軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

食糧自給率40%弱の悲劇

「中国製ギョーザで中毒」とマスコミは大騒ぎだが、食糧自給率が40%をきっている状況では、当然の結果でもあろう。以前私が中国の農村で目撃した“衝撃の事実”をご紹介したが、日本で使えなくなった粉状の農薬を、上半身裸の老農夫が葉物野菜に『花咲じじい』のようなスタイルで撒いていた。2000年秋のことだったから、彼は既にこの世にいないかもしれない。
 人件費が安い、日本の農業を継ぐものがいない・・・など、理屈はいくらでも付けられるが、要は儲け第一主義と、取り締まり官庁の『不作為』が生んだ悲劇だと思う。生鮮?食糧は検査するが、冷凍食品は全く検査していないというのだから聞いてあきれる。国民の生命を何と考えているのか、ガソリン値下げ問題よりもはるかに喫緊の問題ではないか!

 ところで今回の問題でおかしく思うことは、この症例が発生したのは昨年12月のことだったということである。今まで関係者は何をしていたのだろう? 対策に追われていた?らしいが何の対策だろう。またまた隠蔽か? 千葉、兵庫県警が動き出したのでたまりかねて公表したのではないか?
 テレビでは、スーパーなどであわてて対象食品を回収するところが出ていたが、既に一ヶ月以上も経っている。
メタミドホス」という有機リン系の殺虫剤が混入していたそうだが、これは致死性が極めて高い有力な化学兵器の原材料である。冷凍食品製造のどの過程でこの殺虫剤が混入したのか?
 餃子の具に混入するとしたら、ギョーザの製造現場にあったわけだから、製造場所にゴキブリや鼠などが徘徊していたのか? 袋詰めの過程だとしたら、袋の保管場所で使用されていたものか、いずれにせよ衛生観念が乏しいこの国では、工場全体が相当不潔だということが出来る。
 具の野菜に農薬として使われていたものが混入したのだとしても、急激な症状が出るほどの量が残っていたとは考えにくい。
 製品をダンボールなどに箱詰めにして倉庫で保管している間、鼠などに食われないように駆除剤として使用していたとしたら、直接餃子本体に付着する可能性は低いだろう。
 一番可能性が高いのは、いわゆる「悪戯」か、それとも日本人を殺傷する目的の「テロ」ではなかったのか? 何しろこの製品は間違いなく日本人の口に入るのだから効果は抜群である。
 以前、韓国から輸入されたキムチに昆虫や不潔な物体が混入していて、現地では日本人向けだからといって「唾を吐きかけていた」という情報さえあった。
 米国から輸入していた狂牛病牛肉問題は、日米間で大問題になったことは記憶に新しい。
 さて、今回、日中両国政府はこの問題をどう取り扱うだろうか? ただでさえも中国に対しては「及び腰」の政府である。その上中国政府も8月のオリンピックを控えていて、食の安全が確保できなければ大きなダメージを受けること間違いない。開催さえおぼつかないだろう。それとも各国に「弁当持参」で参加する様に要請するつもりだろうか?
 今、中国南部は、歴史的な寒波で100万といわれる人民が、正月に帰郷できないと騒いでいる。50万を超える軍隊が除雪作業中だというが、交通網も電気も途絶え、温家宝首相が現地に飛んでいる。
 そこへこの毒物騒ぎである。日本で使われていない殺虫剤だという以上、中国側に何らかの問題があることは歴然としているが、それにしても我が国の対応振りも極めて悪い。こんなことでは危機管理が十分だとはいえまい。7月のサミットはどうするのだろう?
 スーパーで品物を手にとって見るがよい。鰻や野菜は勿論、落花生、梅干にいたるまで中国産で埋め尽くされている。福岡名産の「ふぐ」でさえも、安いのは中国産だったから驚いた。
 もっと恐ろしいのは、家庭の主婦が直接購入するものは、聊か値が張っても「安全第一」に選ぶことが出来るが、外食産業などで出される料理の中身までは手が届かないということである。

 その昔、通産省のお役人と防衛論議をしたことがあったが、軍事力の整備よりも「食糧と油」の確保こそが、安全保障の根幹である!と力まれて、「今この国のどこに脅威が存在するのですか!」と小ばかにされたものだが、その官僚は事務次官にまで出世した。
 今や「ガソリン値下げ隊」とか、今回のような中国食品による「食糧危機」でこの国の安全保障は完全に行き詰っている。そして誰も責任は取らない。
「中国製ギョーザ中毒事件で、兵庫県が県警から『ギョーザのパッケージ内部から農薬を検出した』と情報を得ながら、丸一日公表していなかったことが30日、分かった」と産経は報じた。阪神淡路大震災の時も、県知事は温泉にいて指揮できず、多くの県民が犠牲になったが、兵庫県にはまだ危機管理体制は出来ていないらしい。
 これが万一『悪戯』や『テロ行為』であったら、政府はどうする気だろうか? 自分の身は自分で守る、というのが『専守防衛の基本』のはずだが、同盟国にまかせっきりだといつかはこうなるものである。食糧自給率向上にもっと真剣に取り組むべきではないか?

 さて今日は、送られてきた書籍の紹介を続けたい。
まず、『ユダヤ難民を助けた日本と日本人』(上杉千年著:神社新報社:¥900+税)だが、歴史を研究している上杉氏の『靖国神社論』である。埋もれていた歴史の再認識が出来る。

次は福田恒存先生の評論集第12巻(麗澤大学出版会:\2800+税)である。「言論の虚しさ」を知りつつ、警鐘を発し続けた先生の気迫が伝わってくる。

最後は月刊誌『テーミス2月号』である。いつものことながら内容が濃いが、今回は『中国から日本企業が撤収する日が来た』という一文は興味深い。ギョーザ中毒事件がこれに輪をかけるかどうか、見守っていきたいものである。

福田恆存評論集〈第12巻〉問ひ質したき事ども―言論の空しさ

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ユダヤ難民を助けた日本と日本人―八紘一宇の精神日本を救う

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