軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

政治家にも“感性”が欲しい!

「感性」=「外界の刺激に応じて何らかの印象を感じ取る、その人の直感的な心の動き。⇒悟性、理性、感受性」とも言う。
 今朝の産経一面の「小さな親切、大きなお世話」欄の作家・曽野綾子女史の「民主主義と『残りの世界』」に、作家らしい感受性を感じたのは私だけではないだろう。いや、女性らしいというか、世界を回っている体験からというか、いずれにせよそこには、女史の表現力だけの違いではない感受性を感じる。

 オバマ大統領就任について麻生太郎首相が「大統領が誰になっても、日米関係は変わらない」と発言した時、私は「なんとまあガサツな! せめて47歳の新進気鋭の青年大統領にお祝い申し上げたい。日米で太平洋をその名の通り“太平”に保つ努力をしましょう!くらい言えないものか」と思ったのだが、曽野女史も「この粗雑な感覚で発せられた一言は、日米関係の温度を、少なくとも何度かは確実に冷やしたと思う」と言い、「総理は『オバマ氏の若い力の登場を心から祝福したい。日米両国は力を出し合ってこの難局を乗り切ろう。日本は誠実で働き者の国民と高度な産業界の技術を持っている国なのだから』というべきだった」と書いた。
 曽野女史はオバマ大統領が自伝『マイ・ドリーム』の2004年版のまえがきに「初めて出版されてから10年という月日が過ぎた」と書いていることでもわかるように、「この本は選挙目当てに書かれたものではない」。ロースクール時代の自伝であり、それを「優秀なノンフィクション・ライターを失った」として彼女は悔やんでいる。つまりオバマ大統領は「人種問題、アフリカ問題などについて、主観と客観との双方を十分に交えて書くことのできる世界で一流の書き手だということを、その著書の中で示している」が、その優秀な書き手が「大統領になってしまったことで、活躍する機会が減った」と女史は言うのである。
 やがて「マイ・ドリーム」が邦訳されたら、田母神氏の著書同様ベストセラーになるのだろうが、それはともかく、日本には誰が書いたか知らない「選挙目当ての政治家本」が氾濫しているから、オバマ氏の著書が選挙目当てにかかれたものではない、というのが良い。

 更に続けて曽野女史は、オバマ大統領はアフガニスタン問題が「大きな失敗の第一歩になるだろう」と予測しているが、私もその公算は高いと思う。
「なぜならアメリカの凋落はその理論上の無理が時代と共に明るみに出たからだと私は思う。民主主義だけが絶対の正義で、それ以外の族長支配に頼る『残りの世界』は、テロにまで通じる時代遅れ、人権弾圧の社会だと決め付けたことだ。私自身も民主主義の落とし子で、その思想を好んでいる。しかし族長支配の世界の思想を敵にまわすということは狭量だと思う」と女史は言う。 確かにそう見てくると、米国のそのやり方は「帝国主義時代」のスペインやオランダ、イギリスなどのやり方に似ているといえる。大東亜戦争時代、大日本“帝国”は、占領地をむしろ“帝国主義”ではない、「族長支配」を尊重した施策をとった。ゆがんだ歴史観で判断力を失った戦後日本人の中には、その先輩達の優れた施策を、米国に伝授してやれるだけの知識を持ったものがいなくなった。経済優先で、和辻哲郎が「風土」に書いたような日本人らしい感性を失ったからだろう。今でも東南アジア諸国南洋諸島などの、いわば族長支配地域に残る日本崇拝の感情は、現地を“支配”した軍人達が、欧米の帝国主義軍人達とは違って、豊かな感受性を持った軍人達だったからだということを証明していると私は思っている。

 さて、米国の今後だが、「オバマは黒人という血のゆえに、これからは『一族の要求は聞き入れるべきだ』という族長支配社会の強靭な論理の攻撃にさらされる。彼らはまた族長社会以外の人々の介入、つまり派兵によって紛争が解決されることなど全く望んでいないどころか、そんなことをすれば長い年月の恨みを後に残すことは目に見えている。彼らは良くも悪くも独自のやり方で数千年間、紛争を続けいてきたのだ」と現場を知る彼女らしい忠告をした後、「しかし、オバマは、アメリカ的な合理精神の中に育った。一族の要求を聞き入れなければ、『残りの世界』の恨みは、オバマへの失望に集中して現れる。それがこれからのドラマだ」と結んだが同感である。

 そこで敢えて高名な作家の論評に戦闘機野郎が付け加えるとすれば、そのような「血」を持つ彼だからこそ、人種問題、南北問題、民主主義社会と族長社会との「調和」を図れる立場にあるのではないかということである。
「人類皆兄弟」というのであれば、人類が始めてその実現に向けた第一歩を踏み出す、稀有なチャンスであるともいえる。いわば、人類の未来を占う「実験」の始まりともいえなくない。
 大東亜戦争開戦前に、国連でわが国は「人種平等の精神」を唱えた。しかしあの時は欧米諸国の反撃に遭い、わが国の高邁な理想は潰された。「残りの世界」が、過去の日本の発言を覚えているかどうかは知らないが、せめて日本人は知っておかねばならない。その意味でも「政治家にも、作家のような日本人らしい感性が欲しいものだ」と思った次第。


 今日の産経には「遺棄化学兵器問題」「イージス艦あたごの海難審判」「中国の汚染ミルク事件で死刑」「ロシア元スパイによるイブニング・スター紙買収」「クライン孝子女史の正論」など等、興味ある記事が満載。しかし紙数の都合でここまでとするが、不景気感漂う中、千葉に住む友人たちが手弁当で計画した「建国記念の日を祝う千葉県民の集い」「天皇陛下ご即位20年をお祝いする」催しのご案内ポスターが届いたので、千葉の方々にご紹介しておきたい。建国を祝い、不景気を吹き飛ばし、活力を取り戻して欲しいものである。

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