軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

2009年危機に備えよ!

 オバマ大統領が就任した。産経によると、1、米国の再生始める。2、機能する政府か否か。3、平和を煽動する役割。4、世界と共に変革。5、新たな責任の時代、の5つが『演説のエッセンス』として掲げられている。
 全般的には選挙戦中のような派手なキャッチフレーズが影を潜め、代わって「米国再生の仕事を再び始めなければならない」という「厳しい情勢認識を示した」就任演説だったと分析されているが、これをどうとらえるかは今後に待つ以外になかろう。政治は「言葉の遊び」ではなく「現実そのもの」である。名演説をして国民を「感動」させたケネディが、キューバ危機とヴェトナムの泥沼に嵌ったように・・・

 ワシントンの古森義久・編集特別委員も、「歴史の象徴が直面する危機」と題して、現場の雰囲気を伝えているが、「選挙戦中はすっかり薄められていた人種がらみの要員がこの式典では力強く前面に出て、米国の民主主義の深まりや国政の変容を証する形となった」と書いている。米国人の12%しか占めていない黒人の地位が向上したことは事実だが、さて、人口が3億を越えた「人種の坩堝」である米国社会が、どんな方向に動き出すか?
少数民族」の支配?をエスタブリッシュメント達はどう見るか? しばらくは静観する以外にはない。
 熱気が冷えて気がついたら「第2次世界大戦」が始まっていた過去のドイツのようにならなければいいが。


 ところで私は、昨年は「2008年危機」を唱えてきたが、それは、
3月・・・台湾の総統選挙
5月・・・新・台湾総統就任式
5月・・・プーチンロシア大統領交代
8月・・・北京オリンピック開催
11月・・・米国大統領選挙
と単に重要な行事が目白押しだったことを羅列し、その変化がわが国の政治経済に及ぼすことを憂慮したのであったが、結果を見てみると、全てが希望とは裏腹の「×」の方向で決着した。

 1月の台湾国会議員選挙での民進党敗北は避けられないものの、せめて総統選挙では「台湾人の抵抗」を期待した。しかし結果は想像以上の敗北であった。就任式も国民党復活と大陸の無言の“支援”で、台湾の将来は“決まったも同然”と感じたものであった。そしてその後、台湾では政情不安定が伝えられているが、国民党が“誇る”強力な「特務機関」が復活した以上、そう易々と原状回復とはいくまい。

 自由主義陣営が汚染と人権で“期待?”した北京五輪も、強力な国家統制の元で強行され、「大成功」と自画自賛する結果に終わった。勿論、そのしわ寄せを受けた人民の抵抗が国内で広がり、北京政府はその収拾に多忙なことであろうが、それはまもなく始まる「春節」と、それに続く「天安門広場事件」「チベット独立」「建国」記念日などの「政治的に敏感な諸行事」の成否如何にかかっているように私には見える。
 そして肝心の米国大統領選挙だったが、共和党は惨敗して、民主党が政権を取り戻した上、誰も予想できなかった建国以来初の若い黒人大統領の誕生となった。
 このように、2008年は私の身勝手な希望的結末からは程遠い結果に終始したのである。


 米新政権の対日政策がどうであるかについて、わが国では希望的観測が横行している様に見えるが、国家の行動基準は「国益の追及」であり「慈善事業」ではない。イラクとアフガンで継続されているテロとの戦いをどう終結するか、一時停戦して「就任式」に華を持たせたイスラエルハマスの戦いも、いつでも復活する状態にある。

 3面に元国防副長官であった、ウォルフォウィッツ氏が日本に「もっと指導的役割を」と助言している。
 彼はオバマ就任演説を「(現実的に達成不可能な水準に高めてしまった)期待値を意図的に下げようとした面もある」と分析し、「アジア政策では、米政府は党派を問わず中国の重要度を過大評価する傾向があるとし、『誤りのひとつが今日の中国を2050年に予想される中国であるかのように扱うことだ。中国は一部の者が考えるような超大国ではない』と批判」し、更に「日本がもっと指導的役割、世界での責任感を示すよう、米国からの何らかの要求を単に待ち、渋々、要求に屈することがないよう期待する」と“助言”しているが、つまり彼は、日本は「米国からの要求を単に待つだけで、自らの意思を示すことも無く、要求されると“渋々”要求に屈する」国だと理解しているのだが、これが一般的な米国政府関係者たちの「日本観」であろう。
 しかも、要求に応じるのはまだ良いほうで、「憲法を盾に“従わず”」「同盟国なのに集団的自衛権の発動も“拒否”する」奇妙な国だと理解しているのである。
 そんなアジア観を持つ同盟国・米国に、対中評価について「助言」できる人は日本にいないのだろうか?
 何とも役に立たないアジアの「同盟国」ではある・・・

 こう考えてくると、日本には今年の方がより現実的な「危機」が迫っているように感じる。むしろ国際関係よりも、今年最大のイベント、総選挙後のわが国の政情の方が、「政権交代」が予想されていて、わが国歴史始まって以来の「国家の危機」になる予感も捨てきれない。
 新首相が誰になるか、金融危機もさることながら、取り返しがつかなくなる前に、迫り来る2009年の政治危機に備えよう!

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