26日の新聞各紙は、首相の訪中で「対中ODA 使命終えた」と大きく伝えた。ところでここに言う『使命』とは一体何を意味しているのか?
辞書には「1 使者として受けた命令。使者としての務め。2 与えられた重大な務め。責任をもって果たさなければならない任務」とあり【使命感】とは「自分に課せられた任務を果たそうとする気概」と解説してある。
それほどまでしてシナに尽くさねばならない“使命”が我が国にあったのか?
一方の李克強首相は「一帯一路」について、「日本側とともに第三国での協力を推進したい」と呼びかけた、と言うから、支那人が得意とする形を変えた巧妙な経済支援要求と受け取れる。
安倍首相は「日本が推進している質の高いインフラの基準に合致すれば、第三国のインフラ整備で日中協力を進める方針を表明する見通しだ」そうだが、米中“経済”戦争を推進中である同盟国・米国はどう受け取るか?と思う。
ODAの簡単な経緯については26日の産経抄を引いておこう。
≪上海の浦東国際空港は、1999年10月に開港した。日本の円借款から、400億円が拠出されている。翌年に空港を訪れたフリージャーナリストの青木直人さんは、中国人数十人に円借款について聞いてみた。
▼空港の広報ウーマンを含めて、「我不知道(知らない)」の返事が返ってくるばかりだ。「日本人がそんなことをするわけがない」と怒り出す人までいた(『日本の中国援助・ODA』)。中国が日本の援助を公表するどころか、反日感情の醸成に余念がなかった時期である。
▼日本の対中ODA(政府開発援助)は79年、当時の大平正芳首相の下で始まった。インフラ整備を中心に低金利で貸し出す円借款は10年前に終了、累計で3兆円を超えている。経済大国となった中国に援助は不要、との声が上がりながらも無償資金協力などはその後も続いてきた。中国を訪問中の安倍晋三首相は今日、習近平国家主席、李克強首相と会談するが、これに先立ち、ようやくODAを終了する方針を表明した。
▼中国政府は今になって、中国の経済発展に対する日本の貢献を積極的に報じるよう、政府系メディアに指導した。米国のトランプ政権との対立が激化すると、手のひらを返すように友好ムードを盛り上げようとしている。もちろんそんな甘言にのってはいけない。首相は百も承知であろう。
▼大平氏は、72年に実現した日中国交正常化に外相として立ち会った。「今はお祭り騒ぎでいいが、30年たったら事情は変わるよ」。昨日の読売新聞が、政務秘書官に当時つぶやいた言葉を紹介していた。
▼桁外れの軍備拡張によって、46年後の中国は、日本の安全保障にとって最大の脅威となった。大平氏の憂慮をはるかに超える、深刻な事態である≫
明らかに“敵”である相手に≪塩を送る≫のは愚策である。
今朝の産経の「主張」は≪日中首脳会談 「覇権」阻む意思が見えぬ 誤ったメッセージを与えた≫と次のように“警告”しているが全く同感である。長くなるが全文掲載する。
≪米国と中国が覇権を争う「新冷戦」の局面を迎え、国際社会は大きな地殻変動を起こしている。これに日本はどう向き合うか。安倍晋三首相の中国公式訪問で問われたのは、この一点に尽きる。
だが、習近平国家主席や李克強首相との会談の成果とする関係改善は、日本が目指すべき対中外交とは程遠い。むしろ誤ったメッセージを国際社会に与えた。 日米同盟を基軸とし、民主主義や市場経済などの価値観を欧米と共有する日本が、軍事や経済などで強国路線を突き進む中国に手を貸す選択肢はあり得ない。ここがうやむやなまま、友好ばかりが演出されたことを懸念する。
【「一帯一路」支えるのか】
安倍政権はいま一度、中国の覇権を阻むという原点を思い起こすべきだ。中国に強権政治を根本的に改めるよう厳しく迫る。それが関係改善の大前提である。
安倍首相は、習主席との間で「競争から協調へ」など新たな原則を確認した。いかにも前のめりである。
中国は不公正貿易や知的財産侵害を改めない。南シナ海の覇権を狙う海洋進出やウイグル人弾圧を含む人権侵害も相変わらずだ。
これでどうして新たな段階に入れるのか。米国はもちろん、アジアや欧州でも中国への視線は厳しさを増している。日本の対中外交はこの潮流に逆行しよう。
日本は、天安門事件で国際的に孤立した中国にいち早く手を差し伸べ、天皇陛下の訪中や経済協力の再開に踏み切った。だが、日中が強い絆で結ばれるという期待は裏切られた。その教訓を生かせず二の舞いを演じるのか。
日中は、経済や安全保障を含む幅広い分野で協力を強化する。象徴的なのが、両国以外の第三国でのインフラ開発協力だろう。
両政府の呼びかけに応じ、日中の企業は事業を共同展開するため50件を超える覚書を締結した。中国の巨大経済圏構想「一帯一路」を念頭に置いた協力である。
一帯一路は経済、軍事面で自らの勢力圏を広げるための国家戦略だ。相手国を借金で縛る手法は「新植民地主義」と評される。
