昨年暮れの「田母神空幕長更迭事案」は、保守派言論人たちの正体を暴く「踏み絵」であった。そして田母神氏に対する“圧倒的な国民の支持”は、これら“保守派”と見られてきた言論人達に対する「不支持表明」でもある。
今回の北朝鮮によるミサイル発射事案も、政府中枢(国会)に巣食う議員たちの正体と、メディアの正体も浮かび上がらせつつある。国会決議に対する与野党の態度がそれで、その意味では今回も貴重な「踏み絵」であったといえよう。
決議に賛成している「与党」公明党の真意は不明だが、決議案からだけ見れば、一応“賛意は鮮明”だといえようが、野党民主党が賛成したとはいえ「賛成する形」を取った姿勢はいただけない。それはともかく、はっきりしたことは社民党と共産党であり、この両党は「日本国の政党」だとは言い難いことを暴露したから、コメントにもあったように、次回総選挙で消滅させるべき存在だろう。
つまり、この2党の対応を国際的観点から見れば、国連安保理で「日米」などに対抗して『テロ国家・北朝鮮』を支持する「ロシア」と「中国」と同一歩調を取っている以上、彼らの“祖国”は、ロシアであり中国であり、日本国民の「生命と財産」に危害を及ぼすことに「賛成」している「反日団体」だといっても過言ではなかろう。
これでもまだ目が醒めない日本人がいるとすれば、それは日本人ではない!いい加減に目を覚ましてもらいたいものである。
また、今回に限らないが、日米同盟が「信じられないグループ」の中には、「それ見たことか、米国はあてにならない」などと不信感をあらわにしているが、今朝の産経一面の「明日へのフォーカス」に高畑昭男論説委員が、「同盟をめぐる疑問や問題の多くは米国よりも日本の国内問題だろう。集団的自衛権をめぐる問題も、在日米軍再編が遅れている理由も同じだと思う」書いたことに尽きている。
9・11の時に急遽横須賀を出航した「キティホーク」を、シビリアンコントロールに従って、政府見解どおりに海自が「護衛」していなかったら、あの時点で日米同盟は終わっていただろうと私は感じている。
機転が利いた現場自衛官の措置で、急遽2隻の護衛艦が「訓練出航」し、キティホークの前後を“たまたま”並んで出航したから、その映像を見た米国民が「日米同盟が機能していると錯覚して」喜んだに過ぎない。
「同盟国の安全を守るために現場の兵士が生命をかけるのと同じように、指導者も政治生命をかける意思がなければ同盟は成り立たない。日米安保を意義付ける首脳会談のキャッチフレーズは『世界の中の日米同盟』(2003年)、『新世紀の日米同盟』(06年)、『ゆるぎない同盟』(07年)と発展してきた。それを裏打ちするリスクを政治がとらなければ、単なる美辞麗句で終わってしまう」と高畑論説委員は書いたが、麻生総理にはこのことをよく理解して欲しいと思う。
とにかくこの国の政治の世界には「美辞麗句」だけが先走りして、中身が少しもついていかない悪い癖がある。国会でも政治家達は自分の頭で考え、自分の口で説得することなく、「官僚の作文を読む」癖が滲みこんできたからだろう、と私は勝手に思い込んでいる。美辞麗句だけで政治が動くなら、世の中は平和なはずである! 世の中は「理屈」だけでは通らないことをあまりにも知らなすぎるのではないか?
まるでファントム戦闘機に乗り込んで、教範どおりにスイッチを作動させれば、空を飛べると思い込んでいるようだが、じゃじゃ馬のファントムは、とてもとても、教範どおりには動いてはくれない。スポーツだって、理論どおりに行くのであれば、松井選手やイチロー選手があれほど尊敬される筈はない。政治家と官僚にはもっと現実を知ってほしいものである。
現役時代、訓練に訓練を重ねるわれわれと、机の上で文章をこねくり回している者達との差について、私は良く次のような「ジョーク」で部下を笑わせたものである。
「世の中には、『ある晴れ渡った土砂降りの日に、丸みを帯びた四角い車が、黒く塗られた白い車体を翻して、曲がりくねったまっすぐな道を、後へ後ろへと前進して行った』という一見すると何の矛盾も感じられないような文章を書いて一件落着、世界は動かせると思っている人もいるが、われわれはそうではない。彼らには操縦は絶対に不可能だ!と」
何度も書くが、防衛はヴァーチャルなものではない。法律には従わねばならないのは当然だが、それだけに頼っていては負けるときもある。法律が不備であるにもかかわらず、海自はソマリアに出撃を命じられているではないか。
教範どおりに行かないと怒ってみてもそれが戦場では当たり前、機転と体験から来る一瞬の判断が自分を救い国を勝利に導くのだ、ということを政治家や官僚にも知ってほしい。
産経6面右上に「祭りのあとこそ重要だ」として、乾正人政治部長が“皮肉”で「北朝鮮の金正日総書記は、平和ボケで弛緩しきっている日本人に、有事対応の重要性を目覚めさせてくれる最高の教育者だ」と書いているが、報道現場の緊張した裏話も書いている。予告されていたからスタンバイ状態にあった局内に「誤探知情報」が入って、てんやわんやになった後は「憑き物が落ちたように、局内は『平常勤務』に戻った。日曜の“本番”では、土曜と同じ態勢が取られたが、前日の喧騒がウソのように淡々とネットでの速報と号外つくりが進められた」と。
自衛隊の訓練や「演習」の目的もそこにある。防衛諸計画が「机上の計画通り」に進捗するかどうか、まず図上演習(シミュレーション)で大まかに確かめてみて、不具合を修正したうえで更に「実動演習」で検証する。そこでも予定外の実態が浮き彫りになるから、それを再修正して翌年の訓練計画や予算請求に反映させる・・・。
そして地下の薄暗い指揮所で煩雑な情報整理、判断、部隊への命令起案などを修練するに従って、「新米幹部」も事案を落ち着いて判断処理出来る一人前に育っていく。
一般国民の目から見ればこんな「何の儲けにもならない」作業を延々と半世紀にわたってくりかえし、積み上げてきているのだから、そんな体験しかない私のような自衛隊OBや「ロシアの専門家」の目から見れば「日本の対北反応は病的だ」ということになる。最も、ロシアの場合は「民間機であれなんであれ、進入してきたものは撃墜する」国だから「病的にならない」だけ、むしろ普段が『病的な国』なのであるから話にならないだけの話!
とまれ、「日本の防衛体制のほころびを浮き上がらせていった」ことに対して麻生総理が「いい予行演習が出来たと思えばいいじゃねえか」と語ったように、問題はこの教訓を次にどう生かすかにかかっている。
今回のミサイル事案は、戦後のわが国が如何に「放置国家」であったか!、日米同盟を無効にするような態度を取って来たのはむしろ我が国のほうではなかったのか?、机上の空論ではなく、実動が伴った「演習の必要性」を国民に気づかせてくれ、そのうえ更に政界にもメディア界にも「敵性人(外国人?)」が如何に蔓延っているかも浮き彫りにしてくれた。その点では確かに乾政治部長が書いたように「北朝鮮の金正日総書記は、平和ボケで弛緩しきっている日本人に、有事対応の重要性を目覚めさせてくれる最高の教育者」だから、その“恩義”に報いるためにも、日本政府は決してこれを無駄にしてはいけないのである!彼の期待にこたえて、早く一人前の独立国になろうではないか!
今日は夕方からチャンネル桜『防人の道』の収録、今月は都合で私の出番が月初めではなく今日になったから、井上キャスターとの話題は多分これに尽きることだろう。
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