軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

上海会議・その5

「中国製ギョーザ中毒事件」は、被害者が400人を超える重大事件に発展しそうになって来た。人間が生きるための基本とも言うべき食糧を、他国に支配されているのは基本的に生きる条件を他民族に依存していることであり、安全保障上由々しき事態であるということに気がつかない、この国の政策の大失敗であろう。「つくるより買うほうが安い」という原則は、貿易関係者には好都合かもしれないが、国家生存上の基本を揺るがす事態を想像できない政府が取り仕切ると、結果は今回のようなものになる。食糧が豊富に生産される間はいいが、不作が続いたときには高価になるし、相手国の都合次第では売ってもらえないことだってありうる。バイオ燃料!と騒がれてトウモロコシが高騰したではないか!ましてや質の悪いもの、古いものから優先して買わせようとする行為はスーパーの陳列棚を見るだけで証明できる。だから賢い主婦はケースの後ろ側にある「賞味期限が少しでも長いもの」に手を出すのである。
 九州にいたとき、蟻が食べて穴が開いているイチゴをお土産に持ってくる方がいたが、これが信頼の証だというのである。つまり、出荷するイチゴは農薬を使って「ピカピカ」なものだが、自宅で食するイチゴは、無農薬だから蟻が食う。自家栽培のお米も無農薬、農協に出すものは農薬まみれ・・・。きゅうりだって曲がったものをもらったが、出荷するのは一直線でないと売れないのだという。消費者の方にもかなりの責任がある、と私は思ってきたが、今やそれが定着して、不感症になっているだけであろう。
 田舎に引っ越してきて目が覚めたことがある。周辺には農家が多く、中でもトマトは名産だったから夏には完熟トマトをふんだんに食べたが、夏を過ぎて買いに行ったところ、おばさんに「トマトは終わった!」と素っ気無く言われたのである。トマトは“終わる”のである!スーパーには年中あるが、これは流通業の発達と、不自然な農法で生み出されている「虚像」に過ぎない。
 昨秋、近所の蕎麦屋で「生ビール」を注文したら、「生は終わりました。夏だけの限定です」といわれて驚いたのだが、実に嬉しかった。忘れていた季節感を取り戻せたからである。日本人が「四季」を失ってかなり経つ。俳人は季語に苦労しているのではないか?日本人には今や「士気」が低下し「死期」が迫っているのではないか? 蕗の薹、タラの芽、トマト、生ビール、そして冬の鍋物・・・日本の料理には「季節限定」「産地特有」の喜びがあることを忘れていたのである。
 今や食卓に並ぶ食糧も国際的で、中国産の生鮮食品、豪州やアメリカ産の肉、世界中から集まった魚類、アジアで養殖されたえび類、フルーツも見慣れないものが氾濫している。それはそれでいいのだが、日本人が住んだことがない異国の地の成分を吸って育ち、長い空旅、船旅に耐えるために相当な「防腐剤」を使って運ばれてきているのだし、今回のような農薬まみれ、殺虫剤まみれであることは覚悟すべきものなのである。勿論、国にはその安全を確保すべき義務があるのだが、これだって“山田洋行並みの利権”が絡んでいると考えるべきだろう。12月の事件が何故今頃公表されたのか?結局は消費者自身がもっと利口になるべきなのである。
 シーレーンは日本の生命線だといわれて久しいが、食糧の方がもっと身近な「生命線」であることが今回証明されたというべきである。さて、福田首相の今後の舵取りが見ものである。