安倍首相は開放性や透明性などが協力の前提と指摘したが、日本の技術や資金が中国の膨張主義を支える構図に変わりはない。何よりも中国が、一帯一路への各国の批判をかわす根拠として日本の協力を利用することを危惧する。
金融危機時に双方が通貨を融通し合う通貨交換協定の再開でも合意した。米中貿易戦争で中国経済の不安が高まる中、市場の安全網を敷く狙いだろう。だが、中国が優先すべきは国家の恣意的な市場介入を改めることだ。そこが不十分なまま、大々的に金融協力を行うのには違和感を覚える。
【中国の脅威は減じない】
安倍首相は対中ODA(政府開発援助)について「歴史的使命を終えた」と述べて終了する方針を示した。これ自体は当然としても、新たな経済協力へと一足飛びに進む理由にはなるまい。
日本は欧米とともに対中包囲網を強めようとしてきたはずだ。これとの整合性はあるのか。
安全保障分野の「関係改善」にも疑念がある。日本にとって最大の脅威が中国なのは明らかだ。
両首相は「日中は互いに脅威とならない」と確認した。海空連絡メカニズムでホットラインの設置協議も決まった。
尖閣諸島をめぐり、安倍首相が李首相に「東シナ海の安定なくして真の関係改善はない」と伝えたのは当然だ。だが、これだけで脅威を構成する中国の「意図」と「能力」が減ずるだろうか。
中国は尖閣を奪う意志を取り下げていない。周辺領海への中国公船の侵入などを首脳会談の主題にすべきだった。中国の軍拡や日本に向けられた弾道・巡航ミサイルの問題は論じたのか。南シナ海の人工島の軍事拠点化の問題もある。刃を突きつけられた中での友好などあり得ない。
安倍首相はウイグル問題を念頭に「国際社会が人権状況を注視している」と伝えたが、協力が強調された中で懸念は伝わったのか。北朝鮮の非核化や拉致問題を含め真剣な協力相手たり得るのか。
これらを棚上げにして日中の首脳が笑顔で握手しても、真の友好は築けまい。中国は国際情勢次第で対日姿勢を変えてきた。ムードに流された関係改善は、砂上の楼閣に等しい≫
日清戦争以降(いや、蒙古来襲以降と言うべきだが)、何度も“煮え湯”を呑まされてきたのに、時が変れば我が国の“指導者たち”はすべて相手の悪行を忘れ去り、“ノー天気に”同じ過ちを繰り返す。広島の平和公園の石碑には「過ちは繰り返さない」と書いてあるではないか!。
支那と朝鮮には何度も約束を破られ、酷い目にあってきたにもかかわらず、それを繰り返すのはこれも戦後の歴史教育軽視の成果なのか?それとも政府には本当のバカ者しか揃っていないのか?
政治と情報の自由がない共産党政権下での経済発展はありえない。しかし、改革開放と言う“美名”の下で、中共は経済の自由化を実行し、人民は別にして、党員だけが巨大な利益に群がった。
次に起きるのは共産党内部対立の激化であり、それは歴史が証明している。習政権も長くはあるまい。
日本は同盟国と手を組んで中共の大混乱に備えておくべきなのだ。
処が何ということか、軍事を忘れた今の日本人は「仔牛は虎を恐れない」と言う支那の諺通りの丸裸の状態だ。
今のところ米国の本件に関する反応は低い。それは中間選挙を控えているから関心がないだけで、終わればおそらく対日非難が渦巻くだろう。
沖縄で普天間移転問題が暗礁に乗り上げ、米軍の再編に障害が出た時に行われた米世論調査(22年8月24日「ラスムセン社」)では、日本は「米国の敵」、もしくは「どちらでもない」が約30%、沖縄から米軍はすべて撤退すべきが26%だったことを思い出す。
前回、安倍首相を評価したが、今回の訪中はまだ始まったばかりだとはいえ、首をかしげたくなる。信念がブレテいないことを信じたい…
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「新潮45」の休刊問題は、言論の自由への挑戦だろう。左翼は自分が攻撃されると居丈高に反抗するが、難癖をつけた相手が怯むと嵩にかかって追いつめる。
これはその典型的な例だが、保守派の“反抗”に期待したい。
これも同様な中身だが、「ペンス米副大統領演説」は「宣戦布告だ!」とする藤井厳喜氏と石平氏の文は興味深い。日本人は日中“経済”戦争と表現しているが、戦争とは経済問題が布石になっているものだから、ペンス発言はそれに当たる。昔だったら米軍爆撃機による大規模な北京空襲が行われていたかも…
今月号は「オスプレイ日本配備」特集が読ませる。
沖縄配備の時、テレ○○の左翼コメンテーターが「世界一危険な航空機を、世界一危険な空港に配備するのは言語道断」とののしっていたが、これを読んで彼はどう思うだろう?感想が聞きたいものだが、テレビ受けを狙っている輩だから、読みもしないだろう。視聴者はみんな騙されているのだ…
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