軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

入院日記 第2幕「極楽篇(その3)」

 6月3日火曜日、早朝からテレビを見ていたSさんが、隣のYさんに話しかけている。
Sさん「Yさん、起きているかい?」
Yさん「ああ、起きてるよ」
Sさん「今テレビ見てるんだけどさあ、男が小学生の列に車で突っ込んだらしい」
Yさん「どんな男?日本人かい?」
Sさん「30代の日本人。小学生に指差されてカッとして突っ込んだというんだが、キチガイだね」
Yさん「そりゃキチガイだ、そんなのが増えたね」
Sさん「俺、リハビリで町を散歩しているでしょ、松葉杖ついてさ。昨日も駅前のベンチで休んで、歩いている連中を何気に見ていたんだが、この連中、何考えてんだかと思うと、怖くなってさ。ガード下の狭い歩道で、前から4,5人の女子大生が歩道一杯に広がって来るが、全然よけてくれそうにない。仕方ないから杖ついた俺の方が、ガードのコンクリに寄りかかって彼女達をよけていると、携帯しながらげらげら笑って通っていく。アンナ連中にぶっつけられて転んだら“変態”とか何とか、何言われるか知れたもんじゃない。怪我したらこっちが損だもん。じっとしてたよ。近くのJ女子短大生だが、それがよ〜とても女子大生には見えない。こんなのが子供生むかと思うと恐ろしくなったよ。日本も終わりだよ、Yさんよ。外は本当に恐ろしいことばかり、ここが一番安全だぜ。俺、本当にそう思うよ」
Yさん「ここと府中ねっ」
Sさん「府中って?」
Yさん「刑務所よ」
Sさん「あっ、そうか、俺競馬場かと思っちゃッた!刑務所か、確かにあそこは安全。併しよ、今は中国人が一杯でなかなか入れないらしいよ」
Yさん「中国人か」
Sさん「そう、日本に密入国して、やばくなると日本人を殺して入る。入れば3食冷暖房完備、蛇頭に追われることもなくこんな安全なところはない。本国だったら銃殺なのに日本は罪人にも“人道第一”だから、連中には天国!コタエラレないって言うじゃん」
Yさん「日本と中国じゃ金の価値が桁違いだから、確かにそうだろうな、でも何で連中を俺たちの税金で生かしておくんだろう。追い返せばいいだろうに」
Sさん「俺もそう思う。俺みたいな馬鹿には偉いさんのやることはさっぱりワカンネエ〜」

 6時半に昨日同様の流動食を取り、規則正しい一日が始まった。Sさんが「佐藤さん、新聞読む?」といって昨日の「中日スポーツ」を持ってきてくれた。
 ざっと目を通すが興味ある記事はない。ところが片隅に面白いものを見つけた。
 兵庫県尼崎東警察署管内で起きた「大阪の工員・陳某(38)妻・小梅(37)を逮捕」
という“入国管理法違反事件”の記事である。
中国籍の二人は、4月中旬、JR尼崎駅前に落ちていた陳の財布を、日本人が拾って届け出たことから、偽造外国人登録証で入国していたことが発覚、逮捕された」ものだが、陳ら夫婦の言い草が面白い。
「日本人は皆親切だから届け出てくれたのですね。中国ではありえない」!!
 彼らは2004年9月から2005年10月の間に日本に入国し、財布を落とすまでの間日本に不法滞在していたもの。
 何とも早、Yさんの「府中刑務所論」が妙に現実味を帯びてきた。

 10時、看護婦さんが来て「佐藤さん、点滴打ちますから」と言った。
「もう終わったのじゃないんですか?」と聞くと、「二十四時間連続ではなくなっただけで、これからは一日に2本点滴します。今から4時まで我慢してください」という。
 いやはやまたまた「点滴棒」につながれるわけである。
私「右腕じゃ不便なので、今度は左腕でいいですか?」
看護婦「どちらでもいいですよ、佐藤さんの都合のいいほうで」
私「じゃ今度は左腕に御願いします」
 ところがこれが大失敗だったことに後で気がついた。メモしたり、読書するには右利きの私には何かと不便なので左に変えたのだが、看護婦が点滴棒をベッドの左側に移動して出て行った後、便所に行こうとしてハタと困った。ベッドの左側はKさんとカーテンで仕切られていてスペースがないから、ベッドの右側からしか出入りできない。
 トイレに行くたびに点滴棒をカーテン沿いに足下に動かし、パイプをひきづりながら点滴棒を右側に移動してから降りて廊下に出ることになった。大失敗だった!
 
 SさんとYさんが話している。
Sさん「Yさんよ、テレビ見てる?」
Yさん「いや。どうして?」
Sさん「俺、1000円出してカード買ってテレビ見てるんだけどさあ〜今のテレビ見るもんないな〜全く」
Yさん「クダランだろう。見てる奴の気が知れないよ」
Sさん「俺、1000円出して損しちゃった!カード買うんじゃなかったよ」

「正論」に目を通していた私は思わず吹き出しそうになった。丁度「セイコの『朝生』を見た朝は」を読んでいたのだが、3月末放送の『激論!地方分権が日本を救う?!』が主題で、出演者を批評しているコラムなのだが、その末尾にこうあった。
「・・・同様に、渡辺宣嗣アナも『本を読んでいるだけの議論に聞こえた。生活実感として道州制は遠い』と、パネリストの議論に大胆な疑問を提起。今回は二人の進行役に拍手かな」。パネリストである議員たちの『生活実感』のなさを批判したものである。ぜひ議員達に、ここに入院することをお勧めしたい!と思った。       (続く)

マオ―誰も知らなかった毛沢東 上

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マオ―誰も知らなかった毛沢東 下

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自衛隊エリートパイロット 激動の時代を生きた5人のファイター・パイロット列伝 (ミリタリー選書 22)

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