台湾の次期総統に馬英九氏が当選した。23日の産経新聞は「『独立』より安定選択」と見出しに書いたが、果たしてそうか?台湾の友人からは「物凄い金で票が買収されている」と聞いていたが、資金力に事欠く民進党は手が出なかったようだ。勿論陳政権の失政も大きかった。安倍政権同様、国民の真意を掴む能力が、若い彼にはいまいちだったということかもしれない。そう考えると今回の結果は「『アイデンティティ』よりも現金」という見出しが適当だったというべきなのかもしれないが、問題は今後である。
ブッシュ大統領は馬氏の当選を祝福し、『この選挙は中台双方が接触を果たし、相互の違いを平和的に解決するための新たな機会になると確信する』『台湾海峡の平和と安定、台湾住民の福祉を維持することは、米国にとり極めて重要だ』と述べ、台湾関係法に基づく台湾への関与方針を改めて表明したそうだが、軍事力の低下で、2方面作戦が展開できない米国としては、イラク・イラン方面以外での紛争を極力回避したいだけなのである。
米国が出てこれないと踏んでいるからロシアも中国も隙をついてどんどん勢力を伸ばしつつある。その上ドルの“威力”も低下中である。米国にとっては台湾に『中国海軍』の戦力、特に潜水艦部隊が展開しなければいいのであって、しばし注目するだろうが、いずれ期待は裏切られるだろう。馬新総統の今後の動きは、5月の就任式以降を静観しなければなんともいえないが、公務員は勿論、軍の高官たちも総入れ替えになるのではないか?今彼らは今後に備えた「思想変換」で大変なことだろう。
国民党政権の態勢が整えば、公務員や軍の協力を得ていつでも大陸と『合作』することは考えられる。そのとき米国は軍事力は使えない。台湾の「民主的な自由意志」で合作することに、民主主義を唱える米国が介入することは出来まい。チベットの悲劇に対しても、米国は「中国の国内問題」だとして逃げようとしているように見える。
問題は「台湾軍内」の動静だが、これはまだ読めない。米国も分析しているだろうが、その結果次第では台湾に対する新鋭武器、「潜水艦や航空機」などの売却は鈍るであろう。ロシアは既にその点を十分心得ていて、中国に対する新鋭機SU-27や30の売却にあたっては、十分な能力が発揮できないような“仕掛け”がしてある。そしてロシアはむしろ今や将来の中国の軍拡を予想してインドに触手を伸ばしつつある。
その昔、欧州正面と満州の同時2方面作戦を回避すべく、スターリンがうった手と同様に、中国の後背部にあたるインドに手を回して中国が反抗できないようにしているのである。他方中国はそのインドを意識して「空母」を持ちたがっている。インドに“唯一”軍事力で後れを取っているのが「空母」だから、空母戦力の発揮という軍事の基本なんぞよりも、“政治力発揮”を望んでいて、空母をシーレーン確保の道具にする気なのである。
そんなきわどい軍拡競争が「周辺」で増殖しているにもかかわらず、日本の政界は「ガソリン税と日銀総裁」問題で混乱しているのだからなんとも微笑ましい?!
台湾の首都・台北から僅か100Kmほどに沖縄県の与那国島があり、1800人の島民が生活していることに気がついている国会議員は少ない。その与那国島の北東にあるのが尖閣諸島で、今までは、香港と台湾の活動家たちが、スポンサーに言われるままに「行動」を起こして侵入事件を繰り返し、海上保安庁と衝突事件を繰り返していたが、今回、尖閣を自国領土だと主張する馬氏が総統になったから、この周辺の紛争は活発化するだろう。私が沖縄に勤務していた時には、台湾の退役空軍軍人がヘリコプターをチャーターして空から侵入する計画を立てたが、時の李登輝総統は飛行計画を許可しなかった。今度は状況ががらりと違うから、きっと海と空で紛争が起きることだろう。あるいは中国と「共闘」作戦をするに違いない。そしてガス田にも中国と台湾の軍艦が出てきたら、日本政府はどうする気か?一連の不祥事事件で大量処罰された海上自衛隊員の士気は沈滞している上に、漁船の衝突ぐらいであの大騒ぎなのだから、東シナ海で中国軍艦を沈めたら死刑?になるに違いない!
次は間違いなく「尖閣諸島と東シナ海のガス田問題」が揺れる。速やかに政府は「ダメージ・コントロール」にはいるべきである。
たまたま2月末に沖縄を旅行されたある大学教授から次のような内容の手紙が届いた。
「沖縄は“中共に併合される。左翼でないと生命は保障されないそうだ・・・”との風説が有力で、一般市民の(特に次世代の)動揺が烈しいことにびっくりしました。中共の有力者が毎週のように“時局解説”と称して琉球独立論をあおっている様子には、何とか”歯止め”をと思いました」
“徐々に徐々に”この国の崩壊が進んでいる様に思っていたが、沖縄での反米活動は毎度のことなので、沖縄に対する“間接?侵略”がそこまで進んでいるとは思わなかった。ただ最近の動きには常軌を逸した何かがあるとは思ってはいたが・・・。
チベットの次は、尖閣・沖縄である。速やかに対処しなければ、後顧に憂いを残すことになるだろう。
以下掲載するのは「中国の軍事雑誌」の中の尖閣に対する写真の一部である。
「海保の巡視船が領海侵犯」と明示してある。