国境地帯でゲリラ活動をしていたそうだから、小規模ながらも実戦経験はあることになるから、中国とソ連の狡猾さにはトウの昔に気がついていたことだろう。だとすれば、その息子の金さんだって十分にその辺の事情を知っているに違いないから、北京政府に頼りながらも、胸襟を開くまでには至らず、常に「警戒心を怠らない」可能性は十分あるということが出来る。
今回のサンクトペテルブルグでの米中、米ロ関係をテレビで見て、中・朝両者には新たな猜疑心が芽生え、今後はギクシャクした関係になるだろうと思う。

ところで中東では、とうとう第6次?戦争が始まってしまったようだ。
イスラエルは、相当な覚悟で空爆、ならびに海上封鎖をしたようだが、あれほどの情報大国でありながら、今回ばかりはヒズボラ武装を読み違えていたように思われる。
ロケットやミサイルが予想以上の長射程だったから、市街地に「反撃」をくらい、海上封鎖中のイスラエル艦艇も被害を受けたと言う。
レバノン海上封鎖中のイスラエル艦艇(名称不詳・乗員80名)がレバノンの攻撃を受け炎上、死亡1、不明3の損害を受けて引き返した」と小さな記事が出たが、レバノン側の攻撃は「無線操縦の飛行機」「またはイラン製の対艦ミサイル」だといわれている。
米国が、大量破壊兵器の拡散を防ごうと世界に呼びかけ、色々な合同訓練までしていることは知られているが、今回のことで明らかになったように「テロリストたち」に核兵器が渡れば、必ず彼らは使うと考えられる。
忘れてならないことは、一見平和そうに見えるサミットの裏側では、大国同士による実に巧妙な「武器の拡散」が続いていることである。当然ながら、2005年の武器供給国の中で、最も急伸したのはロシアであった。
1位は米国で、71億100万ドル、ロシアは2位で57億7100万ドル、3位はフランスの23億9900万ドルと続き、以下、ドイツ、オランダ、イタリア、イギリス、スウェーデン、カナダ、ウクライナイスラエル、中国と続く。
ロシアの輸出先は、中国、インド、イラン、シリア、ベネズエラパレスティナ、マレーシア・・・と、反米諸国オンパレードである。
ブッシュ大統領は、胡錦濤主席と握手しながら何を思ったか?プーチン大統領と握手しつつ何を考えていたのか?
北朝鮮の「反乱」とともに、今後の世界情勢が極めて「複雑?」になりつつあるように思われるのだが、一人日本だけがその谷間で足踏みしていてもいいものかどうか・・・
国民の意識は今回のミサイル事例を見るまでもなく、着実に国際関係と国家防衛に敏感になりつつあると思うのだが、それをリードする政治家たちの意識改革は、「国内の派閥争い」の域を出ていないように思われるのが気がかりである。