軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

"専守防衛論者”に聞かせたい

【米政府は5月31日ウクライナ軍に新たな高性能ロケットシステムを提供すると表明した。より長射程の兵器を求めるウクライナ側の要望に応じる一方、事態の激化を避けるため、ロシア領内への攻撃には使わない条件をつけた。バイデン米大統領は同日の米紙への寄稿で、ウクライナの紛争への米国の関与のあり方を説明。このなかで武器支援はあくまでウクライナ領内での防衛目的に限る考えを示した

つまり、米国が提供するこのロケットは、「敵地攻撃」ができない「専守防衛兵器」である。バイデン大統領は、そういったのだが、ロケットは、推進薬(燃料)を増加すれば飛距離は増加する。マ、それはいいとして、ウクライナを侵略して、国土を灰燼に帰しつつあるロシアに対して、ゼレンスキー大統領は「一矢報いたい」であろう。米国はそれをさせまいとしていろいろ気を使っているようだが、ロケット攻撃される側のロシアとしては、痛くも痒くもあるまい。自分の重要防護目標には届かないことがハナから約束されている?からだ。つまりバイデン大統領は武器は提供するが、ウクライナに対して「専守防衛」を要求したのである。

これを聞いて私は、我が国の「専守防衛論者」はどう感じていることだろうと気になった。やはり「米国も専守防衛」を要求しているのだ!などといい気分になってはいまいか?

これではウクライナ戦争の終結は望めない。やはり米国は武器売却で一儲けする気だ!と思うのが、一般的な解釈だと言える。どうせ、代理戦争、ワシントンにはロシアからミサイルは飛んでこないのだし、むしろそのために飛距離を制限して提供するのだ、という大義名分が生きてくるから、米国民はバイデンは平和主義だ!と理解しているかもしれない

他方、この戦争でわが国が考えるべきことは、「専守防衛主義では、攻撃する側が非常に有利なのであり、防御側は戦勝が望めない」のだという実例を学ぶべきだろう。だから我が国は『盾と槍』の関係で、自衛隊は防御作戦に任じ、安保条約を締結している米国が敵地攻撃を実施するのだ!と防衛関係者はいうのだろうが、バイデン大統領の今回の武器供与でそれが非現実的だと分かるはずだ。

連日訳知り顔でTVに登場するコメンテーターは、ウクライナ戦争でどちらがどのエリアを支配し、どう動いているか、などという戦況ばかりを解説しているが、わが国の安全保障に密接する問題の解説はなされていないように見受けられる。もっとも「憲法上の制約」が自衛隊の行動にとって大問題で、速やかに破棄、または修正すべきものを、”意図的に”避けて通っている気がしてならない。

防衛費をGDPの2倍にせよ、という政治家はいるが(ありがたいことだが)防衛作戦の見直しを進めようという意見はあまり聞かない。

国民は、北朝鮮がなぜミサイルをどんどん?撃つのか。それを防ぐだけで北朝鮮は攻撃をやめるのか?ということには気が付いていない。政府もただ見守る?だけだ。

改めて同日会見した米政府高官が【「ウクライナが、ロシア領内の目標に対してこの兵器を使用しないと約束した」と説明した】ことの意味することを熟読玩味してほしいものだ。

ところで私は今、「断捨離中」だが、偶々平成26年に書いた論評が出てきた。捨てる前にその作文をここにご紹介しておきたい。

ウクライナ戦争と北朝鮮のミサイル発射行動。そして江沢民派✙胡錦涛派と習近平派の泥沼の権力闘争に明け暮れる隣国の政争など、国家”不安全”保障環境にとり囲まれたわが国は、この機会をとらえて確実な防衛体制を完備しておく必要があるのだ。

政治家や公務員、財界人たちは何時まで「極楽とんぼ」でいる気か!給付金詐欺に見られる緩み切った官公庁の後手後手に回る対応ぶりを見ていると、肝心な紛争事態発生時の対処にどうも安心できないので老婆心ながら…。

むしろ「ウクライナが”平和憲法”をもっていなかったから侵略されたのだ!」という日本人が未だに多いのかも…