軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

海自ヘリ墜落に哀悼の意を表する

「伊豆諸島の鳥島東方海上20日深夜に訓練中の海上自衛隊のSH60Kヘリコプター2機が墜落し、隊員1人が死亡、7人が行方不明となっている事故で、現場から回収した2機のフライトレコーダーを解析したところ、機体に異常があったことを示すデータは確認されなかった」とメディアは報じている。

 墜落の原因は不明だが、隊員7名はおそらく死亡していることだろう。おそらく深夜の訓練中に、編隊行動していたうちの2機が接触して墜落したものと思われるが、誠に残念なことである。

 私も以前松島基地司令時代に、所属している救難隊のV-107ヘリコプターに同乗して金華山沖の遥か洋上で「救出訓練」を視察したことがあったが、乗組員の練度は高く、意思疎通も敏速的確で、大いに感心したことを思い出す。

 

 暗黒の洋上を漂流しているもの(ディンギ=浮舟で代用)を、ある程度の高度から捜索して近づき、最後には洋上すれすれまで降下してサーチライトで捜索して、ディンギを見つけると救助隊員が、竿で引っ掛けて回収するのだが、救助員が機長にかける「ちょい右、ちょい左」という指示に合わせて機体を操縦するのは若い2等空尉だったが、実に見事だった。

 とにかく洋上には何の基点もないから、洋上で低空ホバリングするのは危険そのものであるので、事前に対象物を見つけると周囲に発煙筒を投下して、洋上に「輝点」を設置するのだが、驚いたことに金華山よりはるかに遠い洋上なのでもかかわらず、レジャーボートが集まってきて「燃える発煙筒」を持ち逃げするのだ。

 

 勿論予備の発煙筒を追加して投下するのだが、これは明らかに「訓練妨害行動」である。

 3点の輝点を参考にしてパイロットは機体を水平に保ちつつ洋上すれすれを移動するのだが、上空で回転する「回転翌」は一面に白く光った「天井」になっているから、奇妙な錯覚に陥りやすい。

 漸く一人(一体)を回収するのに30分ほどかかり、浮舟を回収すると態勢を整えて高度を取り基地に戻る。燃料にもさほど余裕はないのである。

 救難隊だから、浮舟を遭難者に見立てているのだが、聴くところによればこの浮舟を拾い持ち去ろうとしているのが、洋上で「訓練を妨害」している男らだという。

 勿論海産物の密漁が主なのだろうが、自衛隊機の訓練を見つけると集まってくるらしい。今ではこんなことはないと思うが、当時はこれが現実だった。

 

 今回は敵潜水艦が目標だから、それぞれがソナーを吊り下げて洋上でホバリングするのだから、さらに厳しかろう。

この図は‟昼間”である!夜はほとんど何も見えない!

 

国を守ることに賛同しない青年男女がはびこる中で、一心不乱に訓練をしているこのような青年たちもいることを、ぜひ識者や国民に知ってもらいたいと思う。

 

ご家族に心から哀悼の誠をささげたい。