軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

日本“ハイジャック近し!”

 護衛艦「くらま」の衝突事故は、狭い海峡をかなりの高速で前方船を追い越そうとした韓国貨物船が「ハンドル操作」を誤って、反対車線に飛び出したような事故であることが判明した。

 第7管区の野俣光孝次長は「(先行する)船に追突しそうになり、急旋回したと考えられる。(カリナ・スターが)どれだけ近づいたかは、過失の有無を調べる上で重要だ」と語った。カリナ・スター号は、12〜14ノット(時速22〜26キロ)で航行し、6〜7ノット(時速11〜13キロ)の速度差で前方船に接近、事故直前の4分前に航路管制官から注意喚起され、あわてて左に大きく舵を切ったものらしい。おそらく前方船を確認していなかったのではないか?
「通常の追い越しの際より大きい角度で向きを変え、航路に対してほぼ横向きになるまで旋回し衝突した」と産経は書いている。「くらまと衝突していなければ、対岸に座礁する恐れもあった」というから、「くらま」は結果的に「関門海峡が数日間も遮断されて海運事業に重大な事態」が発生することを防いだ!という事になる。
 以前、首都高速5号線で、速度超過で曲がりきれなかったタンクローリーが側壁に衝突炎上して、首都高が大混乱したことがあったが、あれ以上の大災害になるところだった。関門海峡が通行止めになれば、今の政府では「危機管理」能力ゼロに近いから、海運上甚大な被害が生じ経済的損失は計り知れなかったことだろうから、景気は更に後退していたに違いない。案外鳩山政権の命取りになっていたかもしれないが・・・


 それはさておき「今回の事故では『くらま』は被害者だと思うが、それでも艦長は処罰されるのか?」という問い合わせがあり、思わず過去の事例から「自衛隊側が無実という結末にはならないだろう」と答えてしまった。

 何度も書いてきたことだが、日本国内には自衛隊を「悪玉」にしないと気が済まないメディアが存在するから、「交通事故でも100対0はありえない」などという屁理屈をつけて、8:2程度ではどうか?となるのではないか?と思ったのである。雫石事件では、追突された被害者である自衛隊防衛庁)が6:4の高いほうの比率で保証金を支払わされた。
 今回も、事故の詳細が判明してくるにつけて、自虐趣味?の日本メディアの論調は微妙に変化している。観閲式終了に伴う「気の弛み」で事故を起こしたかのような発言をしていたキャスターも“軍事評論家”も知らんふり。
 都合が悪いことに自衛隊に非がなかった今回は、「海保がカリナ・スター号に伝えた情報伝達が不適切。韓国人船長が間違うのも仕方ない!」という論調になるのだろう・・・。楽しみに監察している。

 そんな状況だから、史上最低の防衛大臣や首相が事故直後に発した発言が如何に不適切だったかが証明された。雫石事故のときも、まだ事故調査も始まっていない事故当日に、出世をたくらんだ自衛隊高官が不用意な発言をして、マスコミがいっせいにこれを利用し自衛隊非難が渦巻いた。
 やがて事故調査で加害者と被害者が逆転したにもかかわらず“国民感情に配慮してか”「うやむや」に終わったことを想起すべきである。

 今回、海保の事故調査に対して、もしも「くらま」側に見張り不十分で気がつくのが遅れただとか、緊急停止が遅れたなど、重箱の隅をほじくって何かとミスを見つけて喧嘩両成敗的な結果を“強要”することでもあったら、自衛隊員たちの怒りは頂点に達するであろう。


 ただでさえ、政権交代後の政治の動きを観察していると、徐々に徐々にわが国の「国体」が変化しつつあることに気がつく。政府部内には民主的手法どころか、専制主義的手法が横行しているようだし、対外政策も、特定アジア諸国との関係が一挙に活発化し、戦後60年間、ソ連の脅威に対して共に戦ってきた同盟国との関係がおかしくなり始めた。
 もちろん、未来永劫「不変な同盟」などはありえないが、それにしても政権交代後の国際関係は尋常ではない。悪いことに参院での勢力も安定多数に近づいているので、まさに一党独裁になりかねない。

 沖縄で米軍戦力の弱体化を“同盟国”に強要しつつある反面、その裏では中国の次期指導部候補がゾクゾクと来日する予定である。

 11月に汪洋共産党委員会書記(政治委員)、12月には直轄市である重慶市トップ・薄熙来党委書記(政治局員)、次期主席候補の“本命”であり江沢民前主席派の習近平国家副主席が訪日する方向で調整中らしい。
 習副主席夫人である彭麗媛女史は、中国では著名な歌手であり、11月8〜20日に来日し、東京などで歌舞公演をする計画だという。彼女は人民解放軍総政治部歌舞団の団員でもある。


 汪書記は2012年の党大会で中央指導部の政治局常務委員に昇格するとの見方があり、薄書記は元商務省、次期指導部入りを狙う意味で汪書記のライバル、産経は「日本を舞台に汪書記とのつばぜり合いとしても注目を集めそうだ」と他人事のように書いたが、シナ事変当時、日本が擁立していた南京政府汪兆銘の立場とは決定的に違っていることに気がつかねばならぬ。
 中国国内事情を日本に持ち込んだ権力闘争の一端であり、下手すると「日本ハイジャック」工作に繋がりかねない。郵政改革修正だとか、日本航空再建支援だとか、国内問題に気を取られている場合ではなかろう。鳩山首相も夫人と指相撲してじゃれあっている場合じゃなかろう。特徴的な“つぶらな目”をもっともっと大きく見開いて国際情勢を直視して欲しいものである。

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