軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

中台関係と一人っ子政策

この数日、雨天が続いたので、実にうっとうしかったが、人間様同様に野良猫たちもうっとうしかったようだ!
とにかく、餌がもらえなかったようで、例の野良君は早朝からベンチで“待機”していた。飽食の人間と違って、自然界は厳しいものだ!

≪天下情勢?を見下ろす野良ゾウ君≫
≪まだ起きてこないのかな〜≫
≪おなかすいたな〜:こっそり撮影!≫


詐欺行為で紙面をにぎわせている現代日本人の“大人たち”に愛想が尽きかけていたが、青年たち、特にスポーツ選手たちの溌剌とした活動ぶりだけが頼りだと思っていた。
指導的立場にあるはずの日大教授までもが、その筋関係者から借金して、しかも戻していないという。
社会的地位の高低何ぞ、今のわが国にはどうでもいいことのようだ。
ところがなんと、少年たちに夢を与える?筈のプロ野球界で、とりわけ“永遠不滅”であるはずの巨人軍選手たちが賭博に興じていたというから、何をかいわんやである。
実はこの春の開幕以降、このチームには活気が感じられなかったので、私は家内に「巨人は今年は勝てないよ」と宣言した。野球に興味がない家内は上の空の返事だったが、やはり優勝できなかったとき「なぜわかったの?」と聞いた。

実は監督の表情とその指揮監督ぶりに“生気”が感じられなかったからである。戦闘機部隊の指揮監督を務めてきた私には、試合という真剣勝負の場で、選手にも監督にも真剣みが感じられずユルユルに思われた。
それは組織の士気を高めることを至上命令として34年間生きてきたその感覚で巨人軍の動きを見ていたからである。

報じられたように、ロッカールームで賭博に興じていた主力?選手がいることを、指導者たちが知らなかったとしたら、軍隊であれば間違いなく崩壊していただろう。真面目な隊員が反乱を起こしていたかもしれない。


今の日本国における会社組織もスポーツ界も、もちろん政官界も、どこか緩んでいる気がしてならない。
3・11であれほど危機管理が叫ばれたのに、今やのど元を過ぎてしまったのだろう。もっとも、忘却機能が働かなければ人間は生きてはいかれない存在ではあるが…。


南シナ海危機も、米海軍のイージス艦が航海しただけでなんとなく収まりつつあるかのような雰囲気で、中には「米中が落としどころを探っている」などと解説する“専門家”もいるようだからこの国は幸せなのだ!


其の昔、インド洋からハワイにかけて帝国海軍機動部隊が制圧して航海の自由を確保していた時期があった。あれから70年余、今じゃかっての敵国に生命線の維持を依存しているありさまだ。
憲法前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した…」とあるからなのか?
ではそれに続いて「いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって…」とあるのをどう解釈したらいいのか?
南シナ海サンゴ礁を勝手に埋め立てて戦闘機部隊を配備し、制空・制海権を確保しようとする国は「自国のことのみに専念している」と言えないのか?


国会議員の中には、あえて?それを無視しようとする方々もいるようだが、東京の杉並区の女性議員は、区議会で南シナ海の危険性を説き、質問している。どちらがより広い視野で国や区民のことを考えているかわかろうというものだ。

≪一区会議員が防衛省HPの図を提示して、南シナ海に迫る危機を、決算特別委員会で質問している。区長の回答が聞きたかったが…。こんな質疑は、本来ならば国会議員の仕事じゃないか?=友人の区会議員の議会報告から≫


これは産経新聞が報じた図だが、これを見ても前述した国会議員は何の事だか理解できまい。

≪軍事専門家に解説してもらうといいだろう…産経から≫


この図からも推測できるはずだが、南シナ海に大きな影響を与えるのは台湾の動きである。そこで習主席は直ちに動いた。実は習馬会談は2年前から計画されていたらしいが、今回の馬発言は大陸では一切無視されている。
それは国民党こそ【抗日戦】を戦った主役であることが人民にばれることを防ぐためだ。
公表されていないようだが、二人が合意したのは、≪来年の11月6日に孫文生誕150周年を記念する合同行事を実施することで、台湾は38000枚の記念銀貨を発行するという。同時に広東省に、孫文文化記念館を建設するというが、蒋介石毛沢東も、生誕100周年記念をしないのに、なぜ孫文だけが?と不思議がられているという。

多分、孫文だと日本人も“納得”するとみているのじゃなかろうか?というが、冗談じゃない。日本に亡命して来て散々日本人篤志家を利用した孫文なんぞ、日本人も台湾人も尊敬はしていない。


今朝の大紀元日本は、先の中台首脳会談に対するコラムニストの意見を報じている。
≪中台初首脳会談の裏を読む=コラムニスト
台湾海峡を挟む両岸の首脳同士が7日、1949年の分断以来初の会談を開いた。米政府系放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)のコラムニストの胡少江氏は、シンガポールで開催された中国の習近平国家主席と台湾の馬英九・総統のこの会談について、その裏を分析した。以下はその抄訳。
〜ということは、馬英九・総統の任期満了直前に初となる首脳会談を提案した中国の狙いは、別のところにある。実は、台湾の次期与党と目されている民進党蔡英文主席に懸念を抱いている心情を如実に表している。中国側は、今後の両岸首脳対話を一層促進させるために、中国寄りの国民党が執政するうちに対話の成果を挙げ、盤石な基礎を築いておきたいと考えている。台湾独立を強く志向する民進党政権が発足すれば、それは一層難しくなるからだ。

