予想通り、来日したゲーツ米国防長官と鳩山首相、岡田外相、北沢防衛大臣との会談は、ゲーツ長官の≪対日失望感≫を増幅しただけであった。
今朝の産経「主張」欄は、「同盟への警告受け止めよ」と題して、「明確な回答を示さない日本側に対し、ゲーツ長官は『普天間移設無しに海兵隊グアム移転はない』と強調した。在日米軍再編問題を先送りする鳩山政権の姿勢に失望し、積極的に取り組まなければ日米同盟は破綻しかねないという警告と受け止めるべきだろう」
「(移設は)基地が集中する沖縄の負担軽減と米軍の抑止力維持という安全保障政策全体を考えて導き出された結論だ」と書いた。
国民の生命財産を預かる政府自身がこのことを忘れているとは思えないが、政権交代した直後だから、改めて書いておく。普天間飛行場の返還は日本側が持ち出したものである。当時の橋本首相が“しぶる”クリントン大統領に持ち出して“同意”させたものである。
当時の沖縄米海兵隊内部には強硬な反対論があったが、大統領の決断に従うのは≪シビリアンコントロール≫である。
そこで米軍はアジアの戦略環境の変化もあり、粛々と「再編計画」に取り組み、8000人の海兵隊員をグアムに移動させることにした。当然日本側が「普天間返還」を要求したのだから、それに伴う負担は日本側が考慮しなければならない。
既にグアムでは着々と整備が行われているが、オバマ政権になってから、この移転にかかわる予算が相当減額された。その分は日本に出させろ!ということになるのだが、それは二国間の外交問題になる。
しかも持ち出したほうの日本の決断が遅く、海兵隊はじめアジアの戦力再編も一向に進まない。米国にとってはいまやアジアよりも中近東(イラク・アフガン・パキスタン)の方が優先順位は非常に高い。
それにイスラエルが気にしているイランの核問題もいつ火を吹くか分からない。そんな重大な戦略環境下にあるのに、同盟国を標榜する日本は、全く協力しないどころか、米国の戦略の足を引っ張るだけである。やはりイエローマーチャント!サルの惑星!安保ただ乗りのセールスマン!との声が聞こえ始めた。
しかも1996年、私が現役時代に日本側から持ち出されたこの問題は、その後13年経つのに全く進捗しないのは、国際関係上から見て「異常どころか敵対行為」そのものである。それが分からない「極楽トンボ」の国、ならば一泡吹かせてやろう、という事になる。11月12〜13日に初来日するオバマ大統領が、何を言い出すか!
「普天間基地返還及び海兵隊のグアム移転凍結(中止)」ではないか?。日本政府は国際的に大いにメンツを潰すことになるが、沖縄県民、特に地主にとっては「やれやれ!」というところだろう。もちろん反米派は大騒ぎするだろうし、辺野古沖の計画を望んでいる関係者も落胆するだろうと思われる。航空交通管制は今までどおり混雑するが、JALは減便するから大丈夫?
次のデータを見て欲しい。
普天間基地の地主2328名=契約土地面積1358439坪、(内、契約地主1624名=契約面積1352390坪、拒否地主704名=6049坪:いわゆる一坪地主)契約率99・55%(平成9年当時)という数字が何を意味するか、当時の橋本首相はさっぱりお分かりではなかった。この闘争の「何が何でも≪反対≫」と云うのは、基地ではなく「基地“返還”反対」だったといえることがわかるだろう。
基地の安全と騒音?そんなもの、昭和47年に沖縄返還になった時、国内法である航空法を適用して、基地(滑走路)進入面下の安全を確保する事業をしなかったからである。
占領下で、一方的に収用された土地(基地)の外柵に近接した高層建築(電信柱でさえも)は、本土では違法建築物であり規制され安全が確保されているが、米の施政下にあった沖縄には適用されていなかった。
だから騒音問題も、安全問題も≪本土並み≫にすべきだったのである。それをしなかったのは米国政府ではなく日本政府に他ならない。
返還時に何をやったか?当時から中国政府に気兼ねして、米軍管轄化の防空識別圏(ADIZ)の、大陸に近接した部分を一部削除して後退させただけで、おそらく当時の空幕長も与那国島の存在さえ知らなかったに違いなかったから、今でも島の上空をADIZが通って島を二分しているのである。当時は友好国の台湾だったからまだ良かったが、いまや併呑寸前の台湾島である。与那国島の上空は台湾と日本に分割されているのである!
こんな南西方面の防空の欠陥が、今頃になってようやく「産経新聞」で報道され始めた。国会議員たちの視察において、いくら強調しても何の変化もなかった。そして尖閣への不法侵入阻止行動を取ろうとすると『武器は使うな』『刺激するな!』であった。
昭和47年5月3日付読売紙
オバマ大統領が、鳩山首相との会談で何を持ち出すかはそれ以上不明だが、いずれ三沢基地のF-16戦闘機部隊が撤退する予定である。嘉手納基地に所在するF−15部隊も削減が予定されている。早ければ年内にも始まるのだろうが、世界一の軍事力を誇る米国も、中近東はじめ世界各地で起きている紛争に対処するには戦力不足、しかも同盟国唯一の金満日本は、インド洋からの撤退をほのめかし、極めて非協力的だから、なにもそんな国を守ってやる必要はない、という意見が起こっても何ら不思議ではない環境が整ってきた。オバマ大統領は“これ”をうまく使うのではないか?
まさに「蟻とキリギリス」。自分の国を自分で守ることをせずに、お祭り騒ぎに明け暮れていたキリギリス王国の末路は見え始めている。
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