軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

『認識ズレ、同盟の危機!』

在日米軍再編をめぐる日米審議官級協議が終わったが、「戦略重視の米側と地元優先の日本の組み手違いが協議の進展を阻んだ」と12日の産経新聞は報じた。その上「施設庁の談合事件で地元調整はストップし、防衛庁の交渉担当者を更迭したことも米側の不信感を招いた」という。そして「イラク自衛隊撤退など課題が山積する中、再編協議が頓挫すれば『同盟危機』の発火点になりかねない」と半沢記者は書く。
普天間基地移設問題は、私が沖縄で勤務していた時に決定されたものだから、既に未解決のままで10年になる。自分の国を自分で守れない「軍事小国」が、「守ってくれている同盟国」の足を引っ張り続けて来たのだから、「同盟危機」といわれても仕方あるまい。
例えば、日米関係を「日韓関係」に置き換えて、仮に日本が韓国と同盟を結んでいて38度線で守りについていたとする。ところが韓国政府や韓国メディアがこぞって全く協力せず、反日的で「出て行け!」と自衛隊基地にデモを繰り返すとしたら、日本国民はどんな感じがするだろう?「守ってやる必要なんかない。さっさと撤退すべし!」と「朝日新聞」などは、日本政府を責めるのではないか?
そんな関係が今、日米間で起きようとしている、と産経は言うのである。
そんな中、米側が優先したいのは「抑止力を維持するため、海兵隊の移転に付随した自衛隊の役割拡大などの議論(制服組幹部)だ」というのなら、米軍に代わって自国の軍隊の増強を図る絶好の機会ではないか。

湾岸戦争が開始されて間もなく、三沢基地に在韓米空軍司令官が来て、将校クラブでスピーチしたときの事が忘れられない。
拍手に迎えられて演壇に立った司令官は、副官が作った演説メモを取り出し「今日はこれを使わない」と言うや、大げさに原稿を演台の上に投げ出して次のような話をした。
「米本国では、ベトナム戦争の反省から今回の湾岸危機に参戦すべきではないという意見がある。そのわが国では、情けないことに君達と同じ年代の多くの青年男女が、麻薬やフリーセックスにおぼれて反戦を唱え兵役を拒否している。それに比べて君達はどうだ。祖国を遥かに離れた極東の地で厳しい訓練に耐え、ひたすら自由のために戦っている。そして今回、命令されれば君達は、かの中東に駆けつけ血と汗を流そうとしているのだ。
確かに今回の中東危機は、米国にとってさほどの緊急事態ではない。なぜならば、中東から石油が来なくなっても、わが国の地下にはいくらでも眠っているから全く心配はない。中東から買うほうが安いから輸入しているに過ぎない。中東から石油が買えなくなる事が一番困るのは西欧諸国であり、この日本国である。その意味では何も西欧と日本のためにわが米国の、君らのような大切な青年男女を危険にさらす必要はないのだ。しかし諸君、考えてみてくれ。我々米国軍がフセインの横暴を押さえつけなければ、世界の平和はどうなるのだ。自由はどうなるのだ。我々は正義と自由と、そして同盟国との約束を果たすために戦うのだ。その意味で、ここにいる若いわが兵士諸君を、私は心から誇りに思う。共に正義と自由を守るために献身しようではないか!」
会場はどよめいた。若い兵士たちは立ち上がって拍手をした。婦人たちも立ち上がってこれに同調し拍手が鳴り止まなかった。その場にまるで日本人代表のように一人いた私が、如何に困惑したか想像していただけるであろうか。
開戦前、米軍家族の間に「フセイン撃つべし」という声は多かったが、それでも「開戦は避けて、なるべく政治的解決を図るべし。ブッシュはやりすぎでは」という声も多かった。
その冷静な雰囲気が一夜にして覆ったのは、航空作戦が発動され、運悪く捕虜になった多国籍軍パイロット達が、フセインの手でテレビの前に引きずり出され、非人道的な扱いを受けている画像が世界中に流れたときであった。今まで慎重論であった婦人たちも一斉に「サダーム、ハング(絞首刑)!」と憤ったのである。西部劇で裏切り者を木につるして叫ぶあのシーンの再現である。
50年かけて築き上げてきた日米「制服同志の信頼感」が、一部の「私服(私腹?)」や政府の無策で崩れていくような気がしてならない。最優先でこの問題を解決すべく、小泉首相のリーダーシップを強く期待したい。

* 来週末は「超多忙」になるが、私が関与する催し物を「広告」しておくことにする。

1、 2月24日(金) 1830〜  UIゼンセン会館2階大会議室
講演:「自衛隊による拉致被害者救出のシミュレーション」
参加費:一般¥2000
主催: 戦略情報研究所(03-5684-5096)

2、2月25日(土) 1330〜  九段会館
  桜林美佐=「 ひとり語りの会 」
  「日本流行歌(はやりうた)の黎明」
幕末、オランダからやってきた洋楽のテンポに、戸惑う海軍伝習所の武士達の姿から日清、日露そして大東亜戦争までを、国民の愛唱歌と講談で綴る
・・・ピアノ演奏:飯塚彰子
  「信太山靴店
   陰陽師安倍晴明の母、「蔦の葉伝説」の地、大阪・信太山には陸軍野砲兵第4連隊が駐屯していた。大陸で戦う兵士達の前に、信太の狐が現れて・・・。

  ゲスト:元空将 佐藤 守:特別講話「中国空軍誕生秘話」

  御一人様3000円(珈琲または紅茶、お菓子付)
  参加ご希望の方は 090−2735-5528 
またはE−mail:roudokukai_kudan.2665@dokomo.ne.jp まで

3、2月26日(日) 1800〜   アルカディア市ヶ谷(私学会館)3階・富士の間
  台湾2・28革命59周年記念大講演会「徹底討論!台湾防衛―軍事的観点から」

  問題提起:台湾の現状分析―対日米中関係・・・・・・永山英樹台湾研究フォーラム会長)
  講演 「航空作戦の様相」・・・・・・佐藤 守(元空将)
     「海上作戦の様相」・・・・・・川村純彦(元海将補)
     「陸上作戦の様相」・・・・・・松村 劭(元陸将補)
  司会  金美齢台湾総督府顧問)。柚原正敬日本李登輝友の会事務局長)・・〔予定〕
  会費:¥1000