 台湾の人々が両岸統一を拒む大きな原因は、中国共産党に政治の主導権を握られて自由民主主義制度が覆されることに、反対しているからだ。

 とはいえ、共産党一党独裁体制である中国現政権に食い尽くされるだけが台湾に残された道ではない。台湾は華人社会で民主主義を実現させた好例であるうえ、台湾人が現在享受している自由と参政権は大陸の中国人が渇望しているものでもある。台湾の有識者は中国と交流を重ねる中で、自由と民主主義を勝ち取ることを進んでサポートするべきだ。そうすれば、中国国民の支持を得ることができ、台湾海峡の平和を引き続き維持していくこともできる。(大紀元日本)≫


実は私は今回の会談は、逆に習主席が「台湾を一国家」だと認めた大誤算だ、と捉えている。もしも台湾が、彼らが公言してはばからないシナの一部の「台湾省」であるならば、その“省長”をシンガポールに呼び出して、大げさな会談など開く必要はない。北京に呼びつければいいじゃないか!

2005年、日中安保対話で上海に行った時、会議の席でも「台湾はわが領土だ!」と口角泡を飛ばして≪核心的利益≫を強調していた高官たちや、大きな地球儀に台湾を自分たちの領土だ、とばかりに赤色で表示していたのはどうしたのか?と聞きたいものだ。

≪2005年、上海の目抜きにあるビルのドーム上には、自国領土が表示されていて、台湾も同じ赤色に染まっていた! 今はどうだか知らないが、ひょっとすると沖縄も赤く染まってるのじゃないか?…:この写真は私の講演会資料で、シーレーンと破裂模様は、私が書き込んだもの≫


ところで、シナの弱点の一つである「一人っ子政策」がとうとう修正されたようだ。

「中国、『一人っ子政策』撤廃で労働力人口3千万人増予測」と共同通信が次のように報じている。


≪中国国家衛生計画出産委員会は10日、共産党が「一人っ子政策」を撤廃し、全ての夫婦が第2子まで持つことを認める決定をしたことで、2050年までに労働力人口が3400万人増え、高齢化の加速に一定の歯止めがかかるとの予測を公表した。

 同日記者会見した王培安同委員会副主任は「(近年)高齢化が加速し、労働人口と出産や育児に適した人口が減少に転じている」と危機感を示し、こうした問題は「一人っ子政策」撤廃により緩和されると強調した。

 同委員会によると、新たに2人目の出産が可能になる女性は9千万人余り。50年までに60歳以上の高齢者が総人口に占める割合は、政策を撤廃しなかった場合に比べて2%ほど低くなる見通し。中国の人口は29年に14億5千万人に達し、ピークを迎える時期が従来の予測より2年前後遅れるとみられるという。(共同)≫


≪当時、一人っ子政策は人道に悖る!と指摘したら、「この政策を取らなかったら、今頃世界中は中国人であふれている。むしろ感謝してほしい」と言われたものだ。この横断幕は、そのために「晩婚を奨励する」という政府のスローガン≫


人間の生きざまを、自国の生産性の必要性に応じてコントロール出来る、と考えるのが共産主義思想の恐ろしさ。当時、我々をガイドしてくれた、若い女性(バツイチ)は「この国では離婚すると子供は夫に取られることになっているから、私の両親と私自身の老後は悲惨だ」と悲しそうに言ったことを思い出す。

そして北京で、一人っ子政策を推進するため「二人目を妊娠しているらしい女性を見つけると、どこまでも追跡して堕胎させた!」と自慢した元共産党員の老婦人に対して、彼女たちは「ふん、この毛沢東婆!」とさげすんだ。


今朝の大紀元日本は次のように論評している。

≪・・・現在、子供が仕事や独立などで不在となり、高齢の両親だけが残される「空巣家庭」が急速に増加している。一人っ子が生産できる資金は限られており、一人っ子同士が結婚してつくる、祖父母それぞれ2人ずつ、母父、子からなる4・2・1の逆ピラミッド型の家庭構成で、子世代には多大な介護負担がのしかかる。
 広州日報は7日、当局の老齢者数統計データを引用し、全国の大・中規模都市部の、高齢者のみの世帯「空巣家庭」は70%に達すると伝えた。また、6日には広東省広州市で開催された文化フォーラムで、中国で進む高齢家庭、生活能力を失った家庭、高齢者のみの家庭、少子化が顕著だと、専門家により明かされた。
 中国人口学専門家の易富賢氏は、2013年の国勢調査のデータをもとに推計すると、現在2億1800万人いる一人っ子のうち、1009万人が25歳になる前に死亡する。2030年には毎年の一人っ子死亡者数は27万7000人に達すると推測。そのため、一人っ子に先立たれた「失独家庭」は1000万世帯になると分析する。
 「失独家庭」の一番の問題は介護であり、多くの失独者は抑うつ状態となり、老人ホームへの入居を拒否。他人の家族団らんを見るのが一番辛いと話す。
 2014年11月、重慶市では数百名の失独者が3日連続、市当局ビルの前で、「失独問題」への対応を求める集会を行った。参加者は、高齢者の保障を訴えた。今年も、各地で政府当局に対するデモが起きている。(以下略)≫


