軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

阿部知子・社民党議員のメルマガ

 昨夜は、チャンネル桜の「防人の道」で、井上キャスターと「防衛漫談」をしてきた。控え室で新聞各紙に目を通すのだが、この日は「社民党議員・小児科医・阿部知子メールマガジン」「カエルニュース」第253号2007/1/19を渡され、意見を求められた。「国民保護は地方自治から」という題で、小児科医の体験などを書いていたが、彼女は「消防組織法にうたわれる如く、国民の生命・身体・財産を守る役割を担うのが『消防』であり、その責任は各市町村の首長にある」として、「安倍晋三政権になってから『国を愛する』・国防の強化などの言葉が氾濫し、あたかも外敵から国民を守るために国家の力=軍隊が必要であるかのように宣伝されるが、実は『軍隊は国民を守らない』という事実は戦争を通して如実に示されてきた。軍隊は勿論のこと警察も、戦闘のためあるいは犯罪に対しての対処を第一とするため、国民保護は二の次、三の次となる」と断言する。そして阪神大震災で「国による命令を受けて救援に向かったのは数日を経て後のことであった。日本の場合、自衛隊は軍隊ではないし、国土保安隊として出発し、防災のためにも働くことを任務としてきた特別な生い立ちがあるのに、である」と非難した。
 あまりにも支離滅裂な内容に、相当な反響があったらしく、次の「カエルニュース」第254号2007/1/24では「たくさんのご意見を頂戴して」として、事実認識のあいまいさについて「弁解」しているが、あまりの「無知と無責任さ」に論評する気にもなれない。この程度の認識しか持たない女性が国政に関与し、政党の一員として地上波テレビに出演しているのだから、政治が堕落し、地上波テレビの質が低下する筈である。
「国防」と「消防」の違いさえも理解できていないのは茶番にしても、過去の事実を知らないからか、それとも意図的に改ざんするためか、自衛隊の前身を「国土保安隊」と言うにいたっては何をかいわんやである。阪神大震災の実態さえもご存知ないようで、あの時の首相は彼女の属する社民党の前身であった「社会党」の重鎮であった。彼が何をしたか?「村山首相の対応の遅れを指摘される御意見もありますが」とは恐れ入る。未だに彼女のメルマガには意見(抗議)が殺到しているに違いない。
こんな議員に柳沢厚労相の「失言」を取り上げる資格があるのだろうか?
「私を含めて誰もが未曾有の災害に対して、十分な判断や迅速な行動がなしえなかったことについて、多くの教訓が残されたと思います。その重い課題を受け止め、今なお癒えぬ被災者の抱える問題を解決するために今後も政治活動に努めます」と彼女は言うが、無反省この上ない。前号で非難した自衛隊員に対するご自身の釈明はどうなったのか?「重い課題を受け止め?」るそうだが、白々しい。
「初動の遅れは、当時被災状況を迅速に把握し自衛隊の出動を要請する自治体側の被害がひどく、知事も含めて身動きが取れなかったこともあると思います」と書いたが、肝心要の知事はそのときどこにいて、どういう状況だったから「身動きが取れなかったのか」知った上でのご意見か?身動きが取れるようになった彼がとった指示は何だったのか?連絡手段は講じられていたのか?単に「自治体側の被害がひどく」という一言の裏には、他に言われない失態があったのではないか?
「反論しない(出来ない)自衛隊」をいいことに、書きたい放題、言いたい放題の無責任な態度は慎むべきであろう。自衛官といえども人の子、評価されないことに耐えられるほどの「聖人君子ではない」ことを、OBの私が代わって申し上げておこう。 ところで井上和彦キャスターは、全国の陸・海・空自衛隊を自ら廻って取材して歩いている数少ないジャーナリストである。その彼が「国防の真実・こんなに強い自衛隊」(双葉社¥1400+税)を上梓した。「今後も政治活動に努める」という阿部女史のために言っておきたいが、真の自衛隊を認識するために、是非この本を読んでもらいたい。その上でご自身の意見を言ってほしいものである。