軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

首都圏を「米軍に守ってもらう気か?」

今朝の産経新聞一面に「首都圏防衛に活用=米軍迎撃ミサイル。空自配備補完、打診へ」とあった。何のことか分からなかったが、読んでみてあきれた。
弾道ミサイルに対処するミサイル防衛(MD)で、米軍が保有する地対空ミサイル『パトリオットPAC3)』を日本の首都圏防衛のため活用する方向で協議に入る」のだという。
私はこのブログで、日米関係修復のため政府はもっと努力せよ、という趣旨で、日米関係のささやかな体験談を連載してきたが、多くの読者が共感してくれ、コメント欄で真剣な「防衛論議」が続けられている。その中の意見にあったが、私も「学校教育で軍事的思考を無視」してきたツケがいま極端に現れている、と考えている。
それはさておき、わが国は、どこまで「甘えの構造」が浸透しているのか、あきれてものも言えない。何度でも言おう。もしもこれが「日韓同盟下」の出来事で、韓国が「首都・ソウル防衛のため、西部航空方面隊隷下の空自ミサイル部隊を活用してほしい」といってきたとしたら日本政府はどう反応するか。いや、韓国は痩せても枯れてもそんな「甘えた寝言」を言ってくるはずがないから失礼である。
軍事に疎い日本人に分かりやすい例として、たとえば自宅には軽乗用車しかないが、お隣のAさんはベンツもワゴン車も持っている。今日は大勢来客があるから、「Aさん、御宅のベンツとワゴン車をうちに使わせてほしい。どうせ余っているのだからいいだろう?」というようなものである。
三沢勤務時代、湾岸戦争で輸送機の配分が極端に減った米軍から「日本国内を移動する人員をはこぶ定期便が不足して困っているから、せめて横田(入間)から三沢まで、空自の定期便に同乗させて貰えないか?」と打診された事があった。早速上に報告したが、「役務協定上問題がある」とか何とか言われて断られた事があった。
その後PKOや国際協力事態が急増したので、日米共同訓練も増加し、今ではそんなことはないと思うが、それにしても余りにも虫が良すぎはしないか?
「自分の国は自分で守る」、これが鉄則である。仮に米側から「ワシントンを守るため、自衛隊に協力してほしい」という条件を出されたらどうする?「いや、集団的自衛権行使は禁じられているから出来ない」と答える気か?
いい加減≪甘えの構造≫から脱却してほしい。自国の首都圏さえ十分に守れないようで、何が「防衛庁自衛隊」か。
よく考えてほしい。万一米国が「日本の首都圏防衛」の要望に応じたら、それは日本が「完全に米国の隷下」にはいることになり、米国の属国になったことを証明することになるのではないか? そんな事がどうして分からないのか!
韓国防衛の主導権は、在韓米軍の司令官が握っており、韓国の将軍は次席に甘んじている。自国防衛の決定権を、米国に握られていることの不満が、米韓間で色々摩擦を引き起こしている、と私は理解しているのだが、もしもこの報道が事実だとしたら、わが国は自ら米軍の軍門に下ろうとしていると言えないか?
これほど「誇り高き」日本国民を愚弄した話はない。頼むからそんな「恥ずかしいお願い」を、経済大国であるはずの日本が、多忙な同盟国にしないでほしい。
まず第一に考えるべきことは「空自の高射部隊の再配置」をして、首都圏にもって来るべきである。勿論高射部隊を増やして対処するのが当り前のことだが、防衛費削減、定員削減ばかりに熱心で、「増強恐怖症」にかかっている軍事音痴の政府には望むべきもなかろうから敢えてそう言うのである。
昨日、渋谷で「ミュンヘン」という映画を見てきた。ミュンヘンオリンピック選手村で、イスラエルの選手達が、テロリストに虐殺された事件を描いたものである。
イスラエルも、パレスチナ難民も、双方とも「国家=自国領土」を求めて死に物狂いで戦っている姿が良く描かれていたが、メイア首相が言う。「共存共栄案を提示しても、それを相手が拒否する以上共存はありえない」。そんな深刻な思いを「2600年以上も島国」という温室で生きてきた日本人が理解できるであろうか?
勿論、わが国にも「元の来襲」があり、日清、日露戦争があり、そして大東亜戦争という国難があった。その都度わが先輩達は死に物狂いで戦って、その危機を乗り越えてきた。それが60年前に「たった一度敗戦」しただけで、これほど去勢されてしまったことが嘆かわしい!
米国にだって「都合」がある。自分の事は自分で始末すべきである。わが国に、人も、物も、金もない、というのであれば別であるが・・・
どこかが、何かが狂っているとしか思えないのだが、私の方が狂っているのだろうか?


* ≪行事御案内≫

1、 2月24日(金) 1830〜  UIゼンセン会館2階大会議室 JR/地下鉄「市ヶ谷駅」すぐ
講演(というよりも作戦会議):「自衛隊による拉致被害者救出のシミュレーション」
参加費:一般¥2000
主催: 戦略情報研究所(03-5684-5096)

2、2月25日(土) 1330〜  九段会館  地下鉄「九段下駅」徒歩2分
  桜林美佐(日本文化チャンネル「桜」キャスター)=「 ひとり語りの会 」
  「日本流行歌(はやりうた)の黎明」
幕末、オランダからやってきた洋楽のテンポに、戸惑う海軍伝習所の武士達の姿から日清、日露そして大東亜戦争までを、国民の愛唱歌と講談で綴る
・・・ピアノ演奏:飯塚彰子
  「信太山靴店
   陰陽師安倍晴明の母、「蔦の葉伝説」の地、大阪・信太山には陸軍野砲兵第4連隊が駐屯していた。大陸で戦う兵士達の前に、信太の狐が現れて・・・。

  ゲスト:元空将 佐藤 守:特別講話「中国空軍誕生秘話」

  御一人様3000円(珈琲または紅茶、お菓子付)
  参加ご希望の方は 090−2735-5528 
またはE−mail:roudokukai_kudan.2665@docomo.ne.jp まで

3、2月26日(日) 1800〜   アルカディア市ヶ谷(私学会館)3階・富士の間
  JR/地下鉄:市ヶ谷駅より徒歩3分

  台湾2・28革命59周年記念大講演会「徹底討論!台湾防衛―軍事的観点から」

  問題提起:台湾の現状分析―対日米中関係・・・・・・永山英樹台湾研究フォーラム会長)
  講演 「航空作戦の様相」・・・・・・佐藤 守(元空将)
     「海上作戦の様相」・・・・・・川村純彦(元海将補)
     「陸上作戦の様相」・・・・・・松村 劭(元陸将補)
  司会  金美齢台湾総督府顧問)。柚原正敬日本李登輝友の会事務局長)・・〔予定〕
  会費:¥1000