 ところで、途切れ途切れになっているので気になっている「日中安保対話」の所感を、少々長くなるが続けておきたい。
 
 11月23日(金)は会議までの間、部屋でNHK・BS−1を見ていたところ、インド洋から帰国した海自の『ときわ』が東京湾に入港しているところが放映され、上海などを結ぶ航空便が空域制限で25日まで大幅に制限された、とも報じられた。その原因は中国空軍が演習したかららしいと言う。
 会議の席で中国側に確認したが、軍事行動は知らされていないらしく「以前から空域調整されていて、福岡との間で高度による分離をしたからだ」という答えであったが、それにしても30便以上も欠航するような事態を招く『調整』など、世界の航空界に通用するものではなかろう。
 多分、軍事演習が理由なのだろうが、若し違うと言うのであれば、NHKに“誤報だ”として抗議すべきである。
 0900から、R女史の司会進行で『中日政治・経済の見通しと対外戦略』が始まった。
まず、前所長のY女史が「中国の政治・経済の発展趨勢」と題して大意次のように発表した。
「17回党大会で、経済については国民の生活水準に比べて発展が急すぎ、対策が追いつかなかった。改革解放の成果を認め、現状を意識し、これからも速いペースで発展するが、政府が求めている速度ではない。政府は質を求めている。近いうちに次の三つが重要になるだろう。
1、経済発展=省エネ、省資源、環境保全
 2010年までに中国のエネルギー使用を2割削減目標にする。役人の業績判断基準として、耕地を止め草地にする。つまり緑化で、a環境保全と収入。b大気保全の質の報告。c水質の保全の質の報告。
 川の汚染について(新聞報道を提示しつつ)西部地域の調査から帰ったところである。地区の差が大きく、都市部へ流れる出稼ぎ労働者への思いやりも反映、ギャップの解消は農民から歓迎されているが、かなり時間がかかる。東の沿岸部と内陸部の比は5:1である。
 地域への教育では義務教育を実施し、農業生産技術の向上を目指す。
2、政治的発展
 直接選挙のレベルを上げていく。党の代表は今まで5年だったが今は常任制、法は作っても実施は困難だった。サービスが大事、政治は奉仕である。末端機能の整備状況は対外的インパクトが強い。
 これはつまり、人権や経済的諸問題で、国際的に中国バッシングが強いが、それを緩和するための『国のイメージアップ』に気をつけているということではないか?
 
 続いて吉崎氏が「中国経済と国際金融市場の行方」について北京同様の発表を行い、続いて復旦大学日本研究センター主任教授が「経済問題」について「インフレ防止は急務。銀行はローンを貸し出さないだろうから、不動産相場も下がるだろう。経済は『国有』から『民営』へと移行する。投資も『土地』から『為替』へ移行し、人件費がコストを圧迫し、企業の人件費増加が余儀なくされている。安い労働力利用のメリットがダウンしつつある」と貴重な考えを提示した。
 今回のギョーザ問題の根底にもこれがあるのではなかろうか? 

 続いて潮氏が『日本から見た中国の情勢』と題して、表を提示しながら「a国内格差が大。b環境問題。偽ブランド、偽ディズニーランド問題。c国防費の増大。dF−15と同世代のSU−27を装備し、台湾と同数の航空戦力を持つに至った」などと率直な見解を提示し、続いて鈴木女史が『世界から中国を見る』と題して発表し、1035に意見開陳を終わった。
 休憩ののち、主任教授が「吉崎氏に国富ファンド」について質問、かなり専門的な質疑があった。女性研究者も吉崎氏に質問、経済問題に対してかなり関心が高いことをうかがわせた。
 続いて私がY女史に大意次のように質問した。
「先生のご意見を聞いていると、中国の現状は『民主主義と社会主義共産主義)』の区別が曖昧に聞こえる。かって改革解放を唱えた訒小平氏は『白猫黒猫論』を唱えたが、経済は解放、政治は統制がありありである。しかし、例えば「民営企業」と通訳されるから、我々日本人は日本と同様なイメージで「民営」ととらえるが、政治的に統制されているのだから本質的に我々とは違う筈である。
 北京の王府井のデパートで、40年前に私が体験した旧ソ連の『カッサ方式』の売り場を見たが、貴国の経済開放は中途半端な“開放”に思える。民主主義の本質は『主権在民』であり、言論や集会の自由があって始めて成り立つものである。つまり、政府(指導者)を民衆が直接選べるか否かにかかっている。
 残念ながら民主国であるはずの日本も、いまや選挙制度が有効に機能しなくなりつつあり、投票率は5〜60%程度、衆愚政治と化しつつある。少人口で識字率が高い日本でさえこの有様なのだから、ましてや13億と言う巨大人口を持ち、多言語、多民族、多文化が混交している貴国では、『直接選挙のレベルを引き上げていく』といっても不可能に近いのではないか? 北京でも『地方政府の腐敗問題』が強調されたが、むしろ連邦制をとり、中央政府が外交・軍事を取り仕切り、全般を統制することは不可能なのか? 現状を見れば直接選挙実施など、時間をかけても達成できるとは思えないが」

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