軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

靖国問題は終結する

satoumamoru2006-08-04


今朝の産経トップに「安倍官房長官が4月に靖国神社を参拝していた」ことが報じられた。テレビなどでは、これが「反小泉勢力や中国」を刺激するかのように解説していたが、どうしてこうも日本のマスメディアは、物を斜に見ることしか出来ないのだろう?
小泉首相も、HPに「8月15日に武道館での戦没者慰霊式典に例年どうり出席する」と書いていたが、あたかも靖国神社問題に火をつけんばかりの「解説」には飽き飽きする。「小泉首相も、安倍官房長官も、心静かに英霊をお参りする(した)と発表したが、ご遺族にとっては大きな励ましになったことだろう。一日も早く天皇陛下の御親拝に道が開かれて欲しい」と解説したら、その記者は、テレビ局や新聞社を「首」になるのだろうか?

今日は猛暑の中、岡崎研究所に集まり、中国問題などについて意見交換をしてきた。ここ一連の中国に関する私の感触は、「中国は首相の靖国参拝阻止」工作ではなく、「参拝は避けられないものとしてその後の対策」を研究していると見ている。勿論、親中派の政治家や経済人、ジャーナリストに対して、依然として「中止工作」を続けているのは確かだが、ほぼ不可能だ、と判断しているに違いない。小泉首相の後継者も大体確定したと見て、中国外交方針の「ダメージコントロール」に入っているのだろう。
「中止工作」は、「富田メモ」をはじめ、ことごとく失敗に終わりつつある。

勝手な推論だが、私は今回の北朝鮮のミサイル連射事案以降、中国は北朝鮮に距離を置き、米国と接近することを外交の中心にすえたように思う。
中国国内事情も予断を許さない。共産党員の数々の不祥事、北京オリンピックを前に、住民とのいざこざが絶えず、強権発動すればするほど、オリンピックで訪中した、自由な国々の記者たちから、根掘り葉掘り聞き出され、いくら「言論統制」しても、不満分子の「密告」が世界中に流れることになるから、「アジアの大国」の“イメージ”が、“ダメージ”になる恐れなしとしない。
北朝鮮の金体制が、軍部は別にして、政権中枢部の取り巻き(役人など特権階級)の中にも、先行き不安を感じるものが相当出てきているに違いないから、金体制崩壊は近い、とまではいえなくとも、遠くはないといえるだろう。
中国の体制も、金体制ほどではなかろうが、根っからの?共産党員は別にして、訒小平の改革開放で「資本主義」に目覚めた実利主義者たちは、古い共産体制に疑問を持っていながら、党に楯突くことも出来ずに「日和見」であるように思えてならない。
もしも共産政権が崩壊したら、自分はどちらにつくか?高級役人などの頭の中は、案外これでいっぱいなのかもしれない。香港の混乱?を見れば推察できる。
それはちょうど、台湾の2割に満たない外省人・・・「国民党(=大陸敗戦組)」と8割を占める台湾人との関係に似ているのではなかろうか? 国民党員は、陳水扁氏が政権を取ったとき、己の身の振り方を真剣に検討したに違いない。しかし「純粋な台湾人」にはなれないし、かといって「大陸」に引き上げることも出来ない。どちらに付いたほうが得かで、これまた相当悩んだことであろう。しかし、今や「国民党政権」を復活できる可能性が出てきた。こうなると、台湾人に「ゴマをする」必要はない。外省人が再び天下を取れる・・・
大陸でも、台湾でも、政権中枢にいる者たちは、そんな板ばさみの状況におかれているような気がするのである。
だから、共産党が「靖国反対」を日本政府に強制している間は、一致してそれを推進するが、目的を達せられそうになくなった。事ここに及んだら、どう態度を豹変しようか、それが大陸の政権に近い人たちの直接的な問題事項になる。何せ、食わねばならない・・・。あと10日でそれがはっきりする。日中間の「とげ」は、抜かれるだろう。

問題は日本国内の、反日勢力(=親中勢力)である。仮に北京がこの問題で「ダメージコントロール」に入った場合、彼ら親中派の立つ瀬はなくなる。それを考えると私は楽しくて仕方がない!レイオフされた彼らは、一体どうする気だろう?

山の中から都心へ出るとき、私は車中で読書するように努めているが、今日は「収容所から来た遺書」辺見じゅん著(文春文庫・・・¥476+税)を読んだ。
縁あって、私は「ジベリア抑留者協会」の方々とお付き合いしていて、直接ご体験を伺い涙したものだが、この本も時々活字が見えなくなるので、混んだ車内でそれを隠すのに苦労した・・・。
そのとき、ふっと思ったのだが、同じく収容された「日本人」の中から、ソ連に魂を売って、いわゆる「積極分子(アクティブ)」となった者がかなりいたという事実である。収容所に入ると「『今度入ってきた者たちは民主主義が立ち遅れている!』と罵倒されたあと、取り巻かれて次々に胴上げされて地面に叩きつけられた。さらに、倒れた身体の上を、男たちに『反動!』『ファシスト奴!』と罵られながら、靴で踏みつけられるという手荒な吊るし上げを喰らった」といい、このすさまじいリンチはとどまるところを知らなかった。
ラーゲリには浅原正基を中心にした20数名が『ソ同盟共産党小史』の研究会を作っており、『党史研グループ』と称してソ連側から特別に与えられた一室にたむろしていた。ソ連側の政治部の庇護を受け、所内や作業場で反ソ的な言動をする人々を密告しているといううわさだった。『アムール句会(純粋な日本語の俳句同好会)』に入り込んでいたMや新たに文化部長になった鶴賀も、『党史研グループ』の一員である。このグループが、脱走事件の起きたあと、何かにつけてソ連側の威光を笠にきて幅を利かせ始めたので、ラーゲリ内の雰囲気をいっそう暗くさせた』

これらの事実を読んで、「党史研グループ」の日本人俘虜(裏切り者!)たちが、現代日本に巣食う親中派の言動とダブって見えたのだが、少なくとも彼ら「党史研グループ」の中には、極限の環境下、心ならずも生きるために魂を売ったものもいたろうが、平和な現在、シベリアに「強制連行」されたわけでもないのに「中国」に魂を売る日本人がいることは、全く理解に苦しむ。
この本は、わずか60年前、理不尽にも国際法を無視してシベリアに強制連行され、そのうえこともあろうに「ソ連国内法」で、重労働や数十年の服役に処せられたわが同胞たちの記録の一部である。
平和を享受しながら、安全無視のずさんな環境下で、幼い命が失われ、食うに困らないのに自分の欲望を優先して「子供を殺し」「親を殺し」、この澱んだような「平和」な時代に、自ら「ラーゲリ」を現出させている日本人のおろかさを象徴しているような気がしつつ、読み終えた。
シベリアに限らず、悲惨な最期を遂げた多くの「戦没者たち」のために、小泉首相が「心静かに」靖国神社に参拝をされることを切望する。