軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

ミサイル騒動、さてどうする?

 北朝鮮がミサイルを発射したと国内は大騒ぎだが、それが成功であれ失敗であれ、さて、今後わが国としてはどうする気だろう?戦後呪縛からの解消に繋がればいいのだが・・・
 10年前は2段目、今回は3段目ロケットの切り離しに失敗したらしいが、北朝鮮はこのまま行けばいずれ成功する。彼らが射程8000Kmのミサイル開発に成功すれば、アメリカも黙ってはいまい。しかし、「黙っていない」といってもそれが何を意味するかは不明である。今回、3段目ロケットの切り離しに成功して、ハワイ沖にでも着弾?していれば、米国の態度も変わっただろうし、考えも分かったろうが、今回は次に持ち越しになった。オバマ大統領の今後の発言に注目したい。


 ところでわが国は、今回の事例から何を学んだのだろう?
 TVではコメンテーターたちによる「他人事のようなお祭り騒ぎ」が続いていて、核心に触れる意見がなかなか聞かれないが、「情報伝達」が「今回はうまくいった」といっても、その情報を聞いた国民ににはなすすべはない。
 漁師は船の上、幼稚園児は先生を中心に固まって座るだけ、花見客はござの上にいて「ミサイルが発射されました!」と聞くだけ、国民は情報を聞いても手の打ち様がないのが実態ではないか。
 駐車場がシェルターになっているスイスや、地下鉄が避難所になっているロシア、月に一度空襲警報に従って避難訓練をしている韓国(最近は知らないが)のように、わが国では普段からこの種の対処訓練が出来ていない以上、情報が「迅速」に伝達されても「宝の持ち腐れ」だろう。

今回の北朝鮮の「挑発行為」で判明したことは「自分の国は自分で守る以外にはない」ということと、死にたくなければ「その対処措置を講じておくこと」、テロ国家からの挑発行為を封じるためには「排除能力を保持しておくこと」、そして何よりも、普段から自国内に巣食っている「敵性団体」を通じて「資金援助をしないこと」だろう。

 今回の件で米国国防長官が、ミサイルが米国本土に向かってこないかぎり「迎撃しない」と公言したことは、日米同盟のあり方に疑問を投げかけた。最も、日本が「集団的自衛権」を行使出来ないといっている以上、米国防長官発言も当然といえば当然なのだが・・・。やはり自国は自分で守る以外にはなかろう。
 政府が「ミサイル発射情報を“定刻以内に”国民に伝達」しても、シェルターさえない以上、一般国民には打つ手はないことは既に書いた。
 自らに降りかかる火の粉を払うための「排除能力」は、昭和31年2月に「わが国に対して、急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国に対し、誘導弾などによる攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだという風には、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、例えば、誘導弾などによる攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います」と鳩山総理時代に政府ははっきりと答弁している。
 問題はただそう「答弁しただけ」で全くその手段を揃えようとしなかったことである。あれから53年経った今、未だ「ミサイルが発射されました!」と“嬉しそうに”伝達ごっこしているのが実態なのだ。これでも我が政府に「国民の生命と財産を守る決意」があるといえようか?

 今回は絶好の機会だから、「反撃手段をもつ」事と「核保有」について検討することを国連安保理で堂々と発言すべきである。今回の件について。安保理が何ら有効な処置を取れないことが判明した時点で。

『中国の衛星迎撃』(インターネットから)
 今回の事例を観察していると、政府も国民も「MDを“万能”」でもあるかのように勘違いしているようだが、あれは所詮「蝿叩きの一種」に過ぎないのであって、相手の攻撃意思を断念させるほどの武器ではない。
 今回国民は知っただろうが、北朝鮮は誰がなんと言おうとミサイル開発を断念する気はない。3段目切り離し失敗がわかれば、次は成功するまで発射実験をするだろう。米国に到達できる手段を持つことが彼らの“悲願”だからである。
 それを止めさせることができるのは何か?日本の野党やリベラルたちは『説得できる』とお思いだろうがそれが全く無意味なことは今回証明された。多分、国連だって不可能だろう。
 残る手段はただ一つ、「誘導弾発射基地を叩くこと」であり、物理的に発射行為が取れなくすること以外にない。
 MDは、平時における奇襲防止と、開戦決定時における費用対効果判断上の基準に過ぎないことを知るべきであろう。 第一、イージス艦やPAC-3で日本列島全体をカバーすることは不可能に近い。根拠地を叩くことが最大の防御であることは、第二次世界大戦で、ドイツの弾道弾・V-2号に対処した英国(連合国)の行動が証明している。彼らはフランス国内のV-2号発射基地に猛攻を加え、これを黙らせた。

 更に不思議なことは、ミサイル騒ぎなどどこ吹く風、賑わうお花見の席もさることながら、パチンコ屋が大いに賑わっていたことである!勿論全国のパチンコ屋を調べたわけではないが、この不況にもかかわらず、近在のパチンコ屋は盛況だった。それはTVやラジオのコマーシャルを見ただけでも良くわかる。日本のメディアの大半は、スポンサーである彼らの言いなりではないのか?

北朝鮮関連記事(SAPIOから)』

『同じくSAPIOから』

 今朝の産経2面に、米議会調査局朝鮮問題専門官のラリー・ニクシュ氏が「日本が北朝鮮に最大限制裁しようと思えば、朝鮮総連の活動を禁止し、幹部を北朝鮮に送還することだ。総連の資金源を断つことも効果的な制裁となる」と語っているが、日本の政治家でこんな発言をする者がいないのはどうしたことか?

 今回のミサイル発射「伝達ごっこ」で大騒ぎしたわが国の姿は全うな独立国の姿ではない。ニクシュ氏から「マッチ・ポンプ」といわれても仕方あるまい。
 さて、政府はもとより国民は今回の事例から何を学んだか?そしてこの“緊張感”がいつまで続くのか?その点を私は最大の関心を持って眺めている。喉元過ぎれば・・・にならないように。