軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

一致団結は可能か?

 毎日「サンデー」の私には、3連休は無関係だが、冷房が効いたショッピング街は別にして、周辺の道路は空いている。燃料代高騰で、マイカー族?が自重しているらしいという。無資源国、日本国人の自覚ある行動に拍手したい!


 ところで何が何でも五輪を成功させなければならない中国では、大気汚染改善のための渋滞緩和措置として、車のナンバー規制が始まった。一般車両の末尾ナンバーの偶数と奇数で「北京侵入」を規制したのである。今のところ成功のようだが、人民の不満まで「汚染改善」のようにはいかないだろう。後始末をどうするか。
 今朝の産経新聞によると、「起落回避」を掲げて温家宝首相始め、習近平副首相らが、各地方を視察しているという。景気失速を恐れているというのだが、3面では「五輪機に浮上する中国のマネーパワー」と題して、中国に入ってきた巨額のマネーが、五輪後に「逃げ出すのを防ぐと同時に、管理統制下に置いて、そのマネーパワーを最大限、政治戦略の達成手段として駆使するだろう」と田村編集委員が書いている。いずれにせよ、中国の今後の経済情勢からは目が離せない。


 さて今日は29面(社会面)の「Re:社会部」欄に、昔を思い出して思わず吹き出してしまった。「『陸・海・空』の4字熟語」と云う自衛隊を風刺したアネクトード(小話)=3自衛隊の特色?=の紹介と記者さんの感想である。

1、「上官とのカラオケ」と云う小話。
陸自:「部下は全員姿勢を正して静聴、終了後は万雷の拍手」
海自:「部下は誰も聞いていないが、終わるととりあえず拍手」
空自:「部下でも上官が下手だとすぐ音楽を止める」

2、「会議で幕僚長が間違った発言をした時」
陸自:「そっと紙片を渡して間違いを指摘」
海自:「海幕長の発言に間違いはありえず、正しいと主張」
空自:「大きな声で間違ってます、と指摘」

3、各自衛隊の性格を自虐的に表現した4字熟語
陸自:「用意周到、動脈硬化
海自:「伝統墨守、唯我独尊」
空自:「勇猛果敢、支離滅裂」

「号令や数字の呼び方、無線交信の言葉・・・。小話や4字熟語が表現しているように、それぞれの文化の違いは、昨年3月の統合運用以降もさまざまな場面で見受けられます。
 でも、国家の平和と安定を守り、国民の生命財産を保護するという共通の目的を持つ自衛隊がそれぞれの組織の文化、精神、性格の違いで、統合運用の任務に支障をきたしてはならないことです。『一致団結』といって欲しいものです」と(智)記者は結んだが、それぞれ『活動の場』が異なる3自衛隊には異なった文化があってしかるべきであろう。
 新聞社でも「政治部」や「社会部」、「経済部」や「販売部」ではそれぞれ文化が違う筈だ。使用する「用語」だって当然異なる。問題はそれらをトップがどうまとめるかにかかっている。
 大東亜戦争では、陸海軍の対立から、少ない資源の取り合いが生じて、無用な摩擦と作戦の失敗が目立ったから、戦後それを反省して「防衛大学校」は世界に先駆けて「3軍統一」方式を採用した。
 私が入校したころは、一年生の名札は「真っ白」、2年生に進級する時、それぞれの希望と成績で、陸は「茶色」、海は「紺色」、空は「空色」に色分けされた。
 530名の同期生は、陸=300名、海=100名、空=130名の「要員別」に区分けはされたが、生活は常に同じで、上級生(室長・副室長)2名を含む一室8名の雑居部屋、プライバシーなんぞどこにもなかった。
 こうして4年経ち無事卒業を迎えると、ようやく3自衛隊の幹部候補生としてそれぞれの色の制服に着替え、久留米、江田島、奈良の幹部候補生学校に旅立っていった。
 4年経ってはじめてそれぞれに「色分け」されたのだが、当然陸には旧陸軍の、海には旧海軍の伝統“らしきもの”が受け継がれ、各部隊でそれらしく成長していった。
 変わっていたのは空で、大戦時代には「海軍航空隊」「陸軍航空隊」という「空軍戦力」であり、戦後は独立した米空軍の“支援”を受けて創設されたのだから、一種特殊な文化を含んでいたのは当然であった。例えば、旧陸軍出身者が空幕長になると、NO2は「海」からという風に、組織の根幹は「陸」「海」で公平?に区分けされ、背後には陸軍から分離独立した米空軍の存在があった。
 こんな有様だったから、空自の根幹を成す「人事構成」が、「適材適所」「公平」だったとは言い切れない部分が目立っていた。「支離滅裂」の根源はここいらにあったのではないか?と私は感じていたが、それはいずれ「防大出身者」が“天下”を取った時、つまり、3自衛隊揃って最初の幕僚長が誕生した時、防大創設の目的が推進され、真の統合化が一歩前進するはずだ、と思っていた。
 しかし、防大創設から早60年、創設の意思は見失われ、唯唯それぞれの「制服の色」が定着し、3色揃って雑魚寝?して育った防大教育の特性は消滅していかざるを得なかった。親の心子知らず、私に言わせれば、居心地よさと、マンネリに浸りきって過ごした60年が統合の芽を潰してしまったのだと思う。
 今更号令や数字の呼び方(防大時代には統一されていたのだが)、無線交信の言葉遣い・・・などをいじってみても、半世紀以上も定着してきたそれぞれの文化を容易く変更できるはずはない。問題はトップ人事とその統制力である。トップの意識が変わらない限り「一致団結」は困難だろう。しかし、それでは「国家の平和と安定」を任されている組織としては不十分で、それぞれの文化を認めつつ、効率的な方法を見出していかねばならぬ。
 他方、メディアにもその責任があるのはいうまでもない。唯唯、自衛隊のミスを「誇大に宣伝し」揶揄しているようでは、無責任の謗りは免れまい、と思う。
「産経」だから「読売」だからというのではなく、日本国の将来を担う共通の目的を持った組織の一員として、国営と民営の違いこそあれメディアも「一致団結」すべき時ではないか?
 とまれ、11年前まで「猪突猛進、支離滅裂」な組織の一員として、「大きな声で間違っています!」と指摘して過ごしてきた34年間に、私は限りない誇りを感じている。

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