軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

「それでも世界は激変しつつある」

「それでも地球は回っている」と言ったのはガリレオ・ガリレイだが、日本の政局が足踏みしている間にも、世界は急速に転回している。
3月に入ってからの新聞記事を見るだけでも、恐ろしい展開が予測される。勝手に「占って」見ることにしよう。

1、 米印関係
 ブッシュ大統領は、アフガンを電撃訪問し、パキスタン・インドを歴訪、「不安定な弧」のてこ入れに精力的に動き回っている。アフガンでは「アルカイーダ掃討」に自信を示し、インドではNPT未加盟のインドに、民生用の核開発で協力する事を約束した。
昭和50年、外務省軍縮室で、NPT批准問題を担当したときの事が思い出される。若き外交官達の中には、批准すると将来のわが国の手を自ら縛ることになるから慎重に審議するべきだ、という意見もあり、連日連夜、侃々諤々の討論が繰り返された。
あれから30年、ついにNPTは形骸化した。ブッシュ大統領が「今日の合意は歴史的なものだ」と強調したというが、狙いは中国にあることは間違いない。これがパキスタンの反発を買い、この周辺により一層の緊張を生み出すであろうが、中国はどう出るか?

2、 中国国内問題
 中国共産党中央宣伝部から停刊処分を受けていた中国紙「氷点週刊」が一ヶ月ぶりに復刊したが、これは「処分に反抗した広範な知識人らの『勝利』を意味せず、中国共産党がメディア統制を更に強める前兆と見られている」という。しかし、中国国内の言論の自由民主化を求める運動は、高まりはしても衰えることはあるまい。
1日、幹部や公安の腐敗、土地の強制収用などに抗議して地方から北京に来た農民らが連日、数百人規模で拘束されているという。また、天安門事件で殺害された遺族ら126人が再評価を求めて全国人民代表大会宛の公開書簡を発表した。昨年11月、上海郊外で私もコンテナ基地建設絶対反対を唱える漁民達のピケに遭遇した。
中国共産党の内部腐敗は、予想以上に進んでいるようである。これに経済的「打撃」が加わったらどうなるか? 中国国内情勢は予断を許さない。

3、 台湾問題
 中国に「取り込まれつつある」国民党と、陳水扁総統との軋轢は、1947年2月28日に、大陸から進入してきた外省人と、台湾人との抗争(228事件)で3万人が虐殺された59周年記念日に当たる2月28日に、陳総統が「国家統一委員会」の廃止をめぐって、一段と独立志向を鮮明にしたことによって激化している。対中接近を図る野党・国民党は、陳総統の罷免を視野に、これに対抗しようとしているが、これを機に、台湾海峡を巡る緊張は高まりつつある。万一、国民党が政権を奪取するようなことになれば、尖閣方面は中・台共同で日本に対抗してくることが予想されるから、日本は南西方面の防衛を強化しなければならなくなる。米国も、台湾に供与したF−16戦闘機や艦艇などが、事もあろうに第7艦隊向けの「抵抗勢力」になる事を想定しなければならなくなる。
そこで米国は、陳総統に「現状維持」で冷静に対処するよう希望しているが、それは中近東方面が火急の課題だからであろう。

4、 中近東問題
 イラクは、国内安定が進行しつつあるが、宗派対立が激化している。移行政府が未だ実力をつけていないこの間に、宗派対立で死傷者が増えると、米国民の厭戦気分はいやがうえにも高まるであろう。ブッシュ政権は意地でもイラク安定施策を推進するだろうが、イランの核開発は「秒読み段階」に入りつつある。イランの核武装に対してイスラエルが看過するはずはない。
その昔、イラクの核施設を空爆した、当の編隊長が国防大臣である。既にプランは出来ていると見るべきである。「日本政府は2日、イランの核開発問題で、経済制裁措置の一環として石油禁輸措置が検討されているのを受けて、禁輸措置が発動された場合、石油の国家備蓄を放出する方針を固めた」という。わが国でも官庁の担当者はそれなりに危機感を持って動いている事が窺えるが・・・。

5、 国内問題
 それにしては日本国内の政治の体たらくはどうしたものか。5月にサマワ陸上自衛隊を撤退させ、クエートの空自を延長する、等という重大な課題が残されているのに、「ホリエメール」問題一色で、民主党惨敗、等と次元の低い問題で精力を使い果たしているようだが、論評するのも馬鹿らしい。偽メール一枚に踊らされるような軽佻浮薄、謀略に無知な低レベルの政治家達に、国の安全保障を一任するわけにはいかないと思う。この問題で損したのは民主党だが、「得をした」のは一体誰か?そこにカギがあるように思う。
そんな中、作家の安倍譲二氏がコラム「断」に、「愛想がつきました」と題して次のような文を書いていたが、全く同感なので、産経新聞以外の読者向けに「転載」する。

「僕は国会で偽メールを振りかざして質問した永田寿康衆議院議員と、彼が所属する民主党に愛想をつかしています。28日に謝罪会見をやったのですが、役職を降りたのは野田国対委員長ただ一人、張本人の永田某も党首討論で確証があるとまで言い切った前原代表も責任を取りません。政治家としての誠意も勇気も示せず,気合も気骨も持ち合わせない彼らに、僕は絶望します。今回のことは本当に、罪万死に値します。
耐震強度偽装問題ライブドア事件、米国産牛肉危険部位混入事件、防衛施設庁談合事件と、自公政権の積年の膿が噴出して青くなった政府を、馬鹿な民主党が生き返らせてしまったのです。
野党に今回のような愚かなチョンボがあると、四点セットといわれた怪しい事件が全てウヤムヤになってマスコミも有権者も、政府の責任を追及しようという盛り上がりが吹っ飛んでしまいます。だから僕は、この民主党の議員がやったことは万死に値するというのです。ジャーナリストと称するいかがわしい男が渡したメールのコピーを、真贋も確認せず鬼の首でも獲ったかのように国会で振り回したのですから、この永田という男はカラスよりも、猿よりも軽率で話になりません。
体調が悪いと称して病院に逃げ込んだのも、野党の若手議員のやるようなことではありません。しかし、それにしても、この真に愚か極まる大チョンボが出たタイミングは、絶妙に過ぎるとは思いませんか。僕は前原代表と政府は、グルじゃないかと疑ってしまうのです。(作家・安倍譲二)」