軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

日米関係の危機

 ゲーツ米国防長官が、多忙な中20〜21日の間来日する。いわずと知れた日米間の“とげ”になっている「普天間基地移設」「インド洋給油撤退」問題などの協議のためである。

“史上最低”といわれる防衛大臣と会談した長官は、おそらく失望して帰ることになるのだろうが、岡田外相、鳩山首相と協議してどんな感触を得るのか、これまた希望が持てないから、日米関係は最悪の状態になる予感がする。


 国内問題でも、八つ場ダム問題で、1都5県の知事たちが、前原国交大臣の原理主義的強行策に反旗を翻した。50年間、犠牲になってきたのは「国民」である。政治のいい加減さが浮き彫りになった感があるが、60億以上の人類が生息する「国際間」の諸問題は、それにも勝る危機を国民に押し付けかねない。


 そんな危機感などさらさら感じられない首相ご夫妻には、ファッションショーや、国際映画祭などに「有名人気取り」で参加している暇はないと思うのだが、そんなところがどうもわれわれ“庶民感覚”“国民の目線”とずれておいでで心配になる。
 まさか「米国がなくても中国があるさ!」などとお思いじゃあるまい。「友愛精神」には、戦後60年間以上もわが国を「周辺の軍事的脅威」から“保護”してくれた日米同盟も含まれる筈で、それも“筆頭”に掲げて当然であろう。


 今日の産経新聞の「正論」欄に、ジェームス・E・アワー・バンダービルト大教授が『日米関係への鳩山政権の誤解』という題で、4つの誤解を挙げている。その大意は、

誤解1=「日本は1945年から今日まで、米国に対して従属的立場にあった」:
「確かにその間、米国は軍事的に日本より数段、強力であった。だが日本は、米国と運命を共にすることを要求されているわけではなかった。日本占領終了後、自らその道を選んだのであり日本自らの選択の問題だったのである」

誤解2=「日米関係は日本のアジア諸国との関係深化の妨げとなる」:
「冷戦終了までの20年間、日本は太平洋艦隊だけでも100隻以上の潜水艦を有した旧ソ連による危険な軍事的脅威に直面していた。今でも北朝鮮による脅威を受けている。今後の中国の行方についても相当な懸念がある。日本の米国離れがアジア諸国に好意的に受け入れられると考えるのは、あまりに認識が甘い」

誤解3=「日本と米国がもっと対等な関係ならば日本の負担は軽減されるだろう」:
「(在日米軍基地での公害や犯罪が不平等というが)私に言わせればこうした問題は特に日米同盟の履行に見られる不平等と比べると、些細な事柄である。『米国は日米同盟によって、日本の周囲の核保有国を睨み、日本への軍事攻撃や、インド洋、南西太平洋上でのシーレーン途絶などがないよう安保策を提供している。・・・もしも日本が、米国と一層対等になるための努力をほとんど、あるいは、全くしないなら、米国は日本の「もっと先」を見るだけだ」

誤解4=「同盟関連の支援を縮小すれば、日本の安全保障を損ねることなくコストを削減できる」:
「確かに、同盟の米国にとっての重要度は冷戦時ほどではない。日本が在日米軍の移転を要求するとしたら、米国は不本意ながらも承諾するだろう。だがその場合でも、北朝鮮や中国が自国の軍事能力を縮小するとは思えない。日本は安全な地域にあるわけでもないのに、その軍事費は国民総生産(GNP)の1%程度に留まる。日本が平和で繁栄を享受できるのは、米国との安全保障体制があるからだ」、というものだが、
「以上、4つの誤解を解いたうえで、言えることは、現在の日本が更に応分の役割と任務を果たせば、米国とより対等の関係を持つことが可能になるということ。そして、繰り返すが、それをするもしないも日本側の自由ということだ。これまでも日本政府が自由意志でそうしてきたように、鳩山政権も何が日本の国益なのかを賢明に考慮されることを望む」というアワー教授の結びの言葉が非常に気にかかる。


 憲法改正はじめ、集団的自衛権問題も、そして今回の日米会談の焦点である『普天間基地移設問題』なども、一方的にわが国の不作為がもたらした日米問題に過ぎない、と私は思っている。それをアワー教授が書いたように、米国の強力な軍事力でカバー出来ていた時代は、世界を二分した軍事超大国旧ソ連からの脅威に対しても、わが国を“保護”してくれていた。それに甘えて、その“保護下”でぬくぬくと金儲けに走っていたのが当時のわが国の姿であった。
 この間にも、米国内には「安保ただ乗り論」が充満していたのだが、歴代両政府はそれに気づかぬ風?を装って、日米同盟堅持を標榜してきた。
 
 ソ連崩壊後、危険と脅威が分散し、米国一国の手に負えなくなってきても、日本だけは「集団的自衛権」問題でさえも、いびつな「憲法問題」を盾に言い逃れ続けてきた。これもまた「日本自らの選択の問題」であって、同盟国に一切配慮することなく「対等ではない」関係を逆手に取ってきたのは日本自身であった。

 最後の『言えることは、現在の日本が更に応分の役割と任務を果たせば、米国とより対等の関係を持つことが可能になるということ。そして、繰り返すが、それをするもしないも日本側の自由ということだ。これまでも日本政府が自由意志でそうしてきたように、鳩山政権も何が日本の国益なのかを賢明に考慮されることを望む』という結びの言葉は、穏やかで紳士的なアワー教授の言葉にしては、かなり厳しいものである様に感じる。
 わからずやの未熟な12歳の同盟国め!と思っているとは考えたくないが、堪忍袋のヒモが透けて見える気がする。まだ『made in USA』だから切れないようだが、「made in ●●」だったら、とっくの昔に切れていただろう。

 実はこの問題だって、歴代自民党政府の残した『負の遺産』なのだから、であればこそ「政権交代」して政権の座についた民主党が「八つ場ダム」問題より先に、政策変更すべき重大問題のはずである。
 集団的自衛権問題は自民党時代から「継承」し、八つ場ダム問題は「破棄する」その神経が理解できない。何のための「政権交代」か?


 ところで、コメントの中に沖縄・石垣市長問題が添付されていた。以前からうわさには聞いていたが、とうとう被害者自身が告発したという。あの『門中制度』が支配する地域にとっては、相当な覚悟だったろうと思う。コメント欄からブログに転載するので、ご自身の目で確かめられたい。


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