軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

9・11に思う

 昨日はチャンネル桜の収録に出かけた。「相棒」の井上キャスターは外国に出張中だったので、「防衛漫談」ならぬ、両手に華・美女キャスター相手の時事放談をしたのだが、安倍首相が政治生命を賭けたインド洋上での海自部隊の給油活動を継続するか否かの、テロ特措法問題が主題になった。
 インド洋上で活動中の海自部隊の“国家的な意義”が、どうも国民には理解されているとは思えない。参院選挙では、肝心の国策がぼかされて、年金などの不正や政治と金の問題にすり替えられて安倍内閣が大敗したが、今度も「給油活動の是非」が主題になりつつある。テロとの戦いに50カ国が参加し、海上では10カ国の海軍艦艇が、テロ活動封じ込めに活動しているのだが、その部隊に給油することが、どんな国益につながっているのかは論じられない。3隻の海自艦艇が、常時インド洋上で遊弋していることの意義も理解されていない。
 この国の大動脈であるシーレーンが、3隻がインド洋上に存在することによって守られているのだが、まるでインド洋に「ポツン?」と浮かんでいるような論議のされ方はいかがなものか?それまでに至る間のシーレーンを、海自艦艇が往復することによって現実的に「防衛」しているのだという、そんな観点からの報道にはお目にかからない。

 その昔、大平首相が急死した直後、鈴木善幸という岩手出身の首相が登場し、翌年5月に訪米して日米の「同盟関係」を強調、1千海里シーレーン防衛論を打ち出してレーガン大統領を喜ばせたが、帰国後の記者会見でその手の報道機関から集中質問されるや、発言を否定したため米国から顰蹙を買った実例があったことを思い出す。
 同盟国間ならずとも、国際的公約をいとも簡単に破ったこの首相は、国民からも愛想をつかされ、翌年に中曽根内閣が誕生した歴史的事実をよもやお忘れではあるまい。取り立てて鈴木首相の個人的な失策?を取り上げるまでもなく、国際関係と国内のメディア対策を混同すれば、取り返しがつかなくなることの証明である。
 特措法延長をめぐっては、既に米国はじめ、ドイツ、フランスなどの首脳から、海自部隊の活動を評価し、継続するよう要望が出されているが、岩手県出身の民主党代表は、あくまでも「わが道を行く」と強固な意志を貫き通して、同郷出身先輩に続く気だろうか?

 今朝の産経抄は、一ヶ月前に「わざわざ党本部を訪ねたシーファー米大使を45分間も報道陣のさらし者にしたのは、異様の一言に尽きる、と書いた」が、民主党内では「『よくやった』との賛辞の電話が殺到していた。逆にテロ特措法の延長に理解を示す有力議員には、支持者から『アメリカの手先になるのか』といった非難の声が寄せられたという。最近の日本に対するアメリカの首を傾げたくなるような振る舞いとも、関係があるのかもしれない」と産経抄子は書いたが言葉もない。
 確かに米国は、イラクでのテロとの戦いが行き詰っていて四苦八苦しているのは事実だが、ならば冷戦時代に、ソ連に対してそんな発言はもとより、言動をとった日本の政治家は何人いたか教えてもらいたい。今でも中国や北朝鮮に対しては及び腰で、言うべきことも言わず、逆に拉致問題などでは被害者である国民を愚弄する発言をして北の首領様にひれ伏したのではなかったか?何をするか知れたものでない「暴力信奉国」には、全く文句をつけることもなく、民主国家で同盟国・米国に対しては、「態度が生意気だから、少しガツンとやるべきだ!」などとテレビで煽る評論家がいて、その程度の低次元な“快感”を楽しんでいるのだとしたら、この党の将来はないだろう。
 最も、参院本会議場には、そんな薄汚い「快感」を楽しんでいた?婦人議員などが堂々と映っていたから、彼女のような不倫女性も始末できない政党が、米国に歯向かえる筈がない。軍事力を「戦勝国」に一存し続けていて早60年余、何が独立国なものか!国内政治のような「口先だけ」で生き抜けるはずがないのが国際関係である。
 口先だけの「傲慢さ」は、実力を持つ諸外国の指導者たちには通用しないことを知るべきだろう。井の中の蛙…、悔しければ、自国を防衛する実力を整備してからにすべきであり、同盟国ならずとも、敵対諸国に対しても“堂々と”言うべきことを言ってからにしてもらいたいと思う。

 今日はあの9・11から6年たつ。あのときの、まるで映画の一シーンを見るような衝撃的シーンを忘れてはいまい!炎上するビルの窓という窓から、助けを求めて手を振る多くの犠牲者達の姿が映っている写真をもう忘れたのか!

「米国・ニューヨークの世界貿易センタービルの北棟と南棟に相次いで民間旅客機各1機が激突したのに続き、ワシントン郊外の国防総省ビルにも民間航空機が激突したほか、ペンシルバニア州ピッツバーグ郊外に民間航空機が墜落し、合わせて邦人24人を含む2976人が死亡・行方不明。『アルカイダ』の犯行」と公安調査庁の「要覧」に記録されている。この無機質な報告書の短い文にある「24名の邦人」のことを政治家達は忘れてはいないか?
 一部のHPなどには、2976人よりもイラク戦争での死者数が多い、などと数の比較を楽しんで?いる記載があるが、無責任にもほどがある。中にはこの9・11テロは「米国の陰謀だ」という本を書いて印税を稼いでいる輩もいるという。
 御巣鷹山事故の時も、自衛隊のミサイルがぶっつかったのだ、などという無責任極まりない本を出して稼いだ「容共作家」もいるし、自衛隊墜落事故が「UHOに撃墜されたのを防衛庁が隠している」などという荒唐無稽な取材に来たレポーターも知っているから、私は彼らのような無責任作家の説を信じない。

 憲法をないがしろにし、自衛隊を「政争の具」としか取り扱ってこなかった、戦後歴代内閣の「無作為のツケ」が一気に噴出し、それを戦後最年少の総理が必死に支えているという構図は正に皮肉である。
 歪みきった日本政治の決着がつくか否か、11月1日に「凶と出るか、吉と出るか」、静かに見守っている。