軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

尖閣を日中台で共同調査?

 今朝の産経新聞5面に、「尖閣、中台と共同調査」と大浜石垣市長が発言し、仲間議員の質問で撤回したという記事が出ていたので驚いた。記事のリードにはこうある。
沖縄県石垣市の大浜長照市長が市議会で、日本固有の領土である東シナ海尖閣諸島(中国名・釣魚島)について、『日本、中国、台湾で共同研究調査すべきだ』と発言していたことが明らかになった。中国の海洋調査船が今月8日に尖閣諸島の領海を侵犯したばかりで、『中国につけ込まれるすきを与える発言だ』(石垣市議)と市長の見識を問う声が噴出した。一方、沖縄県議会と石垣市議会は19日、中国政府への抗議決議などを採択した。領海侵犯に関して、沖縄県議会が中国への抗議決議を採択するのは始めて」

 真相は、尖閣が日本固有の領土であることを強調した上で『ガラパゴス諸島のように貴重な動植物が存在する。日本、中国、台湾で共同で研究調査し、人類の福祉に役立てるべきだ」と答弁したもののようだが、『軽率だ』と指摘され、『世界情勢が極めて微妙な時期なので、言い過ぎた発言のように思う』として市長は撤回したという。

 まず、沖縄県議会と石垣市議会が、今回の領海侵犯に対して抗議決議したことは評価しよう。しかし、資源、領土問題で中国、台湾が“奪取”しようとしている尖閣諸島を、動植物探査に向いている?ガラパゴス諸島並みに扱うのはいかがなものか?彼らが『貴重な動植物』に深い関心を寄せていて『人類の福祉に役立てようと』しているとはとても考えられない。沖縄名産の黒砂糖のように甘い甘い!

 同様に産経も甘い!東シナ海と明記したのはいいが、“日本固有の領土”である『尖閣諸島』に、なぜ括弧書きで(中国名・釣魚島)と書き加えなければならないのか?
会議の席で彼らが発言するのとはワケが違う。彼らに成り代って付け加えてやる必要は毛頭なかろう。

 日中安保対話会議では彼らは『東シナ海』という呼称を嫌うが、「East China Sea」の「チャイナ」を「シナ」と呼んで何が悪い!、外国は皆『チャイナ』といっているではないか!と問うと、『日本人からシナと呼ばれるのが不愉快なのだ』と身勝手なことを言う。
 韓国も「日本海」を「東海」と呼べ!というが、これは既に中国が「東シナ海」を「東海」、「日本海」は「Sea of Japan(日本海)」と明記しているから、日本や世界にそれ以上の「強要」が出来ず尻切れトンボ、韓国の要求は嫌がらせ以外の何物でもない。わが国としてはあくまで竹島は「竹島」、尖閣は「尖閣」であるべきである。

 ところで石垣市議会では、仲間氏が米軍機の石垣空港使用について問うと、市長は「自衛隊も米軍も基本的には軍隊だ。人を殺すための国家の物理的な暴力装置だ」と答えたそうだが、「自衛隊が“軍隊”だ」とは政府に強く言ってもらいたいが、軍隊が単なる「人を殺すための国家の物理的な暴力装置」というのはいただけない。
 勿論、指摘されて撤回したようだから、これ以上は問わないが、「人を殺すための」とは何を言いたいのか?そこが問題である。仮に、有事に石垣空港に展開した米軍、または自衛隊機が、沖縄防衛のために「侵略軍の兵士」を殺すことも問題なのか?

 では逆に石垣空港に「侵略軍」の空軍が展開してきたらどうする気か?彼らこそ「沖縄県民を殺す」であろう。「人殺しはいけません!」と市長が出向いて占領軍の指揮官に言っても、聞いてはくれまい。

石垣市議会は日本政府に対し、尖閣諸島周辺の警備強化を求める要請決議と中国政府に『強い憤り』を示す抗議決議をそれぞれ採択した」というが、この点は大いに評価したい。是非とも『警備強化を求めるため』に、石垣空港の軍民共用化を進めて国に協力するとともに、ついでにといっては何だが、お隣の宮古島の平良市と共に、不良資産化している「下地空港」に、航空自衛隊を誘致して、領空侵犯に備える決議をしてはどうだろう。

 決議文は一片の「文書」に過ぎないが、部隊配備は警備強化の『強い意思表示』であり、侵略を未然に防ぎ、沖縄県の平和と安定を確保する『物理的手段』でもあることを忘れないでもらいたいと思う。


 昨日、たまたま「三沢基地新聞」が届いたので開くと、秋の演習で沖縄に展開した「国産支援戦闘機・F−2」が、尖閣上空を飛行している写真が出ていた。小さいので良く見ないと分からないが、巡視船の上空を2機のF−2戦闘機が飛んでいる。
思想統制?』厳しき折、黙々と防空任務についている後輩諸君に拍手したい!

正論 2009年 01月号 [雑誌]

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「中国の戦争」に日本は絶対巻き込まれる

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自らの身は顧みず

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国際軍事関係論―戦闘機パイロットの見つづけた日本の安全

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