軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

中国漫遊記・最終回「上海の印象」

些かダブるところもあるが、最終回として、上海の印象を纏めておきたい.

上海は高速道路などの建設ブームで道路地図がない(印刷していない?)ほどである。上海郊外の蘇州までドライブすると、見渡す限り一面に外資系工場が広がっている。シンガポールなどは本国より広い面積を租借しているという。米国、韓国、カナダ、中華民国シンガポールなど、提携している国の国旗が、中国国旗と共にはためいていたが、日の丸は一本も見えなかった。
これらの外資系工場が一斉に退去したらこの国はどうなるのだろう?これらの企業による「民主化」が進み、人民が「権利」に目覚めた場合、中国共産党はどう出るのだろうか?

事実、上海の沖合いに建設されている世界第二のコンテナ基地を見学に行く途上で、建設地周辺の漁民達の「ピケ騒動」に遭遇した。100名を超える女性達が、公安の監視を受けつつ路上に座り込んでいたのである。「コンテナ基地建設反対」の陳情書を、上海市長に手渡そうとして、我々が乗ったマイクロバスを「市長が乗っている?」と勘違いして取り囲んだのである。猟師達は漁に出ているから、婦人たちが泊り込みでピケを張っていたらしいが、その迫力には驚いた。実に良い体験をしたが、このようなデモが各地で年間7万件(100人以下のデモは切捨て)も起きているというから、政府も大変だろう。人民の権利意識は着実に広がっている。

上海と北京を比べると、気候的にも異なるが、北京のイメージは暗く、上海は明るい。勿論歴史的に上海は開かれた町だから、我々外国人には馴染みやすいところがあるからでもあろう。わが国に例えれば、上海は「京都?」、北京は「江戸?」というところか。何となく上海人たちの態度や気質にもそれが窺われる。

それにしてもビルの建設ラッシュは止まるところを知らないらしい。2年ぶりだったが、前にも増して高層ビルが林立している。しかもそれが夜になると「薄暗い」のである。
数年前までは、夜景がとてもきれいで、彼らの自慢の一つだったが、今回は町全体が薄暗く感じられたから、相当な電力不足なのであろう。
リニアモーターカーなど、近代科学を結集した意欲的な「宣伝」には敬意を表するが、どうも先行きは薔薇色だとは言いがたいように感じた。

上海空港で、時間待ちしている間、隣に座った30代?の日本人サラリーマンと50代?上海出身の婦人との会話が面白かった。
彼女は言う。「政府は勝手に法律を作って人民に示すが、誰もそんなもの守らない。中国人は自分は自分で生きる。中国人は『保険』が少ないし信用していないから、自分で自分の将来を考える。一人っ子政策で私にも娘が一人いるが、各人がそれぞれ自分で働き、それぞれが100万づつ稼げばそれぞれが幸せ。夫も、私も、娘も。娘に金かけて大学出して、日本のようにお嫁に行かせ、炊事洗濯ではつまらない。金を稼ぐのが幸せ、そうでしょう?」
日本人男性は圧倒されていて答えない。彼女は日本のテレビドラマを例に上げ「波乱万丈」と言ったのだが、日本人は見ていないらしく「分からない」と言う。そこで彼女が文字を説明する。「波乱万丈、ほら、波と乱れてと万と・・・、良く分からない。知らない?」
彼は「波?、乱れる?・・」と言うだけ、つい私が答えたくなったが我慢した。とにかく日本語もわからないその程度の日本人が増えたということだろう。
やっと「いつもばらばらに生活していて、旦那さんと離婚にならない?」と聞いたが、彼女の返事が振るっていた。
「妻と夫、信じあって各人が別々に働き、それで離婚になれば仕方ない。でも私達は信じ合っているから大丈夫」
同じ便に乗ったのだが、出発前に彼女が言った言葉が気になった。
「日本の工場はみんな日本人が上に立つ。日本人はコピーコピー。中国人はそれから考え新しいものを作る。中国の方がこれからどんどん良くなるよ。日本人,買い物買い物、中国人仕事仕事! 私は走り回っているから買い物は短時間よ。
そうそう、和歌山と言えば、カレー事件をすぐ思い出す。林の顔がすぐ浮かぶ。彼女、凄い女よ」

決定的な中国人と日本人の差、その思考過程の違い、休みなく喋り捲る彼女の「パワー」に感心しつつ、日本はこれからどうなるのだろう?と聊か心配になった。

昨年中に終結させる予定でしたが、多忙で出来ませんでした。長期間「漫遊記」に御付き合いいただき感謝します。
当然のことですが、この記録はあくまで私の個人的メモを中心に記録したもので、聞き違いや、通訳の誤訳などが含まれていると思います。その点をご配慮下さい。
なお、「SAPIO」1月25日号に、メンバーの潮氏が会議の一部を報告していますのでご参照ください。

いよいよ天下大乱の年が始まりました。北朝鮮の不穏な動き、中国の軍事力使用、韓国空軍機の竹島領空侵犯、台湾の国内問題、そしてロシアと旧支配国間の石油をめぐる軋轢、イスラエル首相の重篤、何よりも少々自信喪失気味の米国政府の動きなど、天変地異、事故のみならず、今年の世界は恐ろしい勢いで変動するでしょう。
「暖冬」との予想を裏切った日本の大寒波、大雪などは象徴的でさえあります。「備え無き国家は、当然憂いだけ」が残るものです。
日本は、この春に「国体を揺るがす」大問題、秋には「政治的大変動」を控えています。今ほど国民が「小異を捨てて大同につく心構え」が要求されているときはないでしょう。
一人一人がしっかり「動き」に注目していきましょう。       (了)