軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

中国の動き・米国の動き、国内の停滞

慎重、且つ真摯なコメントが数多く寄せられ感謝している。いちいち返答できないが、貴重な情報、異なる意見は大変参考になる。
ところで、今朝の産経新聞の国際面は、大変示唆に富む構成であった。6面に中国の「全人代」関連記事、7面に「米印関係」記事が対比して掲載されていたからである。
まず中国だが、「国防費二桁成長を維持、台湾で強行決議」か、といわれるが、仮に台湾に「強硬な手段」をとるとしても、その背後には米国の手が回っている。モンゴル、中央アジア、アフガン、パキスタン、それに今回のインドである。中国にとって最も気になる「ウイグル地区」では、独立運動が激化しているという。勿論チベットも、内モンゴルも、そして朝鮮族が多い東北部でも、独立志向は強く、火消しに中国政府は苦労しているというから、台湾「独立阻止」の本音は、これら国内の「独立闘争」に火をつけないためだ、と私は見てきた。だからであろう、「陳水篇が『独立』という言葉さえ使わなければ現状の平和が保たれるのです」と中国の研究者は以前我々に強調したものである。
それに今や中国政治の「カギを握る」のは「農村浮揚対策」であることは間違いない。昨年11月、上海郊外で公安に囲まれたピケ隊と遭遇したとき、同行した一人が「多分、農民達でしょう。立ち退きさせられた先が不便な土地だとか、金が少ない、等と彼らはしょっちゅう抗議しますから」と言ったが、実は彼女達は「農民ならぬ漁民の妻達」だったのである。ということは、農民以外の抗議デモも各地でおきているということになる。
「『新農村の建設』の目標は皆さんが豊かになることです」―。胡錦濤国家主席春節旧正月)の休みを返上、革命の聖地、陜西省延安で農民にこう語りかけた」と記事にある。
 農民対策を間違えると、胡錦濤政権の命取りになりかねない。彼は必死であろう。

インド訪問中のブッシュ大統領は、精力的に「インド取り込み作戦」を遂行している。旧式な「ソ連製兵器」を装備しているインド空軍に、米国の最新の武器を提供すると声明した。現時点で最新鋭のF-16やF-18戦闘機の売却を検討するほか、ヘリコプター、哨戒機、艦船などの売却を検討するという。「米印関係、最も緊密に」という藤本記者の記事によると、「言論の自由や集会の自由、宗教の自由が保障されたインドと共通の価値観を共有する点を強調し、『インドは二十一世紀の米国の当然のパートナーである』『両国はグローバルなリーダーだ。我々に達成できないことはない』と、一層の協力拡大を目指す姿勢を示した」という。ここで、日本人として考慮しておかねばならぬ事がある。
「インド人のトラウマとなっているのが、1972年の米中和解である。そもそも、米印両国は62年の中印紛争後、共産主義の膨張という共通の懸念を前に接近、合同空軍演習を行った時期があった。中国の核開発情報に接したケネディ政権が対抗策として、インドに核技術を提供する事を検討したともいわれている。しかし、その米国がニクソン時代に中国と手を結んだのだ。中印対立の時代に米国が民主国家のインドとではなく、共産国家と手を結んだ“ニクソン・ショック”は大きかった。79年の旧ソ連のアフガン侵攻後は、米国はインドのもう一方の安保上の脅威であるパキスタンとの関係を強化していく。こうした歴史を持つインドが米国に懐疑的なのは当然といえる」という同じ藤本記者の分析記事である。 
 米国と「イラク」「イラン」との関係もそうであった。政権が変われば、都合でどうとでも変化するのが「国際関係」である。「昨日の敵は今日の友」である事を忘れず、その中でどのように国益を守るか、これが為政者の最大の任務であろう。
そんな中、わが国の政情を見て「物悲しく」なっているだけで、非力なOBの分際、「専門家の一員として決起する?」等という物騒なものではないことをお断りしておくが、今日もまた「文化面」に、その道の専門家の感想文が出ているので、同感である点を転載しておこう。まず「断」の欄に、文芸評論家・富岡幸一郎氏がこう書いている。
「・・・政治家の小児病化も行き着くところまでいっている。情報化社会の“劇場”政治は、とても大人の鑑賞にたえるものではない。(中略・・・。芥川賞の受賞作なども)今日多く見られるのは、むしろ幼態成熟(ある種の動物が子供の形のまま成熟する)のような文学である。それはそれで面白いが、やはり気色悪い。
戦後文学の作家達は、イデオロギーの時代に政治と文学という硬派な議論をしていたが、今は「政治」も「文学」も、ITという文明の保育器の中で発育不全となっているのではないか」
偶然だと思うが、30面に「進む晩婚化・遅れる出産」という見出しの下、女性の未婚化が進んでいるので、今後出生数の減少はほぼ確実だ、という厚労省調査が出ていた。
31面には、「滋賀県の園児を殺害した中国人女性『鄭容疑者』」に関し、彼女は「結婚仲介業者斡旋」で来日して日本人男性と結婚したとある。
東北地方では随分前から、嫁不足で悩んでいる。その「穴埋め」として、ブラジル、ロシア、韓国、中国などから「研修目的」で入国させ、農家の男性と結婚させていると聞いた。青森の男が巨額の金をもぎ取られたチリの女性は典型的な例だが、この国は、知らぬ間に足元から崩壊しつつあるように思えてならない。
もう一つ、隣に「妙」というコラムがある。今日は本間秀人氏が担当しているが、自衛隊の情報流出問題を取り上げ、最後に「古来、洋の東西を問わず、戦いに勝利するための労力の大半は情報戦に費やされてきた。そして真相は最後まで藪の中ということも多い。ただ今回の問題の裏に、そんな“妙手”が隠されているとは思えず、外交や安全保障に疎い『日本』の姿をまたも浮き彫りにしたのだろう。そう考えざるを得ない事が寂しい」とある。嘆かわしいことだが全く同感である。
そこで妙案! 民主党が「壊滅的敗北」を喫しておとなしくしている間に、彼らを誘って「憲法を一気に改正」したらどうだろう。教育基本法の改正、スパイ防止法の制定など等、とにかく3月、5月とは言わぬまでも、今年中に「想像を絶する事態が起きる」事を前提に、危機対策を進める必要があると思うのだが・・・