軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

敵も知らず己も知らず…

7月に入って面白い現象が続いた。
まず1日の香港返還行事だが、民主派のデモ隊が親中派のデモ隊に襲われて騒然とした。
ところが警官に拘束された民主派はその後すぐに解放された。北京だったらこうはいかない。
習主席夫妻は、早々に香港から引き揚げたが、まるで石持て追われるような姿だった。
これを機に香港人に“独立の機運”が高まるのじゃないか?
そしてこれが台湾、ウイグル、モンゴル、四川省に拡大する…。チベットは非暴力主義だから加わるかどうかだが。
周辺に独立機運が広がることが、共産党政権にとっては最大の懸念事項なのである。

そこで威圧しようと『遼寧号』を入港させるが、米空母を見慣れている香港人には通用しないだろう。


次に、2日の都議選だが、予想どうりの結果になった。
私も一都民だから“都民”の感覚は身についている。だからメディアが伝える報道には一切騙されなかった。
米国の主要メディアが、己の“利権確保”のためにトランプ大統領を誹謗中傷していることにヒントを得たのか、日本の3流メディアは懸命に安倍政権を批判した。
とりわけ標的を「安倍首相個人」に絞って、あることないこと大げさに茶の間に伝えたが、今回は国政ではない。巨大だとは言え東京都の問題である。だから、加計学園や森友問題などよりも、築地市場問題と五輪の方が切実なのだ。


今までそれらを“隠密裏に”取り仕切ってきた東京都知事と東京都会議員、とりわけ自民党議員団が、都民の怒りを買っていたのである。
国政の一端を担ぐ、少しおかしい“絶叫女子議員”や、失言居士らの問題よりも、都議会の刷新の方が最優先だったのだ。
そして小池“ジャンヌダルク”が、初登庁した時の東京都庁内のこれら穢れきった“驕れる議員ども”の傲慢チキな態度こそ、2年生などの国会議員らの失態よりも、納税者である都民にとっては直接的だったのだ。
だから見事に彼ら彼女らは落選した! これを古来、天網恢恢疎にして漏らさずという。


新聞が伝えるように今回は「驕れる自民議員らの大敗」だが、それよりも都民は傲慢チキな都議会議員らに鉄槌を加えたのである。

次の結果がそれを明白に示している。
都民ファースト  6→49(+13)
自民党     57→23(-34)
公明党     22→23(+1)
共産党     17→19(+2)
○その他省略


面白いのは次の記事である。
≪開票センターで当落の推移を見守った党都議連の下村博文会長は「予想以上に厳しい結果になってしまった」と力なく語った。記者に文書問題や失言などの影響を問われると、「あったのではないか。国政レベルで逆風が吹いた。(都議選候補者たちには)申し訳なかった」と陳謝した。
今後については「しっかりと自民党は反省し、後に引きずらないようにする必要がある。国民にも理解してもらわなければならない」。(氏は)選挙戦を通じ、豊洲移転問題や五輪問題を巡る小池氏の意思決定過程を批判したが「残念ながら都民に伝わらなかった」と敗因を分析した。(産経)≫


この感覚が最大の敗因なのである。自己過信も甚だしい。小池氏が、都知事選に出馬して以降の、彼やその“一味”の言動を振り返ればよくわかる。
勿論都議会の“闇のドン”や“牛ドン?”や“天ドン?”等も、あの時の己の態度がどうであったか全く忘れているのだ。
都知事のあきれた行状を追求した場でも、前々都知事や都の高級幹部らを追及した100人委員会でも、奥歯に物が挟まったような質問しかせず、すべてが「なーな〜」で、何かとお世話になっているドンらの顔色を窺っていることは明々白々に映し出されていた。
彼らは己の行動の疾しさに気が付かなかった…。面の皮が厚くなりすぎていて皮膚感覚が鈍っていたのである。
しかし都民は、彼らの行状を逐一テレビの画面で掌握して軽蔑しきっていたのだから、今回の結果は当然の結果に過ぎない。


ところが、都議会の結果を見て国政選挙に危機感を感じた?自民党の首脳陣が会合したと記事にある。
「2日夜、東京都新宿区のフランス料理店で麻生太郎副総理兼財務相菅義偉官房長官甘利明元経済再生相と約2時間の会食を終えた首相は記者団の呼びかけには答えず、左手を上げたまま無言で立ち去った。・・・会食では都議選について『結果は予想以上にひどい』との認識で一致。ただ『首相の責任問題にはならない』『国政への影響はない』『経済優先でいくべきだ』と語り合い、『みんなで首相を支える』と確認したという」と伝えているだけである。
彼らの面の皮も厚すぎて、神経が鈍っているのだろう。


たかが都議選挙だが、このような物事に対する分析力のお粗末さは、おそらく国政にも共通しているはずであって、今後とも大きく響くことになろう。
国内では野党と一部のリベラルメディアからは、ここぞとばかりに攻められるだろうし、海外からは、この程度の能力か!と外交・防衛案件は舐められっぱなしになるだろう。
シナとの情報戦(間接侵略ともいう)は既に進行しているのであって、やがて動きが取れなくなるだろうが、わが要人らは今は北のミサイルしか目に入っていない。
情報戦ではすでに完敗しているのだ。


私が言いたいのは、「執拗な情報戦」が行われているのだという事だ。
しかし、肝心な政府首脳の情報収集能力は非常に低劣であり、とりわけ分析能力は極端に偏っている。それは危機に対する意識が低いせいかもしれない。
そうか、忘れていた、日本は戦争を放棄していたのだった…


その証拠は、前記の下村氏の“感想”に集約されている。
いや、その他の自民党の大物らの感想も、全く軌を一にしている。
私が恐ろしいと感じるのは、わが政府首脳はこの程度の情報収集と分析能力で、国際間の熾烈な戦いに臨んでいるのだというまぎれもない“事実”である。


我々が防大で軍事の基礎として学ぶ、第1次大戦の「タンネンベルヒの戦い」におけるドイツ軍快勝の原因は、ドイツ軍が無線傍受と偵察機によってレンネンカンプ軍が動いていないことを知っていたのに対し、レンネンカンプ軍はグンビンネン会戦の後のドイツ軍の動静を知らず、そのうえ偵察機はドイツ軍地上部隊の行動に偽騙されて、「ドイツの大軍が東進中」と誤報したことにある。
「統帥綱領」は「情報収集の敵に優越するは勝利の発端なり。高級指揮官以下あらゆる手段を尽くして、この発端においてすでに敵を圧倒し、先制の地位を獲得するを要す…」とある。

そうか…この国は「先制攻撃をしてはならない国だったか…」じゃあ言っても無駄だ。


しかし次の条文は参考になるのじゃないか?
「一つの手段、一つの機関による情報は、その性質に支配されて、一方に偏しやすい。違った手段、違った機関による情報を総合判断しなければならない」

三略にはこうある。「弁ある士をして敵の美(長所)を談説せしむるなかれ。衆を惑わすおそれあり」

ある週刊誌、特定の新聞、TVのワイドショー、子飼いの記者・・・。偏った情報は身を滅ぼす。トランプ大統領は、今それらと戦っているのだろう。

はてさて我が国の指導者たちは、彼らと戦う気力はあるのか??
おそらくないだろうな〜〜



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