習政権のお手並み拝見と行きたいが、我が国の若者たちは、わが政府の意思に反して?自主的に晩婚策を取ってきているが、まるで一人っ子政策を推進しているようだから実に嘆かわしい。大陸の真似をして良いことはないのに…
子育てに金をばらまくのではなく、基本的な日本文化から見直して、孤独死する老人や、徘徊老人を地域社会で保護するようにできないものものか、と思う。
前述した杉並区会議員は、小学校の土日授業でPTAや地域と共に防災訓練を実施し、運動会には地域、家族総出で元気いっぱいに駆け回り、地域のお祭りには、大人も子供もみんな参加する運動を推進しているという。

我々が子供のころには、お祭りはもとより、向こう三軒両隣、という風習があり、大人はどこの子供達に対しても平等に躾することを忘れなかった。
成人して社会の一員になるのだから、それは当然のことだとして親も本人も認めてきたのだが、どうしてそれが失われてしまったのか?不思議でならない。

家族の素晴らしさ、兄妹の大切さを忘れたら、人間同士の付き合いよりも、小動物虐待行為に走り、やがては殺人に発展するのじゃないか?と、大好きなAXN英国ミステリー番組を見ながら気がかりに思うことがある。
英国でも家庭環境に恵まれない青少年たちの犯罪が多いらしく、番組はそのストーリーであふれているから…
早く【自主的一人っ子政策】から足を洗うような施策を講じえて欲しいものだ。


届いた本と講演会のPR
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≪戦争を仕掛けた中国になぜ謝らなければならないのだ!=「日中戦争」は中国が起こした=茂木弘道自由社ブックレット¥500+税≫
私のような老兵には不要な本?だが、講演会で思うことは、自国の近現代史を未習の若者たちには、内容が新鮮に映るのではないか?
しっかり過去の史実を押さえておかないと、反日国の政治宣伝である「記憶遺産」に登録されるようなことになるのだ。全90ページで非常に読みやすいからご一読あれ!


●次は私の講演会に関する「日本兵法研究会のご案内」
「国防を語らずして、日本を語るなかれ!(第27回 軍事評論家・佐藤守の国防講座)
 軍事評論家としてブログなどで活躍中の当会顧問・佐藤守が「国防」を熱く語る連続シリーズの第二十七回目です。
 東日本豪雨での鬼怒川氾濫に対する常総市の避難指示の遅れは、平素からの“危機管理”意識の希薄さに起因する「人災」とも言うべきものです。
 もしも平和憲法で戦争が防止できるのなら、憲法第1条に「我が国は、国民の豊かな生活を守るため、一切の台風、気候変動などの災害を排除する」と書けば済むことでしょう!しかし、現実には自然災害というものが憲法などとは全く関係なくこの日本列島を襲うことは、誰にでもわかることです。(戦争も全く同じですが・・・)
 戦闘機パイロットは、一旦上空に飛び上がると、あらゆる事態を一人で始末せねばなりません。そのためには常に「万一」のことを考えて飛行します。これが“軍事”の常識です。
 どんなに科学技術が発展しても、常総水害のようなことは起きるのです。それではどうすればよいのでしょうか?
 「人災」の最大の悲劇である《戦争》を学べば、「天災」についてもある程度の予測と回避は可能になります。平和憲法のもとに一切の“軍事”を排除してしまった戦後日本の最大の欠陥は、そんな危機管理能力をどこでも教えていないということです。
 今回の国防講座では、空自戦闘機パイロットとして3800時間にわたって日本の空を飛んできた佐藤顧問が、自らの体験をもとに「危機管理」のあるべき姿について分かりやすく解説いたします。
 脱線転覆を交え、大人気の佐藤節が唸ります。どうぞご期待下さい。
         記
演 題:軍事常識なき“危機管理”の危うさ
日 時:平成27年11月14日(土)
    12:30開場、13:00開演(15:30終了予定)
場 所:靖国会館 2階 偕行の間
講 師:佐藤 守(軍事評論家、日本兵法研究会顧問、元南西航空混成団司令・空将)
参加費:1,000円(会員は500円、高校生以下無料)
お申込:MAIL info@heiho-ken.sakura.ne.jp
 FAX 03-3389-6278(件名「国防講座」にてご連絡ください。なお事前申込みがなくても当日受付けます)


うまくいけば、今回上梓した「安保法制と自衛隊青林堂)」の初刷り20冊ほどが会場に届くかも…。とりあえずお知らせまで。

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