ノーベル平和賞にオバマ大統領!というニュースを聞いて一瞬「ギャグか?」と思った。エイプリル・フールに外国のメディアがやるような・・・
しかし現実だったから驚いた。受賞理由は「核なき世界」と演説したことで、「核なき世界に向けた構想と努力。国際政治で新たな環境を整備。国際紛争解決で対話と交渉を重視。気候変動で建設的な役割。世界により良い将来への希望を与えた」ことが評価されたという(産経)。
過去の≪平和賞受賞者≫を見れば一目瞭然だが、なんだかちっとも『世界平和』には貢献していないように見える。強いてあげれば、ゴルバチョフ氏のソ連解体、国境なき医師団くらいしか思いつかない。
2000年8月、私は韓国での研究会に参加したが、6月に鳴り物入りで報じられた『金大中・金正日会談』の真意を聞くと、韓国の研究者達はにべもなく「ノーベル平和賞狙いだ」と言ったから驚いたことがある。
韓国大統領は、退官後に『死刑宣告』されたりする危険な仕事だから、生き残るためには「国際的な保護」が必要なのだという。そのときは「冗談にもほどがある・・・」と思ったのだがそのとおりになったから驚いた。
しかし、その後半島情勢はむしろ危険になり、北朝鮮は核まで持つに至った。どこが『平和賞』受賞理由に相当するのだろう?
地球環境問題を世界中に注意喚起させた人物としては、ゴア副大統領がいる。彼は自分の稼いだ資金を元に世界を駆け巡って『地球環境問題』を訴え続けた。
8面に世界の反応の一部が紹介されているが、タリバンが非難し、オバマ一族が歓迎するのは別にして、ゴルバチョフ氏は「この困難な時代には責任を引き受ける能力を持ち、ビジョンと決断力、政治的意思がある人間を支持しなければならない」と言い、シュガーノフ・ロシア共産党委員長は「米大統領の政策はまだ現実的な成果を生んでおらず、イラクやアフガニスタンに平和は到来していない。この受賞は一種の前倒し金だ」と辛口の評価している。
1983年の受賞者・ワレサ元ポーランド大統領は「ちょっと早すぎないか。オバマ大統領はまだ提案をしている段階なのに」と首をひねり「平和賞受賞で(オバマ氏を)支えたいとノーベル賞委員会は考えたのだろう」と推測している。
ハマスの報道官も「オバマは世界平和に向けて約束しただけで、実のある貢献はしていない。受賞に値するためには、やるべきことは多い」と語っている。
いずれにせよオバマ大統領は今回の早すぎる「平和賞受賞」で、今後の活動がやりにくくなったのではないか?
妙にこれを意識しすぎて判断を誤らないようにしてほしいものだが、12月10日にオスロで行われる授賞式での“謝辞”に注目したい。
それにしても一歩先を越された鳩山首相と、核廃絶運動に血道をあげてきた日本の『平和団体』は複雑な心境ではないか、と同情するが、鳩山首相にはもっと大きな?宇宙平和賞を狙って欲しいものである!
ところで、都内ではノーベル平和賞に比べればはるかにささやかな(失礼)「国民の自衛官」表彰式が行われた。
寛仁親王殿下は「世界が複雑怪奇になっている今、自衛隊は日本と国民にとり大いなる信頼、期待の礎として、その重要性は揺るぎないものになりつつあります。(中略)この度、表彰されましたのは、各分野で地道な活動が認められた方々ばかりです。このような隊員たちなかりせば、組織の充実・発展、わが国の安寧もありません。心ある人々は皆さん方の存在に心から感謝していると考えます」と有難いお言葉をのべられた。
他方、鳩山首相(代理・松井官房副長官)は「防衛省・自衛隊が日本の最後の砦であるという役割は変わらないと思います。皆さんが更に精進を重ね、全国の部隊、隊員が寄り一層任務に精励し、国民の信頼にこたえていくことを期待します」と述べているが、いささか認識が狂っている。自衛隊が警察や法務関係者と同じく『最後の砦』であることは論を待たないが、「皆さん(表彰者?自衛官?)が更に精進を重ねて」全国の部隊・・・がより一層任務に精励し、国民の信頼にこたえる」とはどういうことか?
シビリアン・コントロール重視を標榜するのであれば、それこそ政府の使命であって、自衛官個々の任務ではあるまい。他人事の祝辞には情けなくなる。
最後の「国民の信頼にこたえていくのを期待する」との発言も他人事、武力集団の活動をしっかりと果たすように環境を整えて、国民の信頼を勝ち取るようにしていくのが『政府』の役割、隊員一人ひとりの精進に期待されても無理というものである。民主党が毛嫌いする官僚の作文臭い・・・
最後に受賞者を代表して挨拶した下園壮太2陸佐はこう述べている。
「警察・消防は国民と接する機会が多くうらやましい。自衛官は同じように命懸けで仕事をしているが、国民のためになっていると実感できる機会は多くない。そんな中での表彰。名前が素晴らしい。『国民の』というだけで少し恍惚としてしまう。これまでの努力をすべて認めてもらえるような響きがあります」
なんと正直で素直な感想だろう。この言葉を来賓として招かれた北沢俊美防衛相はどう受け止めたことか?
「地道な努力を継続、秀でた能力を発揮し地域とのきずなを深め任務遂行に大きく寄与した」と受賞を祝福したそうだが、部内表彰式程度の内容の祝辞文である。これら真面目一筋の武力集団を率いていることに対する責任感と自覚が伺えない。
私は現役時代、「見る人の心心に任せおきて、高嶺に澄める秋の夜の月」「一隅を照らす、これ国の宝」を信条に部下を指導してきたが、日航機事故の捜索救難活動において、いくら献身的に活動しても、評価されないことに耐えられるほどの聖人君子の集まりではないことを悟り、防衛庁始まって以来の姓名を名乗って反論したのであったが、身内の高官が搦め手?に遭って先に崩れてしまい挫折した体験を持つ。
国民との間を阻害しているのは、そういう意味では一部のマスコミである。産経新聞社だけが「国民の」と顕彰してくれるようになっただけでも大いなる進歩だと思う。
「我々は如何に差別されても、決して国民を差別してはならない」とも指導してきたが、寛仁親王殿下から、このようなお言葉がいただけるだけでも『もって瞑すべし』だろう。ノーベル平和賞よりも価値のある受賞だと思う。
受賞者諸官に心からお祝い申し上げる